表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
101/150

13話 意思が働く

 迂回せず道を先に進むという事になった。

 進む先は今までの岩肌が目立つ山道とは裏腹に木が密集して生えており林となっている。そこまでの広さではない筈だが、進む先が陰って暗く向こう側が見えない。見ていると一瞬白いものが見えた気がした。しかし進むと決めた以上何時までも立ち止まっている訳にはいかない。

 そう思っているとスズランがいつもの無表情のまま、二人の先を速足で進んで行った。危なっかしいと二人はスズランの後を追うが、クレソンは逃げ腰でいつもよりも足取りは重く二人と比べて背丈が高いのに、今だけはその背丈が低く見えた。


 進んだ先、林の中にも岩が転がっていたり凹凸おうとつの激しい道があり、歩いて行くのは厳しそうだ。それでも進まねばならないのが三人の現状だ。

 スズランも気にせず先に進もうと足を動かしている。カルミアはそんなスズランが転ばぬように先程同様に手を繋ぎ、並んで歩いた。移動に関しては二人はこれで問題が無さそうだが、問題はクレソンの方だ。

 二人の後を追う様にしてクレソンも歩いて来てはいるが足取りは重く、辺りを見渡してばかりしている。ただ風が吹いて草が揺れただけで肩をね上げ驚いており、短い悲鳴と冷や汗と穏やかとは言えない状態で今にも倒れてしまいそうに見える。

 スズランはそんな尋常ではないクレソンの状態が気になるのか、歩いている最中もクレソンの方へと振り返り様子をうかがっている。一方のカルミアは慣れているのか、クレソンの状態を知っているという感じでスズランの様に見る事もせず変わらぬ表情で先を進んでいた。


「クレソンって、ホント―にいなくてもユーレイこわいってなっちゃうからさ、あんまり口にしないようにしてあげてね?」


 クレソンの今の状態についてカルミアがスズランに耳打ちをし、そのまま二人はクレソンを見えないひもで引っ張り誘導する様にして先導し歩いた。

 道と同じく凹凸の激しい一行の進みは遅かったが、着実に林の出口に近付いていた。木々の間へと続く道の先から日の明かりが射し、スズランの表情は相変わらずだが、カルミアとクレソンの表情が安堵の色を見せた。特にクレソンに至っては安堵によるものか、油断したが為に足元が疎かになりつまずいてしまった。

 躓き転んでしまったクレソンは、また短く変な悲鳴を上げた。カルミアはその声に笑い、クレソンの姿を見ようと後ろを振り返った。そこには倒れて膝をついたクレソンと、クレソンの傍で屈んで様子を見ているスズランがいた。

 二人のその姿を見て、カルミアは考えた。この林に入る前から自分はスズランと手を繋いでいた。そして林の中も手を繋いで歩き、林から出ようとしている今も、自分はスズランと手を繋いでいる状態の筈。だが、今スズランは自分から数歩離れたクレソンの傍にいる。

 では、今自分と手を繋いでいるのは誰だ?

 先に見て気付いたクレソンは顔面は既に蒼白となり動かなくなってしまっている。スズランも表情こそ変わらないが、自分の手の先をジッと見ていた。

 そんな二人の様子を見届けた後、カルミアは意を期して自分が誰かと繋いでいる手の先をゆっくりを目を動かして見た。

 カルミアの手の先、そこには全身の血の気が失せた真っ白な腕、足、そして顔があった。何処もかしこも骨を見紛うほど痩せ細り、髪は無造作に伸びて美しいとは程遠い容姿となっている。

 何よりも顔は同じヒトとは思えぬ形相となっており、目が見えない。隠れて見えない、では決してない。目があるであろう場所には目の代わりに黒く、深く開いて穴があった。

 声が聞こえる。男とも女とも言えない声。掠れて聞き取り辛い筈のその声が何を言っているか聞こえてしまった。


 いッしょにいよオ?


 顔面が蒼白なってから大分間が空いてからクレソンは声にならない悲鳴を上げた。声を聞いたからか、必死に現実逃避をしていた頭が現状を理解してしまったからか、クレソンは悲鳴以外の言葉を発さなくなった。

 カルミアはクレソンの悲鳴を合図に、繋いでいたはずの手が何時の間にか捕まれていた状態になっていた自身の手を振り払い距離を取った。筈だった。

 離れた筈なのにそれはカルミアから離れず、カルミアの眼前にまだいた。そして振り払われた手を再び掴もうと両の腕を伸ばしてきた。

 その瞬間、スズランが横からそれを思い切り突き飛ばした。それによりそれの態勢が崩れた。その隙を突いてカルミアはクレソンを脇から腕を通して持ち上げ、スズランの手を引っ掴み二人を引っ張って林の外へと走った。

 そこを待ち伏せでもしていたかの様に、木々の間や影から手が、顔が悲鳴の様な音と共に現れ出し、外へと向かう三人を追いかけた。

 敵に囲まれた状態になったがカルミアは構わず光が射す方へと走った。


 なんデおいてクの?

