表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/9

これってプロポーズだよね?

「じゃあ、気持ちを切り替えて! ヘリオス、十三歳の誕生日おめでとう!」


「うん! 父ちゃんありがとう!」


 さっきあんな話を聞いたばかりなのに、もう明るく笑っている。

 ヘリオスは、ずっと捨てられるんじゃないかって不安だったから、やっと安心できたんだね。

 

「姉ちゃん! この魚のフライ世界一旨いよ!」


 ニコニコのヘリオスが幸せそうにわたしの手料理を食べている。


「そんなの誰が作っても同じだよ?」


「違うよ? 姉ちゃんが作ったから旨いんだよ!」


「ヘリオス、父ちゃんの三段ケーキもあるぞ?」


「うわあぁ! やったぁ!」


 こうして、賑やかにお祝いは終わった。

 これからも、ずっとこんな幸せが続くんだね……



 父ちゃんと乗組員がリコリス王国に出かける船の準備をする間、ヘリオスと木陰で話をする。

 母親の形見のイヤリングがキラキラ光ってキレイだ……


「オレ、本当の父ちゃんを見てくるよ。それで終わりにする。だって、オレの父ちゃんは、今ここにいる父ちゃんだけだから……」


「そっか……うん。安心したよ」


「安心?」


「うん……ヘリオスが遠くに行っちゃいそうで怖かったの。これからもずっと一緒だよね?」


「もちろんだよ! だって……オレ……ずっと姉ちゃんの側にいたいから……」


 ずっと側にいたい……?

 わたしと同じ気持ちでいてくれたんだね……


「ヘリオス……わたしもだよ?」 


 恥ずかしいけど……

 わたしの気持ちも伝えないと……


「オレもう自分の気持ちを隠さないよ! 姉ちゃんの事、他の奴に取られたくないんだ! だから……オレが幸せにするから……オレが大きくなるまで待ってて?」


「……うん。待ってる……でも、その頃にはわたしはもっとおばちゃんになってるよ?」


「大丈夫だよ? 姉ちゃんはすごくキレイだから! 世界一キレイだから!」


「わたしが……キレイ?」


 ドキドキが早くなる。

 わたしを見つめるヘリオスの瞳が真剣だ……


「うん! オレだけの姉ちゃんだからね? 他の奴と絶対結婚しないでね?」


「うん……早く大きくなってね?」


「ヘリオス! 出発だ! 金目の物を大量に頂戴してくるぞ!」


 父ちゃんが海賊船からヘリオスを呼んでいる。


「あぁ……置いてかれちゃうよ! 行ってくるね?」


「うん! 見つからないように気をつけるんだよ?」


「あ! そうだ! 姉ちゃん?」


「ん? 忘れ物?」


 つま先立ちになったヘリオスが、わたしのほっぺたに口づけをする。


「……え?」


 今、何が起きたの?

 ヘリオスが……

 え?


「えへへ……行ってくるね! マイハニー!」


「はあ!? ちょっと! どこでそんな事覚えたの!?」


 まさか、父ちゃんの大人向けの本を見ちゃったんじゃないよね?

 帰ってくる前に全部燃やしてやろうか……

 いや、でも……

 前に燃やした時にショックで寝込んだっけ……

 あの時は、船長の仕事をしなくて大変だったんだ。

 ヘリオスもいつの間にかそんな年齢になったんだね。

 いつまでも赤ちゃんじゃないんだ……


 って、あれ?

 今のってプロポーズ……だよね?

 ……ヘリオスのお嫁さんか。

 きっと、毎日賑やかで、楽しくて、幸せだろうな……


 側室だった母親が拐われた時に乗っていた船で、息子のヘリオスがリコリス王国に盗みに行くのか……

 世の中は何が起こるかわからないね……

 お腹をすかせて帰ってくるだろうから、ヘリオスの好物をいっぱい作っておいてあげよう。

 喜ぶだろうな……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