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第2話 ツイッターは良い出会いも待っている?

「へー、こんなアプリもあるんだ。警察が定期的に巡回しているルートを示しているよ。まあ、絶対ではないのだろうけど……」


 私はアプリを開いて、彼女の指示を実行していた。全く警察官に会う事なく、現場に着く事が可能だった。

 一応、別のルートを回ってみると、イケメン風の勘違いした感じの残念な警察官がいた。


 私は、彼を尻目に、警察官達から離れる。彼女のアプリはかなり信憑性の高い精度を誇っているようだ。

 おそらく彼女自身がここら辺に住んでいて、調査したのだろう。深夜だったが、それなりの数の警官がパトロールをしていた。何か、事件でもあったのだろうか?


「サークル仲間で調査したのかな? 心霊スポットに行くのは、警察が邪魔になるだろうし……。

 大概の警察が、危険な所へ行かさないようにしているらしいし……」


 私は、アプリの情報を頼りに目的の場所まで辿り着いた。そこは、確かに誰も住んでいない廃屋だった。

 しかし、屋根の壊れた部分を除けば、今でも使えそうなほど綺麗だ。多少改築すれば、すぐにでも動物病院が開業できるだろう。私は、建物を見て気に入った。ここに住んでもいいかもしれないと思い始めていた。


「お待たせ致しました!」


 私が待っていると、茶髪のロングヘアーの女の子が姿を現した。可愛い子で、明るい感じだったが、走って来たのか息を弾ませている。私と同い年くらいの女の子だった。


「初めまして、『猫ちゃん』こと朝日河美鈴あさひかわみすずと申します。今日は、よろしくお願いします!」


「私は、『斎藤由紀』です。本名は、ゆかりと申します。よろしくお願いしますね!」


「苗字は、そのままなんですね。ネットで人と会うのは初めてなので緊張しましたが、優しい感じの人で良かったです。ゆかりちゃんと呼んでいいかな?」


「良いですよ! 私も、美鈴ちゃんと呼びますね! とても可愛い人で、みんな喜びますよ!」


「そういえば、サークルのメンバーはどこにいるんですか? さすがに、女の子2人だけは怖いですよ。

 人数は、多い方が安心します!」


「うふふ、そうね。人数は、多ければ多いほど楽しいわよね! 実は、みんな、もう中に入っているんですよ。

 美鈴ちゃんが来るのを、首を長くして待っているわ! 早く中へ入りましょう? 警察に見つかったら大変だわ!」


「そうですね。せっかくの肝試しが止められちゃうかもしれないし……。できるだけ、じっくりと中を確認したいです。ところで、ここではどんな心霊現象が起きるんですか? 動物の鳴き声とか、怪しい影が見えるのかな? そのくらいなら、私は平気だけど……」


 私は、ゆかりの後を付いて歩く。私がそう言うと、彼女は途端に静かになった。そして、振り返る事なく、こう語る。どうやら彼女なりの演出でもしているらしい。私としては、変な事件でもなければ、ここを格安で買い取りたいと思っていた。それほどまでに設備が充実していたのだ。


「うん、大した事は起こってないの……。動物病院の院長が事故死して、そこから不吉な噂が流れ始めた事によって経営できなくなって、後継者もできずに破産したそうよ……。ごめんなさい。それ以上は詳しくないの。院長の姿をした犬が徘徊してるとか、なんとか……」


「そうなんですか。まずは、調査するしかないですね。後継者がいれば、問題も起こらないかも……」


「そうね。早く家の中に入りましょう! 庭先では何もないわよ」


 ゆかりは、私を急かすように手を引いて、中に入るように促す。もう少し庭を眺めていたかったが、彼女が引っ張るので後回しにする。ゆかりの手は暖かかった。多少運動経験があるのか、力強く私の手を握る。

 脚も綺麗で、筋肉が引き締まっていた。これは、同じ女の子でも惚れてしまうほどカッコイイだろう。


「この部屋で、みんなが待っていますよ!」


 ゆかりはそう言って、ある部屋への扉を指差す。そこは、手術室だった。みんなが待っていると言う割には、とても静かで異様な雰囲気が漂う。動物の匂いがするのは当たり前だが、廃屋だったためか動物の死骸の匂いが漂って来た。どうやら動物が侵入したらしい、ネズミやら鳥の亡骸が放置されていた。


