26.事件の真相2
「そしてフーリエ公爵にはシモンを実行犯にするようにと持ちかけた。シモンは、フーリエ公爵から持ちかけられる前にあなたに計画のことは聞いていた。シモンは、フーリエ公爵の言うことなど素直に聞かなかったでしょうが、あなたの言うことならば別です。あなたはシュゼットの母親で、一緒に死を悼んだのですから」
ソレーヌは無言で、侮るような視線をブリジットに向けている。
「自首してください。そうすれば、慈悲があるかもしれない」
「なにを言っているのかしら?」
ソレーヌは鼻で笑った。
「どうやら、病弱だというのは身体だけではなく頭の方も、みたいね。それに、クロードに妻と認められたということで図に乗っているのかしら? 自分の立場というものを知った方がいいわ。あなたは本当に王妃に相応しいとして選ばれたわけではないのだから」
「知っています、病弱で二十歳まではとても生きれないと言われた女だ。どうせすぐ死ぬ。余命幾ばくもないクロード様にあてがうのにちょうどいい女だ。そう考えて私をクロード様の妻としたのでしょう、シモンと共謀して」
「身体が弱くて寝ている時間が多いからなのかしら、夢と現実が混ざり合ってしまっているようね。酷い妄想だわ。お医者さんに診てもらった方がいいわね」
ソレーヌはあくまでもこちらの言うことを取り合わない態度だ。
「では……証拠を語りましょう」
本当は自ら罪を認めて欲しかったが、仕方がない。ブリジットは一度言葉を句切ってから話し始めた。
「フーリエ公爵の部屋から、血判状が出てきたのはご存知ですよね? 今回の件に関わった者が血の指紋を押したものです。フーリエ公爵の血判があり、シモンの血判もありました。そして、そこに誰のものか分からない血判も。それは、あなたのものではないのですか?」
「そんなわけないでしょう。……ああ、そうだわ、そういえばフーリエ公爵は自分の罪を軽くしようとしてか、私がこの件に関わっているなんて戯言を言ったようだけれど。そんなもの、嘘だと誰もが知っているわ」
「ええ、まさかそんなことはないと誰もが一笑に付したそうですね。罪人であるフーリエ公爵の虚言だと。母親がまさか実の息子を殺そうとするはずがない、と皆思ったのでしょう。ですが、母親の中には自らの欲望のために実の子供を犠牲にする者もいます。私はそれを……身をもって知っています」
ブリジットは唇を噛み締めた。
「どうか自首してください、一時の気の迷いである、と。今は後悔していると申し開きをしてください。どうか……」
涙ながらに訴えるが、まるでソレーヌに響いているようには思えなかった。
「……もう充分だ、ブリジット」
「え?」
突然の声に見ると、寝室の扉の前にクロードが立っていた。いつからそこに居たのか、まるで気配を感じなかった。
「後はこちらで始末をつける」
そして、ブリジットの元まで歩いてきたクロードは、ブリジットの肩に手をのせ部屋から出て行くように促した。
「あの……クロード様? 今までのことを聞いて……」
秘密裏に話をつけるつもりだった。
ソレーヌの態度から、やはり彼女がこの件に関わっていたのだという疑いが濃くなった。しかし彼女は認めていない。それをクロードに話すかどうかは後で考えようと思っていたのに。
「ああ、母がお前の説得に応じるのならば少し考えようと思ったが、どうやら難しいようだ」
彼がそう言うということは、もしかしてソレーヌがこの件に関わっていたと気づいていたのだろうか。その上で、もし彼女を見逃そうと考えていたのならば自分は余計なことをしたのかもしれない。
「そんな、クロード? あなたは実の母よりもそんな女の言うことを信じるというの?」
必死の形相で訴えるソレーヌに、クロードは冷たい瞳を向ける。それを見てか、ソレーヌの顔はおびえたようなものになる。
「そう、ね……。実の妹を斬るのになんの躊躇いもないあなただものね」
「全ての罪を明らかにすることが俺の望みだ。そのためにいろいろと調べさせてもらう」
そしてその言葉を合図にしたように警備兵がなだれ込んできた。これからソレーヌの部屋を調べるようだ。
これ以上ここに居ても邪魔になるだけだ。ブリジットはソレーヌの部屋を後にした。
もしかして余計なことをしたかもしれない、という後悔を一生負って生きることになるかもしれないという予感を胸に、ブリジットは警備兵に付き添われて自室へと戻った。
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