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光る骨の剣  作者: k_i
第7章 新しい勇者の戦い
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ワント四州・後半戦

 ホリルら人間側の軍は、ワント四州の内二州で勝利を収め、高い士気のまま残る二州にも攻め入った。

 先日の戦いで負傷したシシメシは驚異の回復力を見せ、数日で戦いに復帰。

 ホリル、クー、ミコシエ、ヨッドらも健在。各々の位置で大いに活躍した。

 ただ、ミコシエはあまり軍議で積極的に発言することがなくなり、元々策の穴のありそうな部分を補うといった発言が多かったのだがそれも最近は特にないとだけしか言わず、参謀官ジェッチェ一人が立てる策は当たったり外れたりが四対六といったところで、それでも人間軍はよく戦い、徐々に敵を圧していった。


「参謀官殿の策は今日も外れだな」

「あちらにもう少し回していれば、もっと楽に勝てたのだが」

 人と魔物が激しく戦う前線で、部隊長とその副官が話している。

「正面のホリル殿の隊に負荷がかかりすぎている」

「とは言えあそこは士気が高い。ホリル殿は、敵が少ないと逆に突破しすぎてどんどん先へ行ってしまうから……」

「ふむう。ちょうどいいくらいなのかもな?」

 そう話す内に実際、ホリルは数の不利をものともせず、敵を押しのけていく。

「よし、もう敵将旗はすぐそこだ!」

「ホリル!」

 そこへミコシエ、クーが馬で駆けつけ呼ばう。クーはミコシエの後ろに相乗りするのが常になっていた。

「敵に囲まれつつある!」

「く、……致し方ありません!」

 ホリルは踵を返そうとするが、そこへ敵兵をかき分け敵将が姿を現す。

「おい勇者! ワルドーラ方面侵略軍隊長のこのバリモンロウから逃げるのか?」

「は……のこのこと出てきて、何を! 敵将自ら出てきたなら、話は別だ。

 こいつを、こいつさえ倒せば、僕らの勝利だ!」

 ホリルは再度、踵を返し直す。

「ぐっへっへ。来い!」

 ホリルは懸命に打ち合うが、敵も手練れ。まだまだ年若いホリルが簡単に討ち取れる相手ではない。

 ミコシエはその一騎打ちと後方を交互に眺める。

「だめだ。後方が限界だ。もう、退路がなくなる……

 クー、ホリルの馬に飛び移って、一叩きだ!」

「よし来た! 馬鹿ホリル!」

 ホリルが敵将と間合いを置いたところへ、クーがホリルの馬へ飛び移る。

「うわっ」

 クーが馬の尻を叩き、味方の方へと走らせる。

「ぐっへっへ、やはり、逃げるか!」

 魔物将は高らかに笑う。

「おまえの相手は、私がしてやろう」

 ミコシエが敵将へ向かって駆け、馬上から飛び移る。

「あっ、またミコシエさんが飛んだ! やれーっ」

 ホリルの後ろに乗ったクーが振り返って叫ぶ。

「う、ううおう?! 危ねえー! じゃ、邪魔だどけえっ」

 敵将とミコシエは馬上でもみ合いになっている。

「うおお、くそ! ものども! 退け、退けえええ!」

 オロオロとその様子を見守るしかない魔物兵達に、敵将は必死で撤退を命じる。

 味方の退路を断って包囲をしつつあった敵兵も一斉に、退いていく。

「結局、こっちは退かなくていいじゃないか! ほら、クー、戻せっ」

 ホリルはクーと一緒に何とか馬を止めて向きを再び変えようとする。

