目覚め
俺は外の鳥のさえずりに目を覚ました。ひどく体が怠いし、頭痛もする。包帯を巻かれた頭を抑えながら上半身を起し、辺りを見渡す。
豪華な装飾が施された壁と白いベット、俺には身覚えのない光景だった。部屋の空気も嗅いだことがない上品な香り、しかし、どこか懐かしい。
どうして、俺はここにいるんだ…?
俺はこうなる前の記憶を辿ろうとする。…何も思い出せない。
すると、ドアを開けて橙色の髪の中性的な少年が部屋に入って来た。髪が腰まで長く、睫毛が長い。服の色がもう少し淡かったら少女と間違えてるだろう。おそらく、俺より少し年下だ。
「お目覚めですか?」
入ってきた男子は尋ねる。声も声変わり前だからか、女の子のように甲高い。自分の見解があっているか、不安になってきた。俺は白いベットから立ち上がろうとして、体が悲鳴を上げた。
「っ!」
「あわわ、起き上がらなくていいですよ!医者から安静を言われてます。」
おそらく筋肉痛だろう激痛に呻きながら頷いた。痛みですでに目が覚めている。
「三日も目を覚まさなくて心配しました。」
「三日も!?」
「はい。」
そんなに寝てたのか。何があったんだろうか。
「僕はランドノと言います。第四王子です。」
「だ、第四王子様!?た、助けて頂きありがとうございます。」
「あ、別に敬語じゃなくていいですよ。」
「そ、そうか。ありがとう。俺は…、あれ?えーと…。」
あれ?名前がまったく思い出せない。自分の誕生日とか身長やら体重やらは思い出せるが両親の顔やどこに住んでたかが全く思い出せない。
「もしかして、記憶がないのですか?」
察したランドノはそう訊ねる。俺は頭をがしがしかいて、また、思い出そうとするが、全然思い出せない。
「ああ。そのようだ…。自分の誕生日とかは思い出せるが、今まで俺がどこに住んでたとか名前が思い出せないようだ。」
と答えるのが精一杯だ。ランドノは狼狽える。というか、その場をくるくると回っている。その姿はパニック状態の小型犬を連想させる。
「どうしようぅぅ。まずは、父上に報告しなければぁぁ。」
「…そう思うなら、早く行って来いよ。」
「は、はい!」
そんなランドノに俺は少し呆れながら言った。ランドノは回るのを止めて、少し慌てながら部屋を出て行った。
それから二日後、医者から外出の許可が出たことで俺はランドノに王が俺に会いたいとおっしゃているというのでランドノについて行った。
廊下は純白の白を基調としており、床は大理石、窓枠は金色だ。所々に王家の紋章があった。光の十字の奥に剣が重なっているからシャイン王家だな。庭園も美しい山桜、グラジオラス、ジンジャー、クリスマスローズの四つの植物が四季を象徴し、咲き誇っている。おそらく、魔法で半永久的に咲くように庭園の温度と湿度を調節しているのだろう。
ランドノは白と黄色のさっきの部屋よりも豪華で威圧的な白のユリの装飾の扉をノックした。ここが王の仕事部屋らしい。威圧がとてつもない。無意識に緊張してしまう。
「父上、ランドノです。少年を連れて来ました。」
「あぁ、入って来なさい。」
と声があった。威厳がある低い声だった。しかし、さっきの発言はまるで俺がくることをわかっていたような言葉だ。ランドノは躊躇なく扉を開けた。
そこには三十代くらいの男が座っていた。多分、この人が王だろう。王は俺を見て微笑んだ。おっと、まずは感謝だ。
「長く部屋に泊めてくださりありがとうございました。」
「そんなこと、気にしなくていいよ。体調は良くなったようだね。私はレスター・シャイン、60代目国王だよ。ゆっくりしていきなさい。」
親しみが入っている口調で王はそう言った。
「ありがとうございます。」
王はランドノを呼び寄せる。ランドノは俺の事情を報告している。
「ランドノ、城や町を案内して。」
「はい。わかりました。」
と言って俺はランドノと王室を出た。
side:レスター
僕は息を吐きながら、椅子の背凭れに体を預ける。王である僕のこんな姿を見たらみんな、驚くだろう。事実、もうとっくにアラサーだし。まさか、この日が来たのか。いつか来るは思っていたが、まさかこの日だとは。
「姉上、亡くなったか。」
僕は無意識に呟いた。僕は知っていた。少年が王族の一人であること、彼の目的、そして、その運命も…すで