「廃屋の中には、動物が住みついているところもありますよ。特に、病院などでは、ガラスや危ない器具が散乱している場所もあります。そうすると、自然と事故が起こりやすい状況になるのです。屋根裏では、コウモリなどが住み着いて、フンや死骸でいっぱいの時もあります。


 そこからダニや害虫などが増えてしまうんです。私の親戚のお姉ちゃんも、鳥が屋根裏に入り込んだ事でいろいろ悩まされたみたいです。


 引っ越しして、新しいアパートに住んだのは良かったのですが、屋根裏に鳥の死骸があったために、エアコンからダニが増殖していたそうです。屋根裏の鳥の死骸とダニを駆除して、ようやく落ち着いたようですが……」


「まあ、引っ越しすると、どんな問題があるか分かりませんからね。では、次の部屋へ行きましょうか?」


 私は、ゆかりに促されて、手術室の扉を開ける。病院の器具などは綺麗に保管されているが、他はボロボロの状態だった。後継者がいれば、病院は続いていた事だろう。


「開けますよ?」


 私は、ゆかりの方を見てそう言った。同意を得なければ、先に進んではならないような緊張感に襲われていたのだ。隣が騒がしければ、そこまで緊張もしないのだけれど……。


(実は、みんなは静かにして、私を驚かす気とか? 不自然なくらい静かだからね……)


 私は、不安を感じつつも扉を開ける。すると、むわっとした異様な空気が流れ込んで来た。まるで、空間が変わったような違和感を覚えていた。


(臭い! 何、これ……。いくら動物の死骸が多いと言っても、この臭いは異常だわ……)


 私は、臭いを嗅がないようにして、部屋から出ようとする。こんな場所に人がいれるはずがない。元の扉に向かおうとして振り返ると、冷たい目をしたゆかりが背後にいた。


 まるで、人形のような無表情な顔、喜びも悲しみも失ったような殺人鬼の顔だった。そして、私が振り向くと同時に、彼女は私のお腹めがけて一筋の光る物を突き刺して来た。


「えっ……」


 彼女の行動に気付いたと同時に、それがなんであるかを理解した。鋭利な果物ナイフであり、それが吸い込まれるように私のお腹にめり込んでいた。痛みはまだ無いが、底知れぬ恐怖に陥っていた。


「どうして……」


 私は訳が分からなかったが、今までの状況からその言葉をつぶやいていた。確かに、彼女に殺される理由など思い付かない。ただの猟奇殺人とも思えず、腹を押さえながら彼女の顔を見ていた。


「うふふふふ、あなたが悪いのよ……。『斎藤由紀』を、大学のサークルに参加させようとするから……。

 だから、彼女は死んだのよ!彼女を直接自殺に追い込んだゴミ共は排除した。後は、その原因を作った元凶でもあり、由紀の最愛の友達でもあるあなたを葬れば、彼女の無念は晴らされるわ!」


 ゆかりは、私の腹に刺さったナイフを抜き、今度は首に狙いを定めて来た。このままでは、殺されてしまう。私は、血が出ている腹を必死で押さえて、出血を止めようとしていた。


 しかし、周囲の地面にあった物につまずいて転ぶ。すると、持っていた懐中電灯が天井を向いて、全体の部屋の様子を浮かび上がらせていた。部屋の周囲には、大量の人間の死体が散乱してあり、顔や体が無残に切り裂かれていた。所々腐敗しており、ウジがわき始めている。


「キャああああああああああ! これ、人間の、死体!?」


 私は、本物の人間の死体を目の当たりにし、半狂乱になって叫んでいた。ゆかりはその声を上げさせないように、喉元を狙ってナイフを突き立てる。私はその一撃を避けて、死体を掻き分けながら必死で逃げていた。


 もう、臭いの事など何も感じない。ただ生きたい思いと、逃げたい気持ちでいっぱいだった。

 しかし、部屋は行き止まりになっており、ゆかりを押しのけれなければ逃げられない。

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