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23.罪人への処遇2

「まあ、国王として腰を据えるならば、いろいろと方法を変えないといけないと思ったのが第一の理由だ。お前に救われた命であるしな」


「命を救ったなどと……そんな大袈裟な」

「そう謙遜するな」


 微笑を向けてきたクロードに親愛の情を感じ、ではこちらの主張を聞いてくれるのかと期待したのだが。


「だが、いくらお前の頼みでもロランのことは聞けない。ロランとその祖父のジャン・フーリエ公爵は処刑する。処刑は一週間後、王都の広場で民衆の目前で刑を執行する。縛り首だ。その遺体は一週間人目に晒す」


「そ、そんな……」


 しかし、この時代にはそう珍しいものではない。

 処刑は民衆にとって娯楽であった。特に今まで権威あった者がそれを失い、処刑される様子を見ることに民衆は興奮するだろう。


「それはあまりにもお気の毒です……」

「なんだ、ロランに肩入れするのか? あいつのことをろくに知らないくせに」


「ええ、一度会っただけですが……それでもそのお人柄については窺い知れました。クロード様を慕っておいでで、そのご無事を心から願っておりました。クロード様もそれは分かっていらっしゃるでしょう?」


「そうだな」


 クロードは陰鬱なため息を吐き出した。


「ロランは、身内の中では唯一といってほど信頼できる者だった」

「ええ、ロラン様はとても賢く穏やかで、周囲への気配りもできる優れた人物です」


「だからロランの方が国王に相応しい、と」

「そのようなことは申し上げておりません」


「お前はそうではなくとも、他の者はそう考えた。俺が王宮にいなくなった後、最初は反発していた者がいたそうだが、やはり俺ではなくロランが国王となった方が考える者が多くなった。そのような禍根を王宮内に残してはいけないのだ。国王に背く者は神に背くに等しい。忘れないで欲しいのは、俺に、ではなく、国王に、だ。言っている意味が分かるか?」


 クロードは試すような視線でブリジットの瞳を覗き込んでくる。


「ええ……分かります。またいつクロード様を亡き者としてロラン様を国王に、などと考える者が出てくるか分からない。王宮内での争いが起これば国は荒れて、国民の暮らしにも影響を与えるかもしれない」


「ああ。だからロランは処刑する。今後そのような者を企む者が出ないために」


「……ロラン様を処刑することは、必要なことなのですね」

「ああ、そうだな。必要なことだ」


 そうはっきりと言い切るクロードは、もうそう決意したのだろう。

 国王として、国を荒らす要素は放っておけない、排除しなければならないと。


「なにかの罪に問わなければならないことは分かりました。ですがやはり処刑するのは受け入れられません。たとえば、どこかに幽閉するですとか……」


「生かしておくというのが問題だ。ロラン自身が望まなくとも、ロランを利用しようとする者は必ず出てくる」


「ですが……なんとかならないものでしょうか」


 クロードも助けられるものならば助けたいのだという気持ちが、彼と話している伝わってきた。だが、仕方がないのだ、と。自分が国王として立つ以上、避けられない事態なのである、と。それは理解できたが、やはりロランを気の毒に思ってしまう。


「ロランを処刑せずに済む方法がないわけではない」

「え? そ、それは?」


 俯いていたブリジットが弾かれたように顔を上げると、クロードはにやりと笑った。


「ロランに国王の座を与えて、俺はお前と一緒にどこかへ出奔する」

「そ、それは……」


「自分がいなくなった国がどうなっても知ったことではない。どうする?」


 試すような視線に、ブリジットは言葉に窮してしまう。


「それは……本気なのですか?」

「本気だと言ったら?」


「無責任ではないでしょうか……。クロード様を慕っている方もいらっしゃいます。それに、ロラン様に罪はないとしてもお祖父さんの企みに利用された身です。そんな方が国王に、と。反発される方もいらっしゃるのでは? そうなると王宮内のいざこざで国政が混乱し、国が乱れます……」


「ああ、俺もそう思う。だからロランを排除して、俺が国王に戻るよりも他に方法はない」


 それだけ言うと、クロードは部屋を出て行ってしまった。

 残されたブリジットは言いようのない感情に支配され、自分の無力さを思い知り、うなだれることしかできなかった。

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