第三話 「合縁奇縁 (あいえんきえん)」
「この物語は、登場人物や団体・事柄などはフィクションでござる!」
葛飾北祭
「浮世絵は外国人に売れそうな気がする…」
店主「旦那、そろそろ店を閉めたいんですがねぇ?」
中年「ん?う~ん…」
店主「早くしないとうちのかかあが五月蝿いんですよ!」
中年「はぁ?うちだって妻と義母が居て五月蝿いんだよ!!」
店主「なら早く帰ってくださいよぉ!」
中年「だから帰れねぇーんだよぉ!!」
店主「そう言われまして……どうしてもって言うんなら表でお願いしますよ!」
中年「こんな季節に外出たらおめ~!虫に喰われちまうわ!」
店主「こりゃたちの悪い旦那だなぁ…」
赤侍「主人はいるかい?」
店主「こ、これは赤侍 (あかさむらい)さま!?」
赤侍
「わざわざ昼間の営業の邪魔にならねぇーように夜にきてやったぞ?
ん?まだ酔っ払いがいるのかぁ…まぁ、いいわ。で返答は?」
店主
「あの~申し訳ございませんが…みかじめ料はうちの店では払えません!」
赤侍
「ほぅ?じゃーあの方に逆らうって言うんだな?いや、俺は良いんだよ?
でもねぇ、こちらも雇われ。仕事はこなさないと、おまんま喰えねぇーのよ?
払えないなら払って貰うようにするしかないねぇ~?」
店主
「ご勘弁ください!店の切り盛りも一杯一杯なんですよ!
それに働けなくなるとまだ小さい子供たちが…」
赤侍
「うるせぇ~!!!野郎ども!!店叩き潰せ!!!」
中年
「ごちゃごちゃ何を抜かしているっ!五月蝿くてイイ夢見てるのに邪魔するな!」
赤侍
「酔っ払いのおっさんが何を言っている?我々を見て何とも思わないのか?」
中年
「ああ、三下 (さんした)が何を言っている」
赤侍
「ふん、良い度胸だ!だが店ごと一緒に潰してやるよ!」
【遠山の禁さん-必殺幕末編-】
「第三話
合縁奇縁 (あいえんきえん)」
阿歩郎
「ふ~ん、小間使い荒いわねぇ。ちょいと休憩!って何かあったの?」
町人A
「ああ、何でも昨晩この居酒屋のおやっさんに金払えって入った輩が
一瞬でバッサバッサと倒されたんだってよぉ!」
町人B
「たまたま居合わせた中年のおっさんがやったとかやらないとか…
最近ここいらでみかじめ料とか求めるのがいるとは聞いてたが
これで少しは静かになるのかねぇ。」
阿歩郎
「ふ~ん。世の中、悪い奴だけではないってことねぇ。でも誰かしら?
イイ男?妄想だけで3杯は飯いけそう♪♪」
【-北町奉行所内-】
遠山
「思ったほど情報が集まらないものだな」
北祭
「何せいろいろ事件があったお陰で人手が無くて…」
遠山
「確かに。老中鳥井時代にまともな人間は政治の中枢から外されたり、
飛ばされたりで酷かったと聞く。優秀な人材は今や音信不通。
出身の藩に身を寄せたものも数多い。」
北祭
「今更、戻れって言うのも酷な話ですからねぇ。」
遠山
「うむ、いまだ権力を失った鳥井とはいえ、奴の派閥の連中はいまだ数はいる。
下手な動きをすると首を狙われかねないかも知れない…」
北祭
「とはいえ、日常業務に追われていては…」
遠山
「よし!逃げよう!」
秘書
「無理です。」
【-大江戸下町・平賀源外亭-】
脇賀源外
「おっ!久しぶりだな!」
お通
「あの、お待たせしてすいませんでした!どうぞ。」
源外
「ん?どうしたこの金?」
お通
「私、遊女として働くことになったんです。その支度金です。」
源外
「な、なんだって!?おめー!!」
お通
「良いんです!父の病気を治すにもお金が要りますし…」
源外
「だからそれは利子も取らねぇ!出世払いで良いと言っただろ?」
お通
「はい、とても嬉しかった。感謝しています。ですからその出世払いです、ニコ」
源外
「…言ってくれりゃー仕事なんか他に紹介したのに。」
お通
「今日からお世話になるのでしばらく父を宜しくお願いします。」
源外
「ああ、任せときな!…体、大事にな。」
お通「…はい。」
【-秩父山中-】
ジイ
「あいつは何処行った!!」
曲者一
「任務でござるよ!ござる!」
ジイ
「わしの知らない任務とはなんだ?」
曲者ニ
「これは我らが遣り残したこと故、ジイ様に迷惑は掛けないぞ!」
ジイ
「…これからは勝手に動くなよ?」
曲者一
「分かったでござるよ!ござる!」
ジイ
「ところで鳥井の方はどうなった?」
曲者一
「幕府転覆に人を集めているでござるよ!ござる!
最近は幕府に不信感を抱くものとの接触をしに薩摩・長州などへ」
ジイ
「外国から武器を買い付け戦争の準備か?ほっほっほ!
ガキどもがぁ!?たわけたことを…副将軍をなめるなよ!」
曲者ニ
「(兄上!こいつ結局なにがしたいでござるか?)」
曲者一
「(遠山に復讐、鳥井の幕府転覆を阻止。
…ようは自分が将軍に返り咲きたいんだろ?)」
曲者ニ
「(なるほど。でもこの人の器では無理そうでござるが?)」
曲者一
「(ほんとのたわけは自分とは気づいてない。
我々はジイ様と鳥井様と掛け持ちをするのも、
将来のこの国を治める者を探すため。今はまだ流れに身を任せよう…)」
-つづく-