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圭太

 十一月三日午後四時半頃、オレ、予根元圭太はバイト先へ向かっていた。

 いつも通り道玄坂を下り、左へ曲がった。

 オレが働く塾までは、道玄坂の上のアパートから歩いて二十分程度。

 坂が多いから、自転車は使わない。

 いつもなら、その時間で充分間に合う筈だったんだ。

 でも今日、彼は塾を遅刻せざるを得なかった。


 左に曲がってから三百メートルくらい歩いた所に、タケタビルという七階建ての雑居ビルがある。

 丁度、オレがその真下を通った時だった。

 ビルの上の方から叫び声が聞こえる。

 「ウゲァアあああ!!!!!!!!!!!!」


 通りには幾人か居た。皆その声に上を振り向きはするも、首を傾げながら通り過ぎて逝く。

 しかしオレはその声に只ならざるものを感じたのか、入口からビルに入って行った。

 階段を昇り昇り、四階と三階の間に差し掛かった時、グラサンを掛けて男が上からかなり焦った様子で降りて来て、オレとぶつかった。

 「え?おい、何してんだよ!!」

 オレはそう男に話しかけたが、彼は無視して階段を更に降りて行った。

 まるで、逃げるかの様に。

 オレはかまわず更に階段を昇り、六階のドアを空けた。

 そこはアルベルト・ファイナンスと言う、地元では悪名高い闇金業者だった。

 中には事務用机が六つ、そして、奥に、上司のものと思われる机が一つ置いてあった。

 当初、無人かに思われたが…?

 オレが上司の机の奥にまわりこんで見て見ると、男が影に倒れていたんだ…。

 もちろん、オレはそんなに医学に詳しくないが、普通目に見て、そいつは『死んでいた』

 胸にナイフがささっている。

 心臓一突き…ってやつかな…。オレはそう思って警察に電話した。

 一応、救急車にもな。まあ案の定無駄だったけどな。




 「…なるほど、してから、私たち警察がここに駆け付けたと言う次第に相成った訳だ。」

 目の前では舘山警部補が煙草を吹かすように禁煙パイプを吸いながら、オレに話しかけている。

 「ええ、まあ……やはり、犯人は…。」

 「そうだな、とりあえず、君とぶつかった男が重要参考人となるだろう。近い内に指名手配ということになるだろうな。」




 ほど無くして、一通りの調書を取り終え、圭太は帰って行った。

 舘山はまるでその管の先に煙でも漂っているかの様に、ぼんやりと眺めていた。



 続く

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