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眉毛サロンにて

作者: バリ
掲載日:2022/06/15

洋楽流れる、待合室。先客の女子高生に15分待たされている。他人の眉毛に捧げる時間。花とピンクで彩られた小さな待合室で、雨音とビートルズが同時に耳の穴を通過する。

“バシャ、君の手を、バシャバシャ、握らせてよ”

ーきっと握った手がふやけてるだろうな。土砂降りのなか握られる手と、握る手を思い浮かべる。どちらの手も指先にゆるい皺が入っている。愛されて、愛して、そんなことは気にも留めないんだろうな。


溜息をついたら名前を呼ばれて、立ち上がった。


オーダーを伝えて目を瞑る。まずはワックスからだ。シアバターの香りが塗りつけられては剥がされる。鼻をくすぐる微妙な痛みをクイーンが追いかけてくる。

“ママ、ペリッ。僕は人を、ペリッ。殺したんだ、ペリペリ。”

ー銃の代わりにブラジリアンワックスを持って、泣き叫ぶ男。ママ、これで僕の脇毛を抜いてくれよ。


次は細かい毛を抜いていく。赤みを抑える冷えたカモミールの香りと、カチカチと小刻みに不規則な、金属の当たる音。急き立てられるようなその音を、さらに急き立てるブルーノマーズ。

“ほらほら逃げろよベイビー、カチカチ、俺が君を夢中にさせる、カチカチカチ、その前に”

ー自分に酔っ払う酔狂なナルシスト。それでいてその目は冷ややかに熱くて、その温度差をもっと味わいたい。逃げろと言うくせにこちらをとらえて離さない。こちらが熱をあげるまで。


意識がとろとろと溶けてきたころ、鏡を渡される。

綺麗な眉毛が出来上がった。


4000円の支払いをして外に出る。

雨が上がった。


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