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第3話 迫り来る殺人鬼

 ゆかりは、すでに何件もの殺人事件を起こした殺人鬼だった。私を殺す事さえ、何の躊躇もなく攻撃して来る。彼女の話を聞く余裕さえも無い。


「くっ、大学のサークルに入って友達を作ろうとしたのは、彼女の意思よ! 私は、確かにそう勧めたけど……」


「うるさい! 妹の由紀が何の行動も起こさなければ、彼女は死なずに済んだ。まずは、彼女を集団で犯した奴らは始末した。コイツらのせいで、妹は自殺したんだ……。全員を滅多刺しにしてやったよ!


 後は、あんただけだ。あんたは由紀の友人だから無残には殺さない。顔も、体も、葬式に出せるくらいにはしてあげるよ。死んで、あの子と仲良くしておくれ!」


 ゆかりは、運動能力に優れていた。おそらくスポーツでもしていたのだろう。私を殺した後は、警察に捕まる気満々だった。


「逃げるな! 私は、お前が憎い! だが、由紀の友人だから無残には殺さないだけだ。お前が死ぬのを見届けたら、私は自首するよ。サークルメンバーとあんたは殺すと決めていた。その後は、私はどうなっても良いんだよ!」


「キャああああ、止めてください! 妹の由紀さんもそんな事は望んでいないはずよ……」


「うるさい! あんたは知らないんだよ。あの子がどれだけ友達が欲しかった事か。

 でも、学校や塾では友達ができなかった。無視されたり、嫌がらせを受けていた。あんただけが、由紀の友人だったんだよ!


 私が嫉妬するほどに、あの子はツイッターにハマっていったんだ! 最初は、友人ができて私も嬉しいと思った。でも、過去のツイッターを見て行くうちに、あんたへの恨みが込み上げて来たんだよ!」


 私は逃げ場がない部屋の角へ追い詰められていた。しかし、彼女が一瞬、死体でよろめいた隙を突いて、反対側へ回り込む事に成功した。後は、ダッシュで逃げ切れれば、なんとか命は助かる。


「カギが……、かけられてる……」


 私は焦っていた。カギの取っ手をひねれば開けられるのに、ゆかりがナイフを持って襲って来るのに怯えて、上手くカギを開けることができないでいた。


「早く、開いて!」


 私は、闇雲にカギを回す。カギが開いたと思った瞬間、部屋の外から勝手にノブが回り、誰かが突入して来た。私もゆかりも一瞬硬直する。


「警察だ! 武器を捨てて、投降しろ!」


 入って来たのは、私が廃屋に入る前に出会った警察官だった。私の叫び声を聞き、必死の形相で突入して来た。冴えないと思っていたが、このタイミングで来られるとカッコ良く見える。


「チッ!」


 警察官が銃を構えているが、発砲をしないと思っていたのだろう。ゆかりは私と警察官に体当たりを喰らわせて、一気に廃屋から逃げ出そうとしていた。私は軽く吹っ飛んで壁に頭を打ち、警察官も膝蹴りを食らって跪いていた。


「待て……」


 警察官はゆかりを逮捕しようとするが、足がよろめいてまともに歩けない。結局、ゆかりは逮捕できず、どこかに潜伏しているようだ。夜で暗かった為、私も警察官も顔を確認する事が難しかった。


「くそ、逃げられた……。ここら辺で行方不明者が出ているから調査していたのだが、まさか殺人だったとは。検問を張って、彼女を捉えるしかないな……」


「その前に、病院を……」


「俺の車が表に止めてある。早く病院へ行こう! そこで、詳しく話を聞かせてもらうからな」


 刑事さんは、私が怪我している事を知って、急いで病院へ送ってくれた。血を流した事により、体が寒くなるのを感じたが、刑事さんが励ましてくれてなんとか耐える事ができた。


「刑事さん、いくつですか?」


「ああっ、俺の年齢など関係ないだろう。喋らずに、体力を温存しておいた方がいいぞ」


「いえ、重要な事です。私、惚れかけてますから……。せめて、恋愛できる歳なら良いなと……。

 それとも、もう結婚していますか? 奥さんは、可愛い? もう子共もいるとか……」


「ふう、女子大生に惚れられて悪い気はしないな……。独身だ。25歳といったところだ。もうすぐ病院だから頑張れ!」


「ふふ、全然許容範囲内ですね。私は、22歳です。無事に手術が終わったら、お付き合いお願いします。

 腹を刺されたんで、少し傷が残ってしまうかもしれないんですよ。嫁の貰い手を決めておかないと……。

 下着姿で誘惑しても萎えてしまいますからね……」


「そこまで余裕があるなら大丈夫だろう。このくらい神経が図太い方が、警察官としては嫁に欲しいかな?

