第2話 丸焼き食堂
コブラミアに服を渡したのは金髪の横兵庫で赤い腹掛けと白いフンドシをつけており、裸足だった。
露出が多くて涼しい服装で貧相な体つきだが、色気がある大人の若い女性で楽しそうに笑っている。
「ありがとうございます」
友司はその女性に頭をさげた。
「妹分の友達を助けるのは当然のことなのじゃ。わしの名前は紅天虞 小稲荷じゃ」
派手で軽薄な女性は古風なしゃべり方で自己紹介をした。
「そして、こいつがわしの妹分じゃ」
小稲荷は隣にいる女性を紹介した。
黒髪の横兵庫で自分と同じ赤い腹掛けと白いフンドシ、裸足。違いは豊満な体つきで小稲荷より若く、友司と空子、黄美と同じ年齢の少女だった。
「理梅!!」
少女を見て友司は驚いた。
「久しぶり、友司」
少年のことを知っており、笑みを浮かべた。
「友司。だれなの?」
友司の知り合いなので空子達は気になっていた。
「おれと同じ養護施設にいた友達の末善 理梅だ」
「はじめまして」
彼女は空子達に頭をさげた。
「おれと理梅は捨て子で仲がよくて一緒に遊んだんだよ。懐かしい」
友司は養護施設時代を思いだした。親がいなくても理梅のような友達がいて楽しかった。
「おれが非正規団員になって、先に養護施設を出たんだよな」
友達との別れはけっこう悲しかったが、仕事で彼女のことを忘れて疎遠になっていた。
「理梅はなにをしてるんだ? 奉無零じゃなさそうだな」
理梅と小稲荷に首輪などがない。しかし自由に動く権利がある奉無零もいるので友司は少し心配になった。
「私は友司がいなくなった後、隊商で働くことになって、今はそこの料理人よ」
少女は自慢した。
「そうか。理梅は料理好きで知識と技術が豊富だったな」
彼女の料理の試食をしたことがあり、味を思いだした。
「娼婦でもあるけど体より料理を売る方が向いてて、小稲荷姐さん達の料理や飲食店の手伝いなどをやってるよ」
養護施設時代の理梅もきれいで人気があり、隊商は娼婦にするために引き取ったが、彼女は違う才能でうまくやっていた。
「料理がうまい妹分ができて、わし達はうれしいのじゃ。それに理梅の影響で料理に興味を持つ娼婦が増えて、充実した食生活になったわい」
小稲荷は理梅がきたことを喜んでいた。妹分に食事を任せていた娼婦達は料理に興味を持ち、調理を手伝う者が増え、視野が広くなっていた。
「私達はこの店の手伝いをしてるわ。タダにするから食べていってよ」
「そのつもりだ」
友司達は食事をするつもりだったのでちょうどよく、オープンテラスのあいている席に着いた。
客が少なくても石造りの建物は蒸し暑く、外の方が涼しい。ここで食事をした人々の汗がしみこんで乾いた木製の椅子とテーブルは新しい客の汗で濡れていく。
「ご注文は?」
理梅は厨房へいき、小稲荷は給仕なので五人の注文を聞く。
「この暑さじゃ食欲が出ないから水をちょうだい」
喉が渇いていて水を飲めば食欲が出るので空子は水を注文した。
「おれも水がほしい」
「私も。丸焼きにされたので喉が渇いています」
十次郎と黄美も水を頼み、友司とコブラミアは頼まなかった。
「料理はカレーソースをかけたフライドチキンだ」
「私はラクサをお願いします」
木の板のメニューを見て十次郎と黄美は料理を決めた。
「おれは魚のトウガラシスープ」
「我は激辛カレーライス」
友司とコブラミアもメニューを見て注文した。
「かしこまりましたなのじゃ」
忘れないように木の板に注文を書き、小稲荷は厨房へいった。
「黄美はどうして、ここで丸焼きになっていたんだ?」
料理ができるまで時間があり、友司は黄美に話しかけた。
「哨戒中、変な人達に捕まって、肉としてここに売られました」
現実世界には女性を捕えてアマゾポリスなどに売る悪党がおり、彼女もその被害者になった。
「そして丸焼き食堂が私を買って丸焼きにしました」
ここでは奉無零を食べて処分することがあり、黄美は食材の価値しかなかった。
「黄美を丸焼きにするなんてとんでもないところだ!」
空子は怒ったが熱くなってしまった。
「どうぞ。お水なのじゃ」
小稲荷が木製のコップに入っている水を持ってきて、テーブルに置き、店の中へ戻った。空子は水を飲んで体を冷やし、冷静になった。
しかし飲んだ水が蒸発してしまったように感じ、また喉が渇いた。
「お待たせしましたなのじゃ」
