悪夢と導きの夢
ここはどこだ?紅い、紅い炎が揺れている空間は音がなく、紅い世界にいるような感覚だ。よく見ると壁は城と同じようであり、紅く見えていたのは炎と同じくらい紅い血で染まっていたからだった。それは誰の血か、わかっていた。もういない、親の血だ。
「貴様、あれは何処だ?」
声がして振り返るとそこには悪魔のような黒髪の人物が立っていた。竜人の特徴は瞳だ。やつの瞳は深紅の血のような瞳の色に瞳孔が細い瞳だった。竜は冷徹な顔に返り血がかかっていた。俺は竜と視線が交わった瞬間、悪寒と恐怖に襲われた。竜の瞳はただ残酷で卑下する冷たい視線で、俺の首の動脈あたりに両親を殺した爪の先を押し付けらるようだ。殺されるっと思った俺は無我夢中に逃げる。
これは夢だ。悪い夢だ!!
がむしゃらに走ると道が開けた。そこは綺麗な花畑。そこに一人で立っている人物がいた。一瞬、さっきの竜かと思ったが見た目も雰囲気も違う。さっきの竜は冷たい印象だが、このひとは白い髪と同じく、ふわふわした雰囲気だった。
そいつは振り返り、驚いたように目を見張る。緑色の瞳には瞳孔がない。それは精霊の特徴だ。
「君はまた、逃げ続けるつもり?」
精霊のその問に首を傾げる。確かに俺は今、逃げているがこの精霊は「また」と言った。不思議に思いながらも俺は正直に答える。
「逃げなきゃ殺られる。どうしようもないことだ。」
「大切なものがあっても?」
悩んだ。大切なものとは何か?竜が言ってた「あれ」、だろうか?
俺が黙ってしまったので、精霊は耐えきれずに言葉を発する。
「答えられないならいいよ。まぁ、これに答えはないから。」
俺は考える。答えはない、それはどれもあっている、ということか。しかし、精霊は俺の考えたことを読んだかのように言う。
「でも、それがあっているかは僕でもわからない。答えは選ばないとわからない。進まなければ、何も変わらない。」
俺は精霊の言うことに困惑を覚える。守っているだけでは駄目と言うことなのか。
「守っているのも駄目なのか?」
「守っていることも大切。そうしないと、それが傷ついてしまうから。」
精霊が俺の後ろの方を指す。その方を振り返る。
そこにはイオナがいた。そうだ、思い出した、俺はイオナと一緒に商店街を廻るためにイオナを助けに来たのだった。
地面が無くなる感覚がある。現実に戻るのだ。
「ま、とりあえず、頑張れ。君なら大丈夫だ。」
そんな言葉を残して、精霊も消えた。