プロローグ
このオレオール王国は、誠実な王と慈悲深い王妃が治め、国民は穏やかに暮らしていました。
この国の王と王妃にはなかなか子供を授かりませんでしたが、ついに一人の男の子が二人のもとに生まれてきてくれたのです。
王も王妃も国民も皆が王子の誕生を喜び、祝いました。
たくさんの人に愛された王子は優しく、聡明で美しく育ちました。
しかし、王子が18の誕生日を迎えた時、とても容姿は美しいものの、大変身勝手で高慢な魔女が突然現われました。
「あなた、あたしの夫になりなさい」
魔女は、なんとも不躾な命令を王子にしてきたのです。
さすがの王と王妃も魔女に怒り、王子は丁重に断りを入れました。
すると、自尊心を傷つけられた魔女は莫大な怒りを呪いとして王子にぶつけました。
哀れにも呪われた王子は姿がみるみるうちに変わり恐ろしい牙と爪を持つ、全身を毛で覆われた狼の化け物になってしまいました。
王も王妃もどうにかして呪いを解こうと必死に方法を探しましたが、呪いが解かれることはありませんでした。
化け物になってしまった王子はその姿に絶望し、未来に絶望し、人目を避けるように国の端に建つ屋敷に閉じこもるようになりました。
それから二年、未だに王子の呪いは解けていません。