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やろうやろうと思っても、なかなかやる気って出ないよね。

 夜になって、ヘリオスの乗った海賊船が帰ってくる。


「ヘリオス、父ちゃん! お帰り! あれ? ヘリオスは?」


「あぁ……後から降りてくる……」


「え? 何かあったの?」


「リコリスでな……王妃が、王女と、王子の子供を身ごもった女を処刑したんだ。そこをちょうどヘリオスが見ちまって……」


「え? あの王妃、まだそんな事してるの?」


「あぁ……ヘリオスの奴、かなり参っちまって……母親を重ねて見たんだろう」


「そう……王は? 見てきたの?」


「遠くからな。あと、民も見てきたぞ? ありゃ酷いな。富める奴はどこまでも豊かに暮らして、貧乏人は人としてすら見られていない……」


「……想像通りだよ。あの王じゃ民は大変だね」


「ヘリオスが……」


「ヘリオス? ヘリオスがどうかしたの?」


「飢えた民に持っていたパンを与えたんだ。奪い合いになってな……そしたら、その場にいた年寄りに言われたんだ。『優しい振りはやめろ』ってな」


「そんな……ヘリオスは振りなんかじゃなくて本当に優しいのに……」


「仕方無いさ……それだけ追い詰められてるんだ。今日ヘリオスに一つのパンをもらっても明日は食い物が手に入るとは限らない。結局通りすがりの奴が優しさで施しをしても何にもならないのさ……長期的に誰かが何とかしないとな……」


「……ヘリオスは大丈夫かな? 傷ついたよね?」


「傷ついたって言うよりは……もしかしたら……」


「え? 何?」


「……ココ。ヘリオスの事は弟としてしか見るな。わかるな? 傷つくのは目に見えてる」


「父ちゃん?」


 ヘリオスが船から降りてくる。


「……父ちゃん、姉ちゃん」


 真剣な顔だ……


「オレ、決めたよ。リコリスの王になる」


「ヘリオス……?」


 ウソ……

 そんな……

 ずっと一緒にこの島で暮らすって言ったのに……

 約束したのに。


「王も王妃もクズだ……あれじゃ皆死んじゃうよ……オレは父ちゃんに拾われて毎日腹一杯食べて温かいベットで寝てるのに……リコリスの民は皆飢えてるんだ。オレしかいないんだ。あの国を救えるのは……だから……」


「ヘリオス、あの王と王妃が簡単に王位を譲るはずがない。命を奪う事になるぞ? できるか?」


 父ちゃん……

 命を奪うなんて……

 ヘリオスが怖がるよ……


「……うん。覚悟はできてるよ」


 まだ十三歳なのに……

 こんな辛い決断をする事になるなんて……

 それなのにわたしは、恋心に浮かれているなんて恥ずかしいよ。

 ……ずっと側にいたいなんて、もう考えるのはやめよう。

 父ちゃんの言う通りだよ。

 ヘリオスの邪魔をしたらダメだよね……


「ヘリオス! オレらも手伝うぞ!」

「オレもだ! ヘリオスは弟みたいなもんだからな!」

「母ちゃんのかたきをとる時が来たんだな!」


 皆……

 皆もヘリオスをかわいがっていたからね……

 わたし達海賊の中には魔族もいるから、一緒に戦ってくれれば心強いね。

 ついに、動き出すんだ。

 もう、ヘリオスはわたしの手の届かない場所に行っちゃうんだね……



 って……


「ヘリオス! 勉強は!? 立派な王様になるんでしょ?」


 海で魚釣りをしてる場合じゃないでしょ?

 十五歳になったらリコリスに攻め込むんでしょ!?

 勉強の時間になる度に逃げるんだから!


「待って! 今いい所だから!」


 もう!

 王様なってから苦労しないようにいっぱい勉強しないといけないのに!

 一か月も遊んでいるよ?

 剣術とか魔術とかの訓練はするけど、勉強は嫌いなんだね……

 このままで大丈夫なのかな?

 心配だよ……


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