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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
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19話 向かう先が危機

 場所は湖畔、道は二手に分かれ、片方の道の先には大きな建物が見え、そこが目的である研究所だとカルミアは言った。


「私は荷を運ぶんでこっちです。それじゃあこっからは君らは歩いて行ってくださいね。」


 場所の目的地とは逆に進む事になり、三人は場所を降りて場所と御者へと別れを告げた。そうして馬車から離れようとした時、クレソンは立ち止まり場所の方へと振り返った。


「あっ!それともう一つ、異変は必ず解決します。」


 御者も馬車を止め、クレソンの言葉を受け止める様に振り返って顔を見た。もう距離は離れていたが、何故か互いに互いの顔が良く見えた気がして、御者の口角がほんの少し上がって見えた。


「何せ俺ら!」

「絶対守護の『愛・緑の守護隊』がいるから!ね。」


 合図も打ち合わせも無くカルミアとクレソンは声を揃え、また謎の姿勢ポーズをとって顎をしゃくれさせた。スズランがそんな二人の前へと移動し、しゃくれた二人の顎を手で押さえようとしてきた。

 スズランの突然の行動に二人は狼狽えて、締まらない別れとなったが、御者は最後まで満更でもなさそうな、口角の上がった表情をして馬車を走らせた。


 馬車が行った後、二人はスズランに謝罪をした。二人は自分らの行動で移動が遅れると思い、スズランはそれをいさめたのだと思った。実際の理由は知らないが。

 謝罪を済ませ、三人は改めて進路を遠くに見える建造物に向けて歩き出した。道はしっかりと整えられており歩きやすい。気まぐれに道をはみ出さない限り道に迷う事無く建物に着くだろう。


「あたしケンキュー所初めて来たけど、すっごい自然に囲まれた場所なんだね。キレ―。」

「そりゃあ、そもそも魔法を研究しているんだからなぁ。俺も資料読んだだけの知識だけど。それによると、魔法ってのはそもそも『精霊せいれい』から発せられるを燃料としているんだ。」


 いわく、その精霊は自然が豊かな場所から生まれ存在する。逆に人工物が多く自然の少ないまち中では精霊は存在出来ず、発する魔素も少なくなる為、まち中での魔法の使用は制限されている。だが、魔法使用の制限には他にも理由があった。


「カルミアは魔法を使った後に残るものが何か知ってるか?」

「えーっと…魔法の『ざん』だっけ?」

「そっ。その残滓が多く残っていると魔法を上手く使えなくなるけど、それを除去してくれるのも精霊によるものなんだ。だからまち中の精霊がいない場所で残滓が出さない為ってのも制限の理由の一つなんだ。」


 ここまで話し、感心しているカルミアを横にクレソンは考え込んで足を止めた。カルミアとスズランも釣られて足を止め、クレソンの方を見た。


「船でさ、探知機が動かないって言われて視てみたんだけどさ、どこも異常は無かったんだ。結果として探知の魔法具を動かす為の燃料が不足していたのが不調の原因だったんだ。魔法具の燃料もヒトが魔法を使う時と同じで魔素を消費するんだが、可笑しいだろ。だって、船があるのは海のど真ん中だぜ?」


 海の上はつまりは大自然に囲まれた状態であり、精霊だっている筈だし魔素だって豊富にある状態の筈だった。だが、燃料となる魔素は不足した。いや、無かった。


「いる筈の精霊がおらず、魔法の力である魔素も無い。ここまで考えてさ、今凄く嫌な予感がしてんだよね。」

「…うん、あたしも。特に、あのケンキュージョからそのイヤなヨカンがめっちゃする。」


 言ってカルミアは視線で今目指し歩いている研究所を指した。魔法の研究の為に、自然に囲まれた場所に施設が立つその光景に違和感がひしひしと肌を刺す。それでも行かない訳にはいかず、三人は研究所へと歩みを止めずに歩き続け、とうとう研究所前まで来た。

