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8.
黄泉の列車は、車体の装飾がすべて黒塗りだった。
屋根の部分は、パンタグラフの代わりに黄金色の神棚になっていた。
乗降口には扉がなく、最初から吹き抜けの状態だった。
「大丈夫だよ。乗って!」
幽霊に大丈夫と言われても、不吉な予感しかない。
だけど私は、線路の少女を信じると決めていた。
さっきは信じてあげられなかったから、今度こそ信じたい。
「うん。わかった」
列車の中は薄暗かった。
車窓からは、なぜか彼岸花が見えた。
彼岸花は秋の終わりに葉が伸びて、夏に枯れるはず。
それなのに深紅の花々は、葉茎に向かって強く反り返っていた。
鮮やかな赤色が辺り一面に広がっている。
私は半袖のワイシャツに汗がにじむのを感じた。
車内は閑散としていたが、やはり年配の方々が多数を占めている。
「ねえ、お姉ちゃん。話したいことがあるんだけど、いい?」
「うん、いいけど。どんな話?」
「私が地縛霊になった経緯を聞いてほしいんだ」
「うん、いいよ。聞かせて!」
黄泉の列車は動き続ける。
私と線路の少女を乗せて。