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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
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17話 動く災害が去る

「うわーんスズちゃーん!コワかったよー!」


 謎の人物が姿を消し、安堵からカルミアはスズランに勢いよく抱き着いた。抱き着かれた勢いでスズランは少しよろめいたがなんとか持ちこたえて二人一緒に倒れる事は無かった。


「いやぁ、俺もヤバかったぞ。見ろ、手だけじゃなく足もまだこんなに震えてる。」


 言って指したクレソンの足は、確かに尋常ではない程震えていた。まるで産まれたての小鹿が恐怖で更に震えあがっている様だった。それでは最早ヒトが直立しているのも困難となるかもしれない。


「…しかしあのメーデンって奴、結局何しに来たんだ?」

「最初スズちゃんにコーゲキしようとしてたけど、スズちゃんの知ってるヒト?」


 聞かれたスズランは黙って俯いていた。その表情はまるで落ち込んだような、口にする事を怖がっている様に二人には見えた。


「…うん!どっちにしろ、こっちをコーゲキしてきたんだから、悪いヤツなんだろうね!だってこっち悪い事してないし!」

「そうだな!後言ってる事大半意味分かんなかったし、今は…あっそうだ。」


 言っている最中に、ここに来た目的を思い出し、スズランに確認をとろうとクレソンは近寄った。


「儀式…みたいなのはもう終わったのか?ちゃんと出来たか?」

「そうだった!そういえば動けてるのってあのギシキ…ぽいのやったからか!」


 未だにスズランが何をしているのか把握出来ていないが、少なくとも害を及ぼす者ではないと分かる二人はスズランに聞いた。すると結果を見せる様にして二人の見ている前でスズランは手を翳した。


「…風よ舞い踊れ。」


 スズランが詠唱を唱えると、スズランが翳した手を中心に風が巻き起こった。あくまで髪や服の裾がたなびく程度の強さだが、今まで風が吹きこむ事の無かったこの空間では、それは奇跡に近い事だった。


「雪山は火で、こんどは風なんだね。」

「正確には空属性だな。風の他に雷の力も操れる筈だ。って事は、他の二か所は残りの属性って事か。」


 残り二か所という言葉に反応して、スズランは首を傾げた。それを見て何となくではあるが、クレソンは何故あの二か所回る事を知っているのか、とスズランは聞きたいのだろうと思った。


「隊長が最初言ってたんだ。俺らはそれぞれの方角、東西南北それぞれ一か所ずつあるものを探すって。そういえば、そこまで詳しく話してなかったっけ。」


 言われてスズランは納得した様にクレソンを見て、それから傾げた首を元に戻した。他に聞きたい事はスズランには無いらしい。


「そういえば、隊長そんな事言ってたっけ!」

「お前は忘れてたんかーい!」


 明らかにワザとらしく振る舞う二人のやり取りをスズランは見て、少しだけ口元が緩んだ気がした。そして二人に向かって両手の拳を二人の頬に押しつけた。全く力は入っておらず、痛くも痒くもなかったが、二人はスズランが初めて自分から起こした行為に目を丸くした。


「ぐっぐあぁー!」

「かっ顔がぁあぁ!」


 次の瞬間、二人は思い切り殴られたかのように倒れたり悶えたりし、演技している事が丸わかりな動きをし始め、それを見たスズランは再び無表情へと戻り、棒立ち状態となって奇妙な雰囲気な空間が出来上がってしまった。


 やる事を終え、三人は坑道跡地を引き返し山小人の集落に戻って来た。長の家へと向かい、そして待ち構えていた長と対面した。

 長は作業をしていたのか、汚れが付いた前掛けをして、手にも汚れが付いた大きな皮の手袋をして顔には煤が付いていた。


「なんだ!意気揚々と行ったから早く帰って来るかと待っていたら、思ったよりも遅くていくつか仕事を済ませてしまったぞ?」


 皮肉を言いつつ、顔に着けていた防護具を外して帰って来た三人の様子を一瞥した。クレソンとカルミアは言われた事に苦笑いで返し勧められた席に座った。長も椅子に座り向かい合う形になった。


「さて…やる事は無事に終えた様子だが、何があった?…いや、何に会った?」


 クレソンとカルミアの顔が一瞬強張り、まるで悪戯した事がバレた子どもの様な心境となった。スズランは表情こそ変わらないが、目を伏せて目線を長と合わせようとしなかった。そんなスズランの変化を一瞥した後、問い詰める様にクレソンとカルミアの方に目を移した。


「土地守である私の前で隠し事をするなよ?それにそれは隠し事をしている場合でもない情報だろう?」


 言われて白状すると思ったのか、元々言うつもりではあったが言う機会を図っている最中に相手から言う機会を与えられて驚いていただけかは分からないが、とにかく言う事を決めた二人は意を決した表情へと変え、口を開いた。