 呼び鈴を鳴らすがヒトが出てくる様子は無く、建物から感じる気配はヒトと、ひとではない別の何かのものだった。

 カルミアとクレソンは目配せをし、合図も無く扉を思い切り強く蹴飛ばして開けた。その拍子で扉から変な音がしたが気にせず、二人が先行して中に突撃した。

 中は研究施設の入ってすぐの部屋という内装をしており、開けた部屋にいくつもの扉にどこかへと通ずる廊下、そして入り口の横には掲示板らしいものが壁に掛けられていた。

 その掲示板らしきものを見ると、日付が掛けられた報せの紙がいくつか張られており、その日付が全て三日前となっていた。


「…シズかだね。」

「あぁ。これは異常だな。」


 研究施設だからといっても、何を研究対象にしているかで研究所の中の様子は変わるだろうし、ものによってはヒトが少なく静かな場所となる。

 しかし今回訪れた研究所は規模が大きく、研究員も多くいる場所だと事前に聞いている。故に全く音がしない今の状態は正に異常であった。

 そんな中の状態に、二人は再び見合った。


「これは、もしかすると。」

「あぁ、きっとそうだ。」


 緊迫した雰囲気が二人から発せられた。もう二人にはこの状況がどの様なものか理解しているらしい。


「これはきっと…研究員全員で隠れん坊をして、俺らを試しているに違いない!」

「これだけ広そうなケンキュージョだもんね!サガしがいがあるってもんだね!」


 理解するどころか、緊迫感もあったものではない二人の台詞を聞いたスズランは、二人の髪の毛を摘まんで引っ張った。引っ張られ痛がる二人はスズランにふざけた事への謝罪をした。その直後、玄関広場の奥の方から声が聞こえた。声を聞いた三人はその声のする方を凝視した。すると徐々に声の主の影が見えてきて、影はヒトの形へと変わっていき姿を現した。

 その姿は厚手の衣を羽織った露出の全くない衣装で、室内で作業をする為の衣装だと一目で分かり、そのヒトは研究員の一人だと分かった。

 その研究員らしきヒトは、遠目だからよく確認出来ないが、何やら慌てた様子でこちらに走ってきている様に見える。その様子は、近付くにつれて確かなものだと分かってきた。


「はぁ…はぁ…だっ誰か、たっ助けてくだ…さい!」


 その研究員らしきヒトは、研究所に来たばかりの三人の元へと駆け寄ると、息を切らして膝を付いてしまった。相当体力を削り走って来た事が一目見ただけで判る程だった。


「ドーシタの!?今ここ、どうなってるの!?」


 さすがに相手の状態が状況だけにふざけた態度はとらずに状況を聞こうとそのヒトの目線を合わせる為にしゃがんだ。そのヒトは息を切らしつつも、何かを三人に伝えたくて声を出そうとする度に喉を傷めたの様にして声が掠れ上手く話せずにいる。

 そんなヒトを落ちつけさせるためにクレソンはそのヒトの横に移動してそのヒトの背中をさすってやった。

 漸く落ち着いてきたのか、そのヒトは場所を変えようと言い、聞いたカルミアとクレソンは同意し、ゆっくり歩いてとある一室へと入った。中に異常が無いのを確認した後、扉を閉めると中から鍵を掛けて皆座り込んで一休みする姿勢となった。そのヒトも大きく息を吐き出した。


「はぁ…申し訳ありません。あなた達は異変の調査を依頼した―」

「うん!セーカクにはその部下って事で!」


 そのヒトの確認する言葉を聞いて、真っ先にカルミアが答えた。聞いたそのヒトは安心したかの様に再び息を吐いた。一安心してから、今研究所内で何が遭ったかを説明し始めた。


「本当に突然で、どこからともなく現れた生き物の様な物体に我々は襲われたんです。私以外のヒトがどうなったか、逃げるのが精一杯で分からないんです。申し訳ないです!」


 まだ不安や恐怖が残っている中で他のヒトの安否を心配してか、研究員は頭を抱え泣き出してしまった。カルミアは研究員をなだめようと頭を撫でつつ声を掛けた。クレソンは少し考えてから、研究員に質問をした。


