17.決行の時
「……突然だが明日決行することに決めた。心の準備をしておけ」
お茶会があった日の翌日の夜、本当に突然クロードにそう告げられたのでブリジットは驚いて言葉に詰まってしまった。
ここはブリジットの寝室だった。もう王宮に暮らすほとんどの人は寝ている時間だろう。不眠症のブリジットにとっては、まだまだ夜はこれからであるのだ。
「あの……もう少し王宮の様子を探っては……? 昨日仲良くなった令嬢もいます、彼女たちからもっとなにか聞けるかもしれません。いくらなんでも急すぎるのでは?」
「そうしたい気持ちもあるのだが、俺がもう既に死んでいるのでは、という声が上がっている。リュートブルグ古城に密かに人を差し向ける者もいるかもしれない。そうなったら厄介だ」
クロードの言うとおりだ。なににしても、それだけは勘付かれないほうがいい。
「もう隊の者たちには指示している。俺が余命幾ばくもないと油断している者たちの隙を衝く」
彼の瞳には静かな怒りが灯っているような気がした。これ以上押しとどめることはできないだろう。
「分かりました。ですが、罪のない人にはできるだけの恩赦を」
「……そうだな。本当ならばこの王宮に住む者たちを皆殺しにしてもよかったのだが」
「そんな……クロード様を慕っている方もいらっしゃいます」
「それが分かったのはお前のおかげだ。身体の自由を奪われて、世界の全てが敵のように思っていた」
不意にクロードはブリジットの身体を抱き寄せ、そして顎を上げさせるとそっと口付けてきた。
彼のぬくもりを感じながら、結婚式から今まで過ごした日を思った。最初は寂しく辛い日々だったが、彼を取り戻した。
クロードはブリジットから身体を離すと、懐から懐中時計を取り出して時間を確かめた。
「よし、日付が変わったな。決行する」
「え? 明日って……深夜ということですか?」
「朝まで猶予を与える気はない。やるなら夜がいい」
クロードはブリジットに手を差し出した。
「さあ、一緒に来い」
そうしてクロードに手を引かれるままに、ブリジットは王宮の中心にある玉座に向かって歩いていった。
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