小稲荷は四人の料理を一度に運んで、テーブルに置いた。ここで給仕をしているので落とさずに運ぶことができる。
「これはうまそうだ」
木製の皿には一羽のニワトリを解体した骨付きフライドチキンがのっており、赤いカレーソースがかかっているので肉好きの十次郎は喜んだ。
「いただきます」
フライドチキンを持ち、油やソースで手が汚れても気にせず、豪快にかぶりつく。
「辛くてうまい!」
やわらかい肉とカリカリの衣があっさりしていて、ピリ辛のカレーソースがクセになる味だった。
辛くて熱くなり汗がすごいので水を飲みながら、ギザ歯で骨をかみ砕き、しゃぶって溶かして食べている。
「涼しい見た目ですね」
木製の器に入っているラクサは熱さを感じない見た目で黄美は笑った。
「いただきます」
箸で麺を持ってすする。
「まろやかな辛さでおいしいです」
周りの暑さで熱くなっているようなラクサは食べると熱く、ココナッツミルクとエビの出汁、スパイスのスープは常夏の快適気分にしてくれる。
米の麺はカレーライスのご飯と違い、軽い口当たりで暑くて食欲がない人でも完食できる。
「うまそうなカレーだ」
コブラミアはカレーが好物。木製の皿にはサフランライスがのっており、具がトウガラシだけのとても赤いカレーがかかっていた。
「いただこう」
木製のスプーンでカレーとサフランライスをすくって食べた。
「感激の激辛だ」
好みの辛さで喜んでいる。ハバネロのペーストで赤くし、サフランライスにはコショウとニンニクが入っており、徹底的に辛くしたカレーだった。
人間では辛いカレーだが、魔人の彼女は平然と食べている。
「トウガラシの量がすごい」
木製の器に赤いスープが入っており、大量のトウガラシでなにも見えず、友司が木製のスプーンでトウガラシをどかすと白身魚の切り身が見えた。
「いただきます」
木製のスプーンで身とスープ、トウガラシをすくって口に入れた。
「体が熱い」
魚介出汁とハバネロのペーストのスープ、トウガラシがクセになるほど辛く、白身魚の味を邪魔しないであげている。
辛くて熱いものが平気な友司は汗をかかずに食べており、辛さで耳から火を出し、喉が燃えている。
「私にはアイスクリームをちょうだい」
水を飲んで少し食欲が出た空子は皆とは違うものを小稲荷に頼んだ。
「かしこまりましたなのじゃ」
小稲荷は店の中へ入った。アイスクリームはできているものを盛るだけなので、すぐに持っていくことができる。
「どうぞなのじゃ」
ヤシの実の器にのっている白いアイスクリームを持ってきて、テーブルに置いた。
「この暑さで溶けてない」
溶けにくいアイスクリームを見て空子は少し驚き、木製のスプーンを持った。
「いただきます」
アイスクリームはちょうどいいかたさで、すくって食べた。
「冷たくておいしい。それにスパイスのいい香り」
なめらかな口どけと優しい甘さで恍惚の表情を浮かべた。体が冷えて心地よく、スパイスが入っているので活力を与え、暑さをふっとばした。
「おぬし、理梅の友達じゃからいいことを教えてやるのじゃ」
客が少なくて余裕があり、小稲荷は友司に話しかけた。
「いいことってなんだ?」
年上でも十次郎と同じタイプなのでタメ口だった。
「コロシアマでドラゴンの牙琥珀というアイテムが賞品になっておる」
少年にコロシアマの情報を教えた。
「コロシアマか」
コロシアマはアマゾポリスにある闘技場で戦闘経験を積むことができ、賞金や賞品が手に入る。
「それと後宮刑務所に賢い三人の女がいるから情報を集めることができるぞ」
後宮刑務所に情報源がいることも話した。
理梅がアマゾポリスで調理をしていたように小稲荷は雑用と情報収集をしていた。
「コロシアマはおれとコブラミアがいくから空子達は後宮刑務所へいって情報収集をしてくれ」
激レア賞品が気になり、今より強くなりたい友司はしっかり者の空子にリーダーを任せてコロシアマへいくことにした。
「分かったわ。任せて」
空子達は指示に従い、後宮刑務所へいくことになった。食事が終わったら別々の行動をする。
理梅の名前は据え膳と梅でモチーフは遊女です。
「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「名門貴族の男の娘の残酷オスガキ無双」も連載中です。




