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遠山の禁さん!  作者: 活動寫眞
特別章・エピソード阿歩郎
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AFROU-阿歩郎-⑦ 「伝説の浪人・後編」

「この物語は、登場人物や団体・歴史などはフィクションでござる!」

【あらすじ】

清ノ国から命からがら九州・長崎に流れ着いたワタシ。

そこで出会った乳母車を押す少年。

彼は貧乏の家族を救うべく奉公に出るもトラブルに遭い

勝手に逃げてきた。そして【伝説の浪人】を探すべく旅をしていた。


------------------------------------------------------------------------


「一流のホストってなによ?」


「最近、大江戸や京都などで夜の街で働くお水の男の人です。」


「それは知ってるわよ!どーやったら今まで生活を捨ててまで

 そっちに道に走ってるのかってことよ!」


「えっ?だって給料は良いし、お酒も飲める!女性を相手するだけで儲けれる!

 それに女性客からプレゼントをいっぱい貰えて、それと質に入れれば......」


「ダメな奴の幻想じゃないっ!確実にアンタ、ダメ人間まっしぐらよっ!」


「そんなに甘い世界じゃないのは百も承知です。」


「いや、根本的に甘いのよ。なら元の呉服問屋にお戻りなさいっ!

 悪いことは言わないかさぁ」


「だから【伝説の浪人】に会う必要があるんですっ!」


「また人の話を聞かないのかこの坊主は!?

 大体、その浪人は一体なにものなのよ?」


「彼は元々、城主お抱えの武芸の達人でした。

 ですがある日のこと、城主の目の前で試合をするよう言われました。

 その対戦相手もなかなかの手強れ、一進一退の攻防戦が続いたそうです。」


「御膳試合。殿様のきまぐれってやつね」


「そして彼は途中で試合放棄をしました。」


「あら?それはどうして?」


「彼が言うには『この角度で戦えば、その矛先に殿がいる。』とのことでした。」


「なるほど、殿に刃向かった事になるからねぇ。でも試合なんだから気にしないでしょ?」


「ですが、殿は大そう気に入られ、彼は出世したそうです。」


「そんな彼が何故、浪人に?」


「その対戦相手に逆恨みされ、自宅を襲撃されたそうです。

 その時、運悪く奥さんが犠牲になられたそうです。」


「それで仇討ちのために浪人になったのね?」


「はい、そして何処かに今も浪人として旅をしているのです!」


「浪人になった理由は分かったけど、ホストはどう関係しているのかしら?」


「その御前試合ですよ、城内でのNO1.ホストの座を巡っての戦いです。」


「おい!どんな城主なのよっ!」


「確か不夜城という名のお店です。」


「名前に城の名が入ってるだけじゃないの!クラブのオーナーを殿って言うなっ!

 大体、何の角度で殿さまに刃向かうことにあるのよっ!」


「お客さまに取り分けるフルーツを切り分ける際だったようです。」


「なら良いじゃないっ!お客が一番でしょうが!なに殿さまに媚売ってるのよ!」


「だからNO.1になったんですよ」


「さらっと言ったよ!どんだけ腹黒ホストなのよ!そら逆恨みされるわ!」


「ですが、数々のお店を渡り歩き、

 名を知らぬものは居ないと言われた【伝説のホスト】なんです!」


「どー考えても伝説だけが一人歩きしてるわよ…

 で、名は知らぬものはいないって、そいつの名は??」


「御水一等さんです。」


「おみずいっとう?変な名前ね。

 そいつを探して弟子入りしたいわけね?」


「そうです。」


「ところで乳母車は何の意味があるの?」


「これは弟子入りする際の献上品です。彼には幼い子供がいまして、

 その子のためにと持って来たんです。人のうちから...」


「そう。手土産ってやつね、ってオイッ!またさらっと言ったよ!

 アンタ人のうちからなに盗んで着てるのよっ!すぐ返しなさい!」


「でも、これ大坂から持って来たんですよ、この苦労はどうすれば?」


「そんな苦労知るかぁー!泥棒が何言ってるのよ!

 だんだんとアンタの話聞いてるとタチの悪さが露呈するわね!」


「生きるための知恵ですよ」


「...今のうちにどーにしかしないとアンタ、既に歪んでるわ!?」


「奉行所にでも突き出しますか?10歳の僕とおじさんとでは

 どっちの言うことを世間は信じますかね?」


「うっ!開き直りの上に脅迫!なんて言うガキに出会ってしまったんだろう...

