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FUTURE WAS COME マビノギオン  作者: 昕燻司
1/3

日常

昕燻司です。

何故異世界物が流行っているのか気になって書いてみました。

私は異世界ものとかあまり興味ない人間です。

(どちらかとアニメから入る)

ちょっとずつ投稿します。宜しくお願いします。

 バイト帰りの草臥れた体を引き摺って、近所の本屋に寄った。入ってすぐ、慣れた道順と足取りで迷うことなく、狭い通路を縫うように進み、とあるジャンルの本棚の前に立つ。


〝異世界に飛ばされて勇者になった!〟

〝異世界に飛ばされて最強になった!〟

〝異世界に飛ばされて無能になった!〟


 今見ている本の紹介文の文言を見て、察しの良い方は解るだろうが、主人公・秋田若戸が見てるのは、主に〝ラノベ〟と称されるのが一般的に知られているライトノベル作品だ。

 とあるライトノベルがアニメ化され、それが爆発的にヒットしてからというものの、こういった異世界転生モノがやけに増えて来た。異世界転生物モノブームの再来とはよく言ったものだ。ネットの中じゃ、みんな口を揃えてそう騒いでいる。

そして今じゃ、ライトノベルの三分の一は異世界転生モノで相場を占めている。それらを片っ端から貪るように読み漁ったが、どれもこれも似たような作品ばかりで、まるで同じ作品の派生作品や劣化コピーを見ているようだった。

ファンタジーだからってそれはできないだろ、と突っ込みたくなる現実の亡者の夢を現実にするという、読者の願望を叶えるための作品を書くのはとても良い。かくいう若戸も、それをどれほど願ったものか。主人公が見知らぬ土地で見知らぬ人間と出逢い、様々な困難に右往左往するのもとても理解が出来る。だが、余りにも順応力にステータス全振りしすぎだろと思い至るほど、主人公が不可思議な状況に場慣れしてしまっているのが気に食わない。

 知りもしない土地に急に飛ばされたり、目の前に神やら女神やらがポコンといる状況に加え、「こんにちは!私は神です!」なんてクレイジーポップな発言をする変質者に逢い、多少は疑うものの、「なるほど。貴方は神で、貴方に飛ばされたこの世界は、自分が住んでいた場所とは違う異世界なのか!」と合点はいくまい。

通常の反応として、焦ったり疑ったりと言ったところだが、飛ばされてすぐに異世界だと理解する者もまずいない。更に追い打ちをかけるようにして、突如魔法を覚えるようになったりなど、チートを前提としないライトノベル異世界転生物で、覚えが良いを通り越して最早チート能力のようなその技術は、果たして日常生活の〝普通〟の中のどこから出てくるのかが不思議でならない。

 秋田若戸は人の想像の斜め上を行く現実主義を秘めた、ごく普通の男子高校生だ。


 普通話聞いただけで魔法をポコンと使えんのかよ、とか色々と突っ込みたくなるが、しかし、そんなことをいちいち考えてたらこの先切りがないので、自身とライトノベルの主人公とは脳味噌の根本から作りまでが違うのだろうと、自分の中で現実逃避するように答えを導きだした途端、何も気にならなくなった。 あーそうだよな。頭の作りが俺と違うんじゃそりゃあ覚えがいいわけだ。うわー、凄いなー。でも感情移入はできないけどね。


 若戸は数冊、ライトノベルの新刊を手に取ってレジに向かう。

(…そういやこの新刊の内一作品だけ、作者が作品を書いてる期間入院中だったって聞いたけど、よくもまあ、病人に書かせたもんだ。自分から書いたってんなら話は別だけど。こっちのライトノベルは最近アニメ化した作品に影響され始めたな。独特な世界観が意外と気に入ってたのに)

 無事に会計を済ませ、レジ袋を手にぶら下げて帰路に就く。そう言えば、あのキャラのこの先はどうなるんだろう。 頭の中は買ったライトノベルの内容についてで満ち溢れていた。何の変哲もない帰路を、いつも通りのように無心になって歩く。イヤホンから漏れるアニメソングに耳を傾けていた。

途中、踏み切りに帰路を遮られて、訳もなく溢れそうになる欠伸をかみ殺した。踏み切りってったって、実のところ、電車が来るまで二分くらいかかるんだから、踏み切りが開くのを待ってたって時間の無駄だ。高さ約一メートルの踏み切りの高架下を潜り、向こう側へと渡った。

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