表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰府これに隨ふ  作者: 雀ヶ森 惠
1.Cast a cold eye On life, on death.Horseman, pass by!
32/60

情熱のSymphonia(2)

 あやののマイハウスから一行が出ると『がらくたの都』に雨が降り出した、このゲームには天候の概念もあるらしい。

 どのように聖堂騎士団に潜入するかはあやのに一任するが、あの時何故アーシュベックは助けに入ったのだろうか? D.D.T onlineの防衛機能? それだけとは思えない、もっと作為が……では誰の?

 

「どうしたのjane_doe? 何か深刻な顔しちゃって」


「いや、何でもないさ……」


 あやのたちに言ったところで詮無い事なのだ。そんなことは私一人が解決する問題でいい。雨はどんどんひどくなってきていた、やがて雷霆が空を眩しく照らし出す。


「あ雨が結構ひどういでう、びしょぬれになっっちゃった」


「このワールドって傘の概念ないからね、まるちゃん。そういう時は、マントがあるでしょ? 頭から被りなさいよ」


 言われるまま私はマントのフードを目深に被った。三人ともだ、雨風は確かに凌げたがなんだか不審者の集団だな、我々は――


「さて聖堂騎士団の本拠に到着しましたっと……」


 そこは前にも一度来たが、立派な石造りの建物でたっぷりと資金が注がれていることは傍目にも判る。

 目の前では降りしきる雨の中、美しいがグロテスクな石造りのガーゴイルが雨水を吐き出している。私は建築様式には疎かったが、この建造物が美麗なものであることは理解していた。


「で、どうやって潜入するんだ、あやの」


「んとね……確かここの植え込みを搔き分けると」


 背の低い灌木が塀の途中に生えていた。がさがさとそこを探るとあやのは奥へと進んでゆく。残った我々二人は見張りというわけか、心もとないが。

 あやのは何かに到達したようで、木々の間から顔を出した。


「二人とも私と同じようにここに入ってきて、早く……!」


 辺りを窺いつつ私とまるこめXはがさがさと音を立てて、雨粒だらけになりながら植え込みを通り抜けた。

 そこには窓の開いた室内が目の前にあった。


「原作通りここから聖堂に入る、その前にマントについた雫を払ってね、足跡で判別されてしまうから」


 原作通り――『薔薇の復讐』ではここから聖堂騎士団の建屋に潜入したという事か……


「地下牢なら津鎌田t方が都合がいいんじゃないのかな?」


「聖堂騎士団教祖のシャフトという男は拷問の方を好むから、牢とは限らないわよ」


「聖堂騎士団の教祖ねえ……」


 私は思わず呟いていた。三人の居る室内は誰かの執務室らしく、サインと封蝋のある手紙が山積みになっていた。書棚にあるのは書籍ではなく資料の類であろう。


「シャフトはアーシュベックと違って甘くはないわ、見つかったら先ずヒドイ目に遇わされることは必定よ」


「きゃああああああ///」


「では発見される前に急がねば」


「そういうこと、解ったら着いてきて」


 あやのは手招きするとその執務室らしき部屋を出て暗い廊下に足を踏み入れた、私もまるこめXも息を殺してそこへ出る。

 外部の光の届かぬ廊下は目が慣れるまでは完全な闇と言ってよいほどで、あやのを先頭に私がしんがりを務め壁を伝って歩いて行った。

 ここの地理はあやのしか知らない、彼女だけが頼りだった。


「扉がある、わたしの記憶が確かなら僧兵が詰めてる部屋ね。戦闘準備はOK?」


 私は頷いたがまるこめXはそうでもなかった、躊躇して震えているように見える。


「まるちゃん、ゲームなんだから大丈夫よ」


 あやのはそう励ますと (何せ彼女は経験豊富なのだろうから)扉を思い切り開けた。差し込むランプの淡い光、狭い部屋にいたのは二人の武装した僧兵だ。頭に僧兵LV8の文字が付いている。


「貴様ら何者だ!?」「侵入者め! 汎神論者か!」


 そう口々に言うと手に持った僧兵お約束のメイスで襲い掛かってきた。

 なるほど、そういう反射をするようにプログラミングされた経験値の素、それがこの僧兵か。


 私は何の戸惑いもなくあのアオヒツギから託された打刀LV12を抜いた、近くにいた方の僧兵の腹をそれが裂くと、ゲームとは思えぬほど生々しい血の匂いと生の感触が伝わってきた。

 ぼろぼろと零れ落ちるはらわたと血液が石畳を赤黒く濡らした。打刀LV12は僧兵LV8の胴体を貫通し背中から噴水のように血液が吹き出した。

 私のjane_doeのかんばせは返り血に染まり、さぞ悪鬼の如き形相であったであろう。


「なにをしている! まるこめX、後ろだ!」


 発作的に私はそう叫んでいた。


「え、え、あああああ……っ」


「ええい! まるちゃん、危ないっ」


 私が一人の僧兵を倒している隙にもう一人がまるこめXの背後に迫っていた。


 この冬は終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