 坑道跡地の奥に会った魔法晶の事、そして奥で出会ったメーデンという人物の事を包み隠す事無く伝えた。聞いた長であり土地守でもあるライラァ・サラは、深刻な表情をして考え込み出した。


「…そいつは魔法を使ったか?」


 聞かれて二人はメーデンが魔法を使ったかどうかを思い出した。しかし、魔法らしいものを使った場面を思い出せず、頭を捻り唸った。


「…思い出すと、魔法使ってないか?まぁ異変の事もあるし、使えなかったってのが正解か?」

「あれ?でも最後の瞬間イドーって魔法じゃない?…あれ、じゃあ使えないワケじゃない?あれぇ?」


 メーデンの行動を思い出すと、不可解なものが多い。それに考えてみれば、単独で跡地とは言え坑道の中を進むのは明らかに危険で無謀だ。実際三人は例の不定形の物体に多数襲われ、応戦出来たとは言え、数で押されて危険な状況だった。

 一体メーデンはどうやって、何を目的に坑道跡地に?そして何故スズランを攻撃しようとしたのか?思い出すと謎が多過ぎて、あの時メーデンに睨まれた時の感覚が呼び起されて二人は体が震わせた。


「私にもそいつの目的も正体も分からない。だが、今度そいつがお前たちの行く先に現れる事は分かる。しかも相手はなかなか好戦的ときた。これからはもう旅行気分で歩いて行かない様にしな。まっお前らも分かってるだろう。」


 忠告を聞き、互いに見合わせて互いの心境を表情に乗せて伝えた。自分らの速さで、だが出来る限り速く進んで行く筈だった旅に暗雲が立ち込め、不安が表情の外へと漏れ出ていた。スズランはいつも通り、二人を見ているだけだった。

 そんな二人ともう一人の様子を伺い、溜息を吐いた長は、フとある事を思い出した。


「あぁそうだった。あんたら堅物共のお仲間さんからこっちに連絡来てたよ。急ぎの様だってさ。」


 不安を変な姿勢で誤魔化そうとして立ち上がっていたクレソンとカルミアは長の言葉を聞いて動きを中断し、席に座り直し改めて話を聞こうと姿勢を正して前屈みになった。


「何て来ましたか?」

「至急、『魔法協会東支部の研究所へ赴き、『結果』を確認しに行ってほしい』との事だとよ。あんたらが私の所に来るって分かってる辺り、さすがだよ思うよ本当に。」


 確かに自称『愛・緑の守護隊』であるカルミアとクレソンの行き先を把握しての連絡を寄越すのは相当の手練れであると分かる。そして、何やらスズランには分からず、クレソンとカルミアには分かっているであろう名前が出て来た。

 研究施設へ行き、結果を聞くという事だが、二人にどんな関係があるかはスズランには見当がつかなく見える。


「そこまで行く為の手段は用意してやる。それまでちゃんと体を休めて、準備しときな。」


 長の気遣いに、二人はかあちゃん!と長に向かって拝む様にして言い、それを聞いた長は誰がかあちゃんだ!と怒鳴り散らした。スズランには分かっていないが、言われて怒られる事だったらしい。

 怒りつつ話を終えた長は席を立ったが、そこでまた何かを思い出したかの様に声を上げて、三人の方へと向き直った。


「今回は運が良かったが、次はどうなるか分からない。次までに良く考えときな。」


 長が言ったその台詞に、クレソンとカルミアは確かに、と納得し頷いた。だが、その台詞を言った瞬間、長は二人にではなくスズランを見ていた事には、二人は気付かなかった。そして当のスズランがどう受け取ったかも、スズランが反応を見せない為に誰にも分からなかった。

 話は終わったという事で二人は切り替え、集落にある店を一通り見に行こうとスズランを連れて行ってしまった。そんな一行の後姿を見送り、姿が見えなくなったのを確認してまた長は溜息を吐いた。《


「やれやれ。結局あいつらには他に何も言えなかったが、仕方ないな。全ては『精霊さま』のお導きってね。全てを教えるかは当人次第さ。…いや、この場合何て呼べな良いのかね。」


 誰も居ない部屋の中、独り言を言う長に問いかける者はいなかった。


「…ひとりごと言って何気どってんだラサさん。」


 話し掛けていないだけで、隣の部屋から覗く様にして見ている者はいたが。


 静かに、徐々に変化していく『ソレ』は黙ったままだった。でも、確かにその内に何かを秘めて、何かを吐き出せずもどかしい気持ちを確かに持って、先に進んで行く―

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