「ちょっと思い出すのは怖いかもしれないですが、その襲ってきた奴らはどんな見た目ですか?」


 相手を気遣いながら、襲ってきた相手の情報を手に入れる為に唯一無事だった研究員に問いかけた。研究員は聞かれてから少し悩む仕草を見せたが、直ぐに顔を上げて口を開いた。


「今さっき生き物の様、と言いましたが、正直言ってあれは生き物ではないですね。動きそのものは粘液生物スライムの固形版の様な感じで。」


 そこまで聞いたカルミアとクレソンは、どこからともなく現れ、ヒトを襲うという所と見た目が類似している事から、研究員が言っている相手と自分らが今まで戦った謎の物体が同一の存在であると察した。

 まさかここにも現れるとは。しかも建物の中とは二人は予想していなかった。確かに船というヒトが多く乗る乗り物でありヒトが多くいると言う箇所は共通するが、坑道跡地はヒトが使わなくなって月日が経った古い土地であり、船と今の建物と共通するものがない。

 一体あの生き物は、一体何なのか?ただ襲うのが目的だとしても、正体が分からない以上それが動物的な本能と同じとは言い難く、ただ退治して本当にそれで解決するのか、二人は悩んだ。


「…いや、しかしまさか『アレ』が実体化して襲うなんて、この世界はどうなるのか。」

「そーだねぇ…ん?」


 嘆くように呟く研究員の言葉に二人は違和感を覚えた。今研究員が言った事は、まるであの不定形の物体の正体が何なのか知っていて発言したものの様に聞こえた。


「ちょっと!詳しくその話してくれませんかね!?」

「聞かせてください!」


 まさかと思いつつ、二人は研究員に詰め寄り、襲ってきた相手の詳細を聞いた。


「えっえっと…これは今日判明したばかりで、私もあくまで下請けで全容を知っている訳ではないのですが、あの粘液生物スライムの様な物体は、我々が今まで認知出来ていなかっただけで、実はあれらは既に存在して」

「回りくどいセツメ―は後!答えを先に言って!」


 答えを急いてカルミアは研究員に更に詰め寄ったが、クレソンは何かに気付いたかの様に再び考え込んだ。

 奴らは既に存在していて、ただ認知出来ていなかった、つまり見えていなかっただけ。という情報に、クレソンは既視感を抱いた。


「まさか…あいつらは」


 言っている最中、扉の方から大きな音と衝撃が扉を揺らした。


「ひぃいぃ!来たぁ!」


 研究員は扉の変化に酷く怯え、今にも飛び出しそうになっていた。落ち着かせようとするが、再び音と衝撃が扉に響き、遂にその衝撃で扉が壊されてしまった。

 壊れた扉の向こうから現れたのは、船や坑道跡地で見たのとほぼ同位体の物体だった。見た目の性質は確かに粘液生物スライムだが、形は鳥であったり四足歩行の動物の様であったり、生き物の様に見えてそうとは思えない容姿をしていた。

 先に動いたのはカルミアだった。僅かな音を立てて駆け出し、そのまま勢いで突撃し爪で目の前の物体達を切り裂いた。数を減らせたが、音が遠くから聞こえるから直ぐに相手側の増援が来るだろう。

 その隙を突いてか、研究員が恐ろしさに耐え切れず、部屋を飛び出してしまった。その後クレソンが追った。


「カルミアはスズランについてろ!」


 カルミアも続けて着いて来そうだったのを制止させ、スズランと一緒にいる様叫んで伝えた。カルミアは走る出す姿勢で停止し、クレソンの姿が扉があった場所を通って見えなくなるまでその姿勢のまま止まった。

 クレソンが行った後にすれ違う様にして不定形の物体が再び群れを成して現れた。一瞬たじろぎはしたが、直ぐに持ち直しカルミアは攻撃の態勢をとった。

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