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光る骨の剣  作者: k_i
第8章 アジェリレーエ
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熱帯の森の旅・二日目~三日目

 二日目、三日目と熱帯の森を行く旅をミコシエは続けた。


 少し樹冠が開けた場所に出ると、島の内地に連なる黒く小高い山々が見えている。船でここへ着くまでにも見えていたものだが、島で一番高い山々だろう。そこを目指していけば、奥地へと向かうことになる。


 二日目、数は減ってきているものの、幾つかの集落や人家の連なりに行き当たった。

 同じような植生が続いたが、三日目になると、道と言えるような道はなくなってきて、木々の密生の間を抜けなければいけないことが何度かあった。が、まだ、ふと木々の向こうに家々が見えることがあり、同じように小さな畑を有する民家だったり、家先に物品を並べていたりもする。

 人々は段々、言葉少なになっていく。かと思えばある人は、これまで以上にニッコリ大きな笑いを浮かべてくれる。話してくれる人もいたが、言葉はもうほとんど通じないものになっていた。


 移動中、何度か草葉を揺らして獣の気配がしたり、大きな獣の足跡も見た。姿を見ることは未だなく、一度は茂みに何か潜んでいるらしいのをエルゾッコが一足先に駆けて追い払ったことがあった。


 二日目は集落の宿で泊まったが、三日目は夕刻になってももう人家に行き当たらず、野宿にするよりなかった。

 人の体の何倍もある大きな樹が見られるようになっており、このような熱帯の森では樹の上が安全なのかどうかわからないが、野宿先を見つけるべく探ってみることにした。エルゾッコを上手く引き上げられるかどうかわからないが、枝が樹の下の方にまで付いている樹を選んで、上ってみる。すると危ういことに、猿に似た生き物の巣に足を踏み入れてしまったらしく、威嚇してきたが、幾らか知恵のあるものなのか、両手を挙げ戦意のないことを示すと襲ってはこずミコシエはさっと樹を下りその場を去った。

 次に見た樹の枝の上では、蛇のような影が蠢いていた。こぶがあり、虫の巣なのかと思わせる樹もある。

 致し方なく、暫く歩き、大きな樹の根元がへこんで、頭上と両側を覆っているところを見つけそこへ身を隠した。人二人三人くらいは横になれるスペースがある。地面に転がる石を払いのければあとは柔らかい黒い土で、根っこが壁と屋根の役割を果たしてくれる小さな部屋だ。無論、扉などはない開きっぱなしの部屋だが、エルゾッコがその入口に番をするように座り込んだ。


「私から少し眠らせてもらうか。後で、見張りを代わろう」

 エルゾッコはくん、と返す。

「しかしまあその前に、飯だ」

 と言ってミコシエは干し肉をちぎってエルゾッコの方へ放って、自身もそれを口にする。

 やがてミコシエは眠ったが、エルゾッコが吠え立てて目を覚ます、ということはなかった。深夜に目覚め、エルゾッコに眠るよう命じて、樹の根元の内側へ招いた。ミコシエは代わって入口に腰かけ、目を閉じ、夜の熱帯の森の音にただ耳を澄ました。虫の声、鳥の声、得体の知れない何かの声、蠢く音、引きずるような音…………何かがこちらへ近付いてくるようなことは、なかった。

 陽の光が差して森がかすかに色を取り戻してくると、エルゾッコが入口へ来て、ミコシエの前に座った。ミコシエに、中の方でもう一休みするように、とでも言うように頭をくいくいと振った。ミコシエはエルゾッコの言うのに従って、もう一眠りした。


 起きて、すっかり森が濃い緑と花々の色に戻っているのを見ると、ミコシエは立ち上がり、エルゾッコに干し肉を与え、自身もその欠けらを齧りながら、歩き出した。

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