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遠山の禁さん!  作者: 活動寫眞
第一章・遠山禁四郎
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南町奉行篇⑦ 「決行当夜」「夜明け、そして...」

「この物語は勝手気ままな御陽気フィクションですッ!」

【第九話】

「決行当夜」


ぬかるんだ地面を踏みしめ濡れた着物をまといて走る。

その場の状況に瞬時に対応しながら相手の刀を薙ぎ払い、時には受け

相手に隙を作り斬る。


どんな剣豪とて足場が悪くては相手に致命傷を与えるのは用意ではない。

それに刀は強く引いてこそ斬れる代物、それでも2、3人斬ってしまえば

人の肉や骨で刃がこぼれる。


その都度、斬った相手の刀を奪っては次の相手へと対峙する。

悪条件がここまで揃うと疲労も今まで感じた事の無いものである。

気付けば周りには屍の山、ざっと20人は居ただろうか。


屋敷に入り庭での斬り合いを終え、鳥井の隠れる屋敷内へ

...と思った刹那、何処からともなく現れた侍に斬りかかられる。

反射的に刀で防いだが、相手の太刀筋鋭く、右腕が斬られた。

致命傷にはなっておらず、まだ右腕は動くことが分かった。


雨の中とはいえ、命のやり取りをした後は体の感覚が異常に鋭くなる。

それでも気配を消し危うく斬られかけた。


この相手、まともにやっていては勝てる自信が無い。

むしろ逃げる自信も無かったりする。どうするか自問自答。

少しでも不利な条件を打破すべく移動するしかない、

しかし、目を剃らすこともままならない。

先ほどまでの立ち回りを思い出し、感で跳ぶしかない。


確か右後ろに庭石があったはず、それに乗れば今よりは足場はマシだ。

三つ数えて跳ぶぞ...(ひい)ふうみい...!?


その後の記憶は無い。

恐らく跳んだと同時、いや、それより早く相手は斬りかかって来たのだろう。

人が反応出来る以上の速さで...

辛うじて動く左腕で体を触る、その手を見える位置に持ってくる...


雨が無数の針のように地に降り注ぐ...

すべて自分に向かってくるように見える...

体は動かない、感覚もない、あれほど冷たくて重い雨が...

今では音だけが虚しく聞こえてくる...



つづく



------------------------------------------------------------------------


【第十話】

「夜明け、そして...」


この屋敷、早々に落ちると見込んだのが失敗かも知れない。

仲間の話では一度は制圧しかかったものの、たった三人で

屋敷外を囲んだ討伐隊は全滅させ、中にいた仲間も斬られたとか。

こちらの人数は屋敷に入った禁四郎、阿歩郎、活動丸、自分 (北祭)を入れ四人。

雨に乗じて一夜で鳥井をと思ったが、ここは一旦屋敷から脱出することが

先決かも知れない。


...!?


庭に倒れてるのは禁四郎じゃないかっ!やばい、近くに例の三人らしく

人物がいる。このままでは禁四郎の身が危ない!放置しても出血が酷い、

近くの池に流れ込み真っ赤に染まってしまっている。

斬られて時間が経っている。それにあの三人が止めを刺す可能性もある。

どうにかしなくては...。



(ちょく)さん、(へい)さん、残りは片付けましたか?」


「はい、そこの庭に倒れているのが遠山禁四郎です。」


「おぉ、我が憎っくき禁四郎を斬ったか!でかしたぞ!直さん!

 こやつのために我々一族は路頭に迷った、

 鳥井様がいなければ今頃どうなっていたか!!」


「私はこれです。」


「なんですか?平さん。この桃色の糸は?」


「これは頭髪でございます。先ほど奥の部屋にいた忍び風の侍を斬りました。」


「そうですか、さっさと片付けて帰りましょう。

 雨は冷えて関節が痛むからなぁ。」


「とーうっ!」


「何奴!?」


「悪党に名乗る趣味はねーし、暇もねー!」


「ぐわっ!?なんだこれは!?」


「紙だ!濡れて張り付きやがった」


「ぢょぐざん、べいざん...」


「ああ!?御老公が窒息してしまうぞ!」


「やばい!魂が抜け出ようとしている!戻せ!戻せ!」


「禁四郎、あんたが死んだら誰が報酬くれるんだ!」



------------------------------------



「...で、おめーが助けたわか?」


「どうにかなるかい?源外?」


「そうだなぁ、出血が酷いし、傷もかなり深い、これでは今夜が山だろうなぁ。」


「そうか。」


「この人の事だ、まだ死にはしない、させねーよ、

 ただ当分はこの事は水野様にも言わない方が良いだろう」


「何でだ?」


「水野様は妖怪だ。本当に仲間だと思ってると寝首かかれるぞ」


「...分かった。」


「そうそう、南町奉行に遠山禁四郎が消えたとあっては大江戸中が大騒ぎだ!

 そこでこれ持って行ってくれねぇーか?」


「なんだこの人形は?」


「ただの人形じゃない。影武者だ。きっと役に立つ!」


「これ、日本人形にしか見えないが?」


「何を言ってる!ちゃんと仕事も出来るんだぞ!」


「...カタカタカタカタカタカタ、ギィ------、オ茶ヲドウゾ!」


「って、お茶運ぶからくりじゃねーか!しかも禁四郎がお茶くみかよ!」


「馬鹿野郎ッ!職人が魂込めて作ったんだ!これは人だ!」



-御白州の場にて-



「...カタカタカタカタカタカタカタカタ、ギィィィ---イ、オ菓子ヲドウゾ!」


「よって、そなたを市中引き回しとする」


「っておいッ!なんでそうなるんだッ!

 しかもなんで人形なんかに人生決められなきゃならねーんだ!」


「こらッ!遠山禁四郎様の前にて無礼であるぞ!」


「こんなのあるかよ!俺がそんな人形壊してやる!」


「...カタカタカタカタカタカタタカタカタ、ギィィ------イイイ、ドウゾ!」


「な、なんだ!?」


「放出腕 (ロケットパーンチッ!)」


「ぎゃあああああああああああ!?」


「...もう嫌だ、人形が、人形がこっちを見てる!ギィィィって言ってる!

 頼むから島流しにしてくれ---!」


活動

「なんでバレないんだ?」


北祭

「さぁ?って生きてたのか?!」



つづく


------------------------------------------------------------------------



【あとがき】

過去の事件で地位 (学級委員)も名誉 (町内会長)すべて失った家族。

そんな彼らを御白州で裁きを下したのが遠山禁四郎。

自称・時の鍋将軍の御老公、曲がった事が嫌いだが進むべき道を

謝っている直さん (長男)、実は禁四郎と趣味の合う平さん (次男)です。


北祭は戦闘能力は殆どありません。

芸術に関しては強く、普段は浮世絵を描き人気作家。

禁四郎を助ける際に使用したのは、水を含んでもなかなか破れない

最高級和紙を使用。


脇賀源外はからくり医師 (彼は生身です)

御白州に送った「からくり佐七」は、高性能を誇り

ネジを巻けば動く地球に優しいエコ人形です。

身の危険を感じると両腕を前に突き出し、腕を飛ばします。

大人2、3人はふっ飛ぶ威力あり。

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