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永久にトモに_とある異世界譚(改)  作者: humiya。
第3章 クレソンとカルミアともう一人
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12話 道中が不確か

「スズちゃん、魔法はシバラく禁止ね!」


 気絶から立ち直り、目を開いて最初に聞いたのがカルミアの言葉だった。


 船を襲う巨大蛸きょだいだこを撃退し、無事船は予定の港に着いた。船員との話を済ませ、直ぐ近くにあった宿屋で休ませてもらってるというのが三人の現状だ。

 今居る場所は大きな港まちで、東の大陸の中では『東の玄関口』と呼ばれている。まちに入るヒトの数は多く、その多くが行商人なのはよく知られている。まち中に宿屋が建ち数が多いのは必然だった。こうして一行が休む宿が容易くとれたのはそういう訳となる。

 そんな宿名の一室でスズランは起きて、カルミアとクレソンから一声掛けられた後直ぐに忠告を受けたのも当然の事だった。立て続けに魔法酔いによって気絶していては、見ている者が心配するのは当然。何より三人は共に旅をしている最中だ。何かある度に旅が中断されては終わるものも終われない。


「こちらに落ち度があって魔法を使う事を強要させているのは悪かった。だから、こちらも出来得る限り俺らで対処していく。だから、スズランも出来れば後方に下がって身の安全を確保していてほしい。」

「ウン!あたしたちで守るから、ヤバイ時はニげていいからね!」


 いつになく真剣な表情でスズランに訴えかける二人の姿に、無表情で無口なスズランも頷く位の反応は見せた。その反応に二人の固かった表情が安堵で柔らいだ。

 普段から意味不明な言動で周りを驚かせたり不安にさせる事の多い二人だが、こうしてヒトを気遣う言動をとる辺り、根は真面目なのだと思い直される。


「よし…話もついたし、早速まちを散策だ!」

「このアタり初めて来たから、来るのタノしみだったんだぁ!」


 そして直ぐに前言撤回となった。目的のある旅の筈が、行き成り寄り道をする事となり、スズランは無表情から不服そうな複雑な表情となり、盛り上がっている二人を見つめた。


 暫くの散策の後、集合場所であるまちの陸側の入り口前にて、二人は各々必要となるものを購入し終え満足そうにしていた。


「アレっクレソン、思ったより買ったのスクないね?」

「あー、店行ったんだけど火薬置いてなかったからさ。こりゃ、直接山行って山小人の店に行くしかないな。」


 一番に求めていたものを入手出来ず、目的を新たにしてスズランへと向き直った。スズランの方は何も持っておらず、それどころか装備を持っていない事を気にした二人はスズランにあるものを渡した。


「ほらこれ、スズラン用に買ったもの。」

「禁止!っとは言ったけど、いざという時コレがあれば魔法を使う時タスけになると思うから。」


 そう言い、スズランに渡したのは片手持ちのワンドだ。

 魔法を使う職業者が持つ杖には、魔法を使う際の補助を行う仕掛けが施されている。魔法の威力を底上げする術識と呼ばれる模様なものであったり、最初から特定の魔法の術識が掘られ、その魔法のみを詠唱を省略して発動させたりと、用途は様々だ。


「魔法酔いの原因の一つに魔法の使用者が魔法の力を制御出来ず多量に放出してしまうのがあるって聞いたんだ。スズランの症状がそれだとすれば、これで多少は制御出来る筈だから。」


 スズランが渡されたのは所謂『初心者用の杖』というものだと言う。まだ魔法に使用する力を微調整出来ない未熟な魔法使いが最初に使う杖とされている。

 他者が使用した魔法からはまだ影響は受けるかもしれないが、自身の魔法による影響はこれで軽減するだろうと二人が調べ、購入したのだとか。あくまで初心者用なので、強い魔法に対しての制御は難しいからあくまで威力の弱い魔法を使う事も約束した。

 二人からもらった杖を自信の目の前まで持ち上げ、ジッと杖を見つめるスズランに二人は気恥ずかしさの様な落ち着かない気持ちが込み上げた様に感じていた。


 港まちを出発し、二人はスズランに次はどこに行きたいを聞いた。現状目的地がどこかは、記憶を失っているとされるスズランのみが知り、スズラン自身が目的補方角を指し示す状態だ。仕方のない事とは言え、スズランを先頭に立たせる事に忍びない事ではあるが、それを堪え二人はスズランの後に続いた。

 進む先にあるのは山、それもクレソンが先ほど口にした山小人が住むとされる山脈地帯がある方を進んでいた。まち付近は暫く平地が続くが、山に近づくにつれて岩肌が目につく様になり、上り坂が増え険しい道のりと変化していく。