 痛イ、やだ…怖イよ

 ひとり…シないで


 聞こえてくる声も無視して、カルミアは力を振り絞り、林の外へと出た。

 出た後も距離をとる為に走り、林から離れた場所で漸く止まり、カルミアは後ろへ振り返って林の方を見た。林の方からは走っている最中に聞こえた声が遠くから聞こえたが、こちらを追って来る気配はもうなかった。そう判るとへたり込み、大きな溜息を吐いて安堵を見せた。


「あーコワかったぁ!しかも手ツナいじゃったよー!クレソンがコワがるの、ワカるなぁ。」


 ねぇクレソンと話しかける様に振り返ったが、クレソンはその場にへたり込んだまま、力無く顔を伏せていて返事どころか何も喋らない。心配したカルミアはクレソンの肩を揺すったが、それでも返事が無い。

 どうしようかとカルミアが悩んでいると、横からスズランがクレソンの傍へと歩み寄った。そんなスズランにどうしたのかカルミアが聞こうとした瞬間、スズランがクレソンの頭を叩いた。スズランがクレソンを叩いた事にカルミアは驚くが、それが切っ掛けか漸くクレソンが反応を見せた。


「いっつ…えっスズラン?…えっあっ!」


 顔を上げ、やっと自分らの今の現状を理解したかの様に驚き、くびを振り回す様にして渡りを見渡した。その様子を見て、カルミアはある予想を立てた。


「クレソン!まさか…ずっと気絶してた?」


 言われたクレソンは、一瞬肩を跳ね上げて顔を強張らせた後カルミア達の方へと向き直り、強張った顔から余裕のある笑顔を見せた。


「いやぁ!カルミアが幽霊と手繋いでる姿を見た瞬間、もう意識が飛んでさ!何があったかもう全然分かんなかったぜ!」


 舌を出して片目を瞑る仕草をし、陽気に喋って見せた。クレソンのその姿をみてカルミアは手を顔に当てて溜息を吐いた。


「まーったく!ゼンゼン返事しないから心配したってのに!心配してソンしたよ!…でも、そんなクレソンもキライじゃないよ?」

「カルミア!」


 本気なのかワザとなのか分からない会話劇を繰り広げる二人の背景に、花が咲いて見える幻覚が見えた。スズランはそんな二人をただジッと見ているだけだった。


 林を抜け、林に入る前の岩肌が再び姿を見せ、道なりに進む作業に戻った。だがその前に、カルミアは気になる事があり、スズランの方を見た。その時のカルミアの表情は、先程までの明るいものではなく、固く真剣なものだった。


「スズちゃんさぁ、さっきあたしがユーレイにオソわれた時、どうやってユーレイにサワったの?」


 そう言われ、スズランは変わらない表情のままでカルミアを見つめた。クレソンはどういう意味かをカルミアに確認した。


「えっスズラン、幽霊…っに触ったのか?確か物理的な接触は出来ない筈だが。」

「うん。だからスズちゃんが何かしたのかなぁっておもったんだけど。…もしかしてスズちゃん、魔法つかった?」


 カルミアが魔法と口にした瞬間、クレソンは驚きの表情をした後直ぐにカルミアと同様の固い表情となった。


「確かに資料とかで幽霊の体、『幽体』は魔法の力が接触可能とは知っていたが、もしかしてスズランは手に魔法の力を纏って、幽霊…っと接触したって事か!?」


 多分、とカルミアがスズランの代わりに答えた。スズランの反応はほとんど無かったが、自身の手を見つめだした所を見て、予想は確信となった。

 スズランはカルミアが幽霊に掴まれそうになった時、咄嗟に自身の手に魔法の力を膜の様にして覆わせ、そして幽霊を突き飛ばしたのだ。

 二人は揃って溜息を吐いた後、スズランに詰め寄った。理由はもちろん、スズランが魔法を使った事についでだ。

 二人はまちを出る前にスズランに魔法を使う事を禁止にした。相次ぐ魔法酔いによる気絶を心配しての配慮だったが、スズランはそれを無視するかの様に魔法を使った。厳密には要領が異なるが、魔法の力には違いなかった。


「ダメって言ったのに!…でも、それであたしタスかったんだよね。」

「あぁ。俺らが自分でどうにかするって言ったのに、結局助けられたしな。情けねぇな。」


 スズランだけでなく、自分らにも落ち度があるという事で今回は不問という事になった。それでもまだ二人は懸念があった。

 以前にも考えた事だが、スズラン自身も魔法を使う事へと欠点があるのは分かっている筈。それでもスズランは微量ではあるが魔法の力を使った。今回こそ気絶まではいかなかったが、今回のようなことが続けば積み重ねで不調をきたすかもしれない。

 せめて、言葉を交わす事が出来れば良いが、結局今も会話と呼べるものが出来なかった。何よりもスズラン自身が言葉を発さない為にスズランの心情が量れない。それこそが二人が今一番懸念している点でもある。

 やはりそれは記憶が喪失している為か、と二人は思考しこれからの行動を考えた。道中必ずしも戦闘は起こる。そうなった時、スズランは自分らに指示は聞くだろう。だが咄嗟の時、特に自分の身を守る時、そして自分ら二人に危険が迫った時にどういった行動を起こすか気を配らねばならない。

 雪山の時よりも一層に警戒し、スズランを囲う様にして二人はにじる様にして歩いた。それにより一層移動に時間が掛かり、ほんの少しスズランの表情が渋いものになって見えた。気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