第1話 ツイッターしていたら怪しい返信が来たようだ
私の名前は、朝日河美鈴。最近ツイッターを始めた獣医師を目指す大学生だ。
愛知県のとある市に住んでおり、内気な性格が災いして、友達は少なめだ。
「ふう、動物の画像とか見ると、ついつい時間を忘れて見入っちゃうな。最近、ツイッター仲間も増えてきたんだよね。なんとか、ブロックされないように仲良くしないと……。仲の良い友達とかできたら最高なんだけど……。ん? このツイート、なんかヤバイぞ! 死にたいとか連発している!」
私のツイッター名は、『猫ちゃん』だ。日によって後ろの方を変えているが、獣医の宣伝になるかと思い始めた。小説なんかも読んでみたいし、書いてみたい。そんな私が見付けた一通のツイートが恐怖の始まりになるとは、この時の私は気付いてもいませんでした。私は何気なく、励ましのツイートを送ったのです。
「あの、何かありましたか? 私でよければ相談に乗りますけど……」
「実は、大した事は無いんです。ただ自分の人生が嫌になってしまって……。ただお金を稼いで、結婚して、子孫を残すだけなのに、生き続ける意味はあるのかと……。退屈な日々を過ごすだけなら、いっそ危険な事に挑戦しようか悩んでいたんです。そこまで過激ではなくても良いから、危険に身を置いてみたい」
「はあ、順調に行っていても、夢とかが無いと虚しく感じますよね。私は、中学まではそういう事考えていたんですが、高校の時に自分の飼い猫を獣医の方に助けてもらって自分も頑張ろうと思ったんです。
獣医になれるかどうかは分かりませんが、毎日が充実しているように感じます。そりゃあ、苦しい事もありますけど、乗り越える力にもなっていると思うんです。えーっと、『斎藤由紀』さんも目標を持つと良いかもしれません」
「ありがとう。特に、夢とか目標はありませんが、あなたと友達になりたいですね。実は、友達と言える人間が少ないんですよ。高校でも、大学でも、友人はおろか、彼女さえできませんでしたから……。どこが悪いのか分かりませんが、改善していきたいと思います。悪いと思った点があったら、バンバン教えてください!」
「はあ……。歳も近いみたいですし、友人ならなっても良いですよ!
ちょっと上から目線ですいません(⌒▽⌒)/」
「いえいえ、一歳ほど年上みたいですし、獣医を目指しているなんて凄いです。私は、大学こそ通っていますが、目標もなく、バイトと大学の繰り返しです。サークルに入る事もなかったので、お友達ができて嬉しいです( ´ ▽ ` )」
「これから学校生活とかツイートに送って、お互いに仲良くなりましょう! まずは、何かのサークルに参加して見るのはどうですか? 私は、一般の大学とか知りませんけど、そこから交友関係が生まれると思いますよ!
少しでも興味がある事があったら、嬉しいのですが……」
「あ、じゃあ、オカルト研究部に参加してみようかな? あそこ、実は、可愛い女の子が多いみたいなんです。
合宿とかがあったら、あなたも誘えるかもしれませんね!」
「楽しみにしています(⌒▽⌒)/」
お互いに年齢が近いという事もあり、ツイートし始めてからだんだん仲良くなっていった。
大学であった出来事やムカつく教授などの話、サークルでの活動や、書いている小説の内容を話し合った。
しばらくしていると、『斎藤由紀』さんもサークルに入ったらしい。どうやら彼氏までできてラブラブ交際中になっているそうだ。写真こそ送ってくれなかったが、容姿の近い芸能人を教えてくれた。
「へー、彼氏か……。私はまだ全然そういうのは興味ないので……。獣医免許も取得しないといけないし……」
「『猫ちゃん』さんは、凄いね! そういえば、サークルで元獣医の人のお宅を訪問するよ。なんか、愛知県内の空き家で、元々は動物病院兼自宅の病院があったらしい。そこをオカルトサークルのメンバーで探索するんだ。噂では、使える器具も揃っているけど、獣医さんが見つからなくて廃屋になっているらしい。
もしかしたら、使える施設かもしれない。まだ廃業して2年ほどらしいです。
『猫ちゃん』さんも来て見たらどうですか?」
「へー、ちょっと見てみたいな。住所とか分かりますか?」
ツイッターのメール機能を使い、『斎藤由紀』さんは場所を教えてくれた。そして、彼らがサークル活動する日付けなども。どうやらツイッターでは、居場所や日付けを他の人に知られるのは危険らしい。
「そっか、インターネットでは、多くの人に見られる危険があるから、居場所が特定されると危険なんだ。
犯罪者に狙われる危険もあるようだね!」
「はい。なので、親しい人とだけ連絡を取り合うのが安全なのです。ツイッター自体には、出会い系の機能はありませんけどね。写真や文章も注意しないと危険ですよ!」
「分かったわ。ありがとう! 注意するね。でも、その元動物病院は、私の家の近くなので行ってみたいです!
1人では怖いので、あなた達のサークルメンバーに入れてもらえませんか? もしかしたら獣医として開業できるかも知れませんから」
「うん、じゃあ、決まったら連絡しますね」
私は、彼女からの返信メールを待っていたのですが、しばらくツイートさえもありませんでした。
返信が来たのは、1ヶ月経った夏休みの時です。
「返信が遅れてすいません。今週の水曜日に、サークルメンバーで集まる事になりました。どうか、7時に来てください。みんな、あなたが来るのを心待ちにしております。メンバーは10人ほどで、あなたを入れると12人になります。私の姉が一緒に参加するので、12人になりました( ´ ▽ ` )/」
「そっか、覚えていてくれて嬉しいです。実は、1人で外まで行ったんですけど、怖くなって逃げました。
警察が見張りを強化しているようなので、何かあったのかもしれません」
「物騒な世の中ですからね。私の大学でも何人かで悪い事をしていたみたい。運動部が何かの事件を起こしたらしくて……。その関係じゃないですかね? 私の大学も近くなので、良く警察がパトロールしているのを見かけますよ。一度なんて、職質されてドキドキしました♡」
「へー、でも、そういう事なら心霊スポットに行くのは安心ですね。何かあれば、すぐに駆け付けてくれますからね。カッコイイお巡りさんとかいました?」
「いえ、怖い顔した叔父さんしかいませんでしたよ。婦人警官やイケメン警官は見かけないかな……。
警察にバレると、心霊スポットに入り難くなるので、なるべく会わないようにして来てください。心霊スポットに行く事を知られると、たぶん中断されてしまいますよ!
この場所を避ければ、なるべく警察官に会わなくて済みます( ´ ▽ ` )/」
そうツイートして、添付ファイルを送信して来た。ファイルを開けると、アプリがダウンロードされた。
アプリを起動すると、警察官が立ち寄りそうな場所が写されている。