 クレソンとしては、行きたいと思っていた場所と本体の目的の場所が重なり丁度良いと感じたらしく、先程から楽しげな表情で道のりを歩いていた。カルミアは元々身体能力が高く運動神経も良いので、道が険しくなろうとも大丈夫そうだ。

 一方のスズランは二人よりも一歩先を進んでいるが歩みは遅く、転がる石につまずきそうになったり、見ていて危なっかしい足取りをしていた。

 躓いて倒れそうになる度にカルミアが支えて助け、どうしようかとクレソンが一瞬考えたがその答えをカルミアが先に思いついた。


「あっそうだ!手ツナげばイーんだ!」


 そう言ってカルミアはスズランの手を握り、二人は横に並び立って歩く事になった。最初からこうすれば良かったとカルミアは思っている様子。

 手を繋ぐ行為には年齢によっては羞恥を感じる行為らしいが、スズランとカルミアとだとそういった感情は感じられない。どこか家族の様なものが感じられた。クレソンは二人の姿を見て一安心と息を吐いた。

 そんな感じで平穏な空気が流れる道中だが道の険しさは分からず、体力に自信のあるカルミアとクレソンも汗をかいて歩いていた。時折足を休めながら先を進み、周りにあるのが岩肌ばかりになる頃、行き先に立札が立っていうのを発見した。

 立札と言えばヒトが立てたもの。つまり立札が立つ場所の近くにはヒトが住むむらかまちがあるという事になる。北の大陸での立札が良い例だ。立札が立つ場所からそう離れていない場所に港まちがあった。

 三人は立札まで近寄り、書かれているものを見た。


 この先の道、亡者の群れが棲みついています。先に進むのであれば迂回する事をすすめます。


 どうやら注意喚起が書かれていた様だ。しかも自分らの進行先に亡者なるものが居るとの事。読んでいたカルミアは亡者というものがどういうものか分かっているらしく、眉をひそめ苦そうな表情していた。


「亡者…ユーレイさんかぁ。ユーレイさんってツメのコーゲキがあたんないから、タタカいたくないなぁ。」


 亡者、幽霊を相手にするのは厄介らしく、カルミアは戦闘を避けて道を通りぬけたいと口にした。

 そんな中、先ほどから声が聞こえないクレソンの姿を見る為に二人は後ろを振り返った。クレソンは確かに後ろに立っていたが、カルミアとスズランから大分距離の離れた木の陰に隠れる様に立っていた。顔面は真っ青になり、目線は下がったまま笑っている様な苦しんでいる様な複雑な表情をして体を震わせていた。


「…あっそうだった!クレソン、ユーレイがダメなんだった。」

「その名を口にするな!お願いします本当に考えたくない見たくない!」


 言葉にするだけでクレソンの体の震えは増し、汗の量も尋常ではない量を流し身を隠していた気にしがみ付いた状態となっている。カルミアの言う通り、相当幽霊といった存在に恐怖を抱いているのだろう。今のクレソンの喋り方も巻き舌で早口になっていた。


「ウーンどうしよう。クレソンがこんな状態じゃこの先ススめないよね?カンバンの通り、ちょっと回り道」

「いや、行く。」


 返事をしていないがスズランに話し掛ける様にしてカルミアが迂回する事を提案しようとしたが、話の中心となっているクレソン自身がその話題を切った。迂回をせず、道を真っ直ぐ進もうと言う提案までしてきた。


「イーの?ユーレイさんがどんなのかもワカんないし、もしかしたらいっぱい」

「いいいいいい良いから!数まで言わないで!」


 いっぱい居るかも、というカルミアの言葉を遮り、クレソンはまだ言いたい事があるかの様に口を開いたり閉じたりした。自分を落ち着かせようと息を整えてからやっと喋り出した。


「雪山では、寒いのが苦手なカルミアに無理をさせてまで同行してもらった。そこへ来て俺が幽霊が苦手だからってだけで俺だけ考慮してもらう訳にはいかない。」


 カルミアには無理をさせ、自分に対してだけ安全を考慮されるのは間違っているとクレソンは主張した。確かに傍から見ればクレソンの時だけ気を遣っている様に見える。クレソンは異議を唱え、俺にも無理をさせろと言って来たのだ。


「大丈夫だ。幽霊は物理的接触は出来ない種族だ。なら無視してサッサと通り過ぎれば良いだけだ。無理に戦って力を消耗せず、温存して目的地に向かおう。」


 先程の怯えて震えた声はもう聞こえず、はっきりと意見を言い行動方針を決めるクレソンの言葉にカルミアは笑顔でその言葉を了承した。

 肝心のクレソンだが、真剣な雰囲気で話しているのは判るが、距離は離れているし喋っている最中も木の陰に隠れていて、顔も何も見えなかったので表情で喋っていたかは二人には判らなかった。

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