 でもアンタ、何か勘違いしてるわよ!」


「なにがです?」


「ふっ、こんな言葉があるのを知ってるかしら...

 男は度胸!女は愛嬌!オカマは最強!なのよぉ!!!」


「ぬわっ!?なんだこの迫力は!?僕はなんてバケモノに出会ってしまったんだ!?」


「誰がバケモノじゃ!.........ん?ところで乳母車の中身は確認したのよね?」


「えっ?してませんけど?」


「気のせいでなければ、今、限りなく、見間違うことなく、中の布が動いたわよ...」


「...つまり、空に見えた乳母車、実は中にアレ的なのが入っていると?」


「いや、まさかね。乳母車の深さからして、中の布の膨らみから入ってるはずは・・・」


「うわぁぁぁぁぁあっ」


「あくびした---!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ---!!」


「こら逃げるなガキっ!」


「五月蝿いぞ!人が寝ているのに外で......」


「よいしょっと...」



乳母車の中には3歳くらいの男の子が一人が起き上がってきた。

そしてその手には既にタバコが挟まれていた。

ワタシは驚いた。


大坂から長崎までの間に何故気づかない?それに起きなかったのか?

いろんなことを一瞬にして考え付くも、そんなことよりも

そんな疑問も消すくらいに驚いたことがもう一つあった。



「ありがとう」



そう、ワタシはタバコに火をつけていたのだった。

無意識にすべての理不尽な出来事に対しての疑問を持つよりも

差し出したタバコに自然と懐から火つけ石を出し、一瞬で灯したのだ。



「今まで出会った中で、あんたが初めてだよ」


「な、なにがかしら?」


「お客がタバコを出せば火をつけ、灰皿を置く。 それ、お水の世界では常識だ。

 あんた、俺が何も言わずともそれをやってのけた。


 ...合格だよ。」



彼の名前は大吾郎。御水一等の息子だ。

世間では、父の方が伝説のホストとされているが、実はすべて彼の筋書きの上で

動いていたらしい。齢 (よわい)2歳半でその才覚に目覚めるも若すぎた。

だから変りに父がその役を引き受けていたらしい。


だが、その父も数年前に「もう、この年で乳母車押すのイヤ!」宣言をし

チーム伝説のホストを脱退したらしい。(お前ら親子だけだろっ!)


現在35歳、見た目に成長しなかったお陰でホストになることが出来なかった。

なので今は乳母車を目印に、伝説を聞きつけて寄ってくる若者を

一流のホストに育てているとか、そうすることで自分の夢を託し

なおかつ、乳母車を押す係りも得られて一石二鳥!と彼は言った。


ワタシは100年に一人の逸材だと言われたが

ワタシにはワタシのオカマ道があるので丁寧に断ったわ。

そして長崎から大江戸までの船賃を餞別にくれた。



「今頃、彼はどうしてるのかしらねぇ...」


「アニキ!泣ける話だぁー!」



バッカーン!!



「何度言ったら覚えるんだ!姐御だバカヤロー!」


「人にはいろいろ過去があるもんだなぁ。

 ...ところでアネキが言えない提督はいつ帰るんだ?」


「姐御と禁さんに何処までもついて行くヨー!」


「こいつ本当に軍艦で攻めて来た本人か?」


「そうだけど、何処かのネジ取れた見たいね♪」



でも、ワタシは忘れないわ。

あの時、大吾郎に出会わなければ今のワタシはいない。

大吾郎、ありがとう。


そして、あの時のガキ、いつか会おうね♪



【何処かの国にて】


「み、水・・・水を・・・」


「ほれ、水だ。」


「ああ!うんんんん・・・・・・ぷはっ!」


「落ち着いて飲め、飯もあるぞ。いるか?」


「ありがとう・・・どこの誰だか知りませんが・・・」


「なーに、人は助け合って生きるものだ。」


「何もお礼できませんが、ありがとうございます!」


「お礼かい?だったらあんたの目の前に困ってる人を見かけたら、

 今度はあんたが手を差し出してやんな。それで俺は満足だ」


「ああ、お待ち下さい!お名前だけでも...」


「教えるほどの者ではないが、減るものでもない。良いだろう。

 俺の名前は“大吾郎”人呼んで伝説のホストだ!」





-完-


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