 交際は、考えておくよ」


 こうして、私は病院に搬送され、一命を取り留めた。なんとか刑事さんと交際する仲になったが、ゆかりだけは捕まる事がなかった。そして、数日して退院する事になった。


「うう、ゆかりが逮捕されていないのは不安だよ……。どこかで遭遇したらどうしよう。今度こそ、殺されるかも……」


「安心しろ。俺が守ってやる! ツイッターとかいうものでも、何でも良い連絡して来い!」


「うん、彼氏だもんね! 毎日連絡するよ!」


「正直、機械には弱いんだが……。とりあえず携帯番号も渡しておくぞ!」


「ツイッター、止めた方が良いのかな? まさか、こんな危険があるなんて……」


「いや、止めても別の方法で来られるだけだろう。しばらくは、俺と周りの刑事で保護してやる。

 ツイッターをして、相手を泳がせるんだ。危険がないところで彼女を確保する。しばらくは、写真や居場所を特定されるようなツイートは禁止だ。他愛のないアニメの画像でも貼っておけ!」


「大学生って事はバレてるかも……。どこの大学かまでは特定されていないと思うけど……。何か有ったら連絡しますね!」


「俺も、可能な限り毎日会いに行く。安心して生活してろ!車の送り迎え付きだ!」


「ふふ、しっかり保護してくださいね、ナイト様! ナイトって顔でも無いけど……。やっぱり冴えない……」


「守ってやらんぞ!」


「嘘、嘘、カッコイイよ! 命を懸けて、私を魔の手から守ってね!」


「なるべく1人で行動するなよ。夜の外出は禁止だぞ。薄着で洗濯物を取り込むとかも、下着泥棒に狙われるから注意しろ!」


「はいはい。まあ、こんな傷物の女の子なんて、物好きしか狙わないよね……」


「何言ってんだ、凄く可愛いよ……」


 刑事さんは、照れながらそう言った。私のことを気遣っているとしても、素直に嬉しかった。

 私は、傷をさすりながら笑顔でいられる。


「ツイッターは苦手、というよりやった事ないけど、君が楽しんで続けられるというなら頑張ってやってみるよ。それに、奴が姿を現した時の原因も判明しやすいしな」


「ふふ、警部さんに守ってもらえると思うと安心できるな……」


「いや、まだ巡査部長だから。そこまで期待しないでくれ! 昇進試験とかも難しいんだよ!」


「そういえば、キャリアの方は、捜査よりも勉強しているらしいですもんね。実際に、多くの事件を解決しているのは、定年間際の叔父さんが多いらしいですし……。無茶をして殉職するのは、若い人が多いみたいですけど……」


「ふん、君が無茶をして、俺を殉職させないようにしてくれよ。もしもの時は、俺は君の盾にならないといけないんだからな!」


「はーい、重々承知してまーす!」


 刑事さんのお陰で、私は怪我をしたにも関わらず、明るい笑顔を見せていた。確かに、ツイッターの中にはどんな人が利用しているかも分からない。でも、ステキな出会いも舞い込んでくるかもしれないのだ。


 刑事さんとツイッターしているうちに、ツイッターによる恐怖も収まっていた。

 一時期は、ゆかりがいつか現れるのでは無いかと怯えていたが、ツイートしてくる事はなかった。


 ブロックしたわけではなく、とりあえず放置というのが相応しい対応らしい。突然ブロックして仕舞えば、逆上して私の大学を襲いに来るかもしれないのだ。ゆかりを刺激する事なく、警察が彼女の居場所を特定するまで待つのが一番なのだ。

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