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光の導く先にはいつも大切な人がいる。

 それからのヘリオスはまるで別人のように勉強をした。

 あんなに嫌々だったのがウソみたいだ……

 血の繋がった妹だからかな。

 結局わたしは血の繋がっていない姉だし、恋人にもなれない。

 中途半端だな……

 ヘリオスへの恋心も消す事ができないし。

 あぁ……

 ダメだなあ……


 そして、ヘリオスは十四歳になった。

 いつの間にかわたしよりも背が高くなって、立ち振る舞いも王子らしくなってきた。

 あと一年か……

 ヘリオスが十五歳になったら、リコリス王国に奇襲をかける事になっている。

 お別れが近づいているんだね。

 やっぱり、弟としてじゃなくて……

 わたしはヘリオスの事を好きなんだ……


 今は、海賊の仕事を終えて皆眠っているから砂浜も静かだな。

 いつもは賑やかだからね……

 お散歩しながら考え事をするのにちょうどいいね。


 ……?

 何?


 空から光が降りてくる。


 え?

 この光って……

 あの時と同じだ!

 ヘリオスの母親の船に導かれた時と同じ!

 

「父ちゃん! 父ちゃん!」


 家にいる父ちゃんを大声で呼ぶ。


「なんだよ……やっと眠れ……え?」


 他の人達も起きてくる。


「おい! この光ってあの時のやつだろう?」

「そうだ! また何か教えてるんじゃないか?」

「光の先に宝があるかもしれないぞ?」


「どうしたの? 皆、寝て……あれ? 何? この光……?」


 勉強中のヘリオスも家から出てくる。


「ヘリオス! あのね? この光……」


 わたしが途中まで話すと光が家の中に伸びていく。

 光を追いかけると、ヘリオスの母親の肖像画を照らしている。


「え? 何これ?」


 ヘリオスが不思議そうに見つめている。


「ヘリオス、父ちゃん達がヘリオスの母親に会う事になったのはこの光のおかげなんだ」


「父ちゃん? じゃあ、光に導かれたっていうのはこの光……?」


「そうだ。今回は……ヘリオスの母親を照らしているな……」


「これ、どういう意味なのかな? 母ちゃんはもう亡くなっているし……」


「もしかして……墓……か?」


「墓? 母ちゃんの? シャムロックに墓参りに来て欲しいって母ちゃんが言ってるって事?」


「……空から光で照らすなんて天使みたいだな……確かにキレイで天使みたいだったが……」


「バカ言ってる場合か? バカ息子が! 同じ血が流れてるんだ! わたしも天使かい?」


 ばあちゃんが怒りだす。


「母ちゃん? 同じ血って?」


 父ちゃんが、ばあちゃんに尋ねている。

 

 わたしも聞こえたよ?

 同じ血?

 どういう意味なのかな?


「今はそんな事どうでもいいんだよ! いいかい? これはシャムロックに行けって事だ! バカ息子、ヘリオス、ココ! 行ってきな!」


「ええ!? 今すぐじゃないよな? 今帰ってきたのに!」


 父ちゃんが半泣きになっている……


「今すぐだ! さっさと行きな!」


「ええ!? 嫌だよ! 母ちゃん! 眠いんだよ!」


「同じ事を何度も言わせるんじゃないよ! 行きな!」


「母ちゃんんん!」


 

 こうして、わたし達はヘリオスのおばあさんのいる国であり、ヘリオスの母親のお墓があるシャムロックに向かう事になった。


 ヘリオスの事は、優しそうなシャムロックのおばあさんにも隠してある。

 王族なんて、リコリス王国を見てると信用できないからね。

 でも、リコリスに奇襲をかけるにはシャムロックの力が必要なんだ。

 近いうちにヘリオスに会ってもらわないといけないんだけど……

 王族だからなかなか機会がないんだ。

 どうすれば、会えるのかな?

 やっぱり、家に忍び込むしかないかな……

 会ったとして、孫だって信じてもらえるかもわからないし……

 顔が似ていてイヤリングを持っているだけじゃあ信じてもらえないかもね。

 あと一年も無いのに、困ったな……



「何やってるの?」


 甲板で乗組員達が嬉しそうに着替えている。


「おう! ココは最近船に乗ってないから知らないか……こんな立派な船に乗ってるんだから、お貴族様の服を着ないとな! あはは!」

「そうだぞ! どうだ! お貴族様に見えるだろ? あはは!」


 乗組員が得意気に話している。

 ばあちゃんが怒るから、ばあちゃんのいない時だけお貴族様の服を着ているのか。

 うわあ、父ちゃんまで着替えているよ……


「父ちゃん、その服どうしたの?」


「あぁ、お貴族様の船を襲った時にいただいたんだ! 似合ってるだろう! あはは!」


「ばあちゃんには秘密なんだね」


「うぅっ……母ちゃんはお貴族様がキライだからな。秘密にしてくれ!」


「うん。どうしてばあちゃんはお貴族様があんなにキライなの?」


「さあな。何も話してくれないからな」


「そっか……ばあちゃんってさ、普通じゃないよね?」


「ん? 怖いって事か?」


「いや、それもそうだけど、ヘリオスに勉強とか立ち振る舞いを教えてるでしょ? ばあちゃんが何でそんな事知ってるの?」


「うーん……父ちゃんにもわからないな……」


 

「見えてきたよ! シャムロックだ!」


 ヘリオスの嬉しそうな声が聞こえてくる。


 母親の生まれ育った国だからね。

 嬉しいよね。

 かわいいな。

 笑った顔は赤ちゃんの頃と変わらないよ。


 

 シャムロックに上陸すると母親のお墓に向かう。

 ヘリオスはキレイ過ぎて目立つからローブのフードを被って顔を隠している。


「ヘリオスは何回か来ているんだよね?」


「うん。姉ちゃんは初めてだよね?」


「そうだよ。良い所だね」


「うん! こっちだよ!」


 ヘリオスが手を差し出してくれる。


 あぁ……

 小さい時は、よく手を繋いで歩いていたけど……

 最近は繋ぐ事も無かったな。

 いつの間にか、こんなに大きな手になっていたんだね。


 ドキドキが早く大きくなる。

 ヘリオスに聞こえないか心配だ。


 ……?


 歩いていたヘリオスの動きが止まる。


「ヘリオス? どうしたの?」


「……」


「ヘリオス?」


 何かをじっと見ている?

 何?


 視線の先を見ると……


 え?

 女の子?

 どういう事……?

 ヘリオスにそっくりだ。

 それに、あのイヤリング……

 ヘリオスのイヤリングと同じ物?

 まさか……

 あの時、海に落ちた妹……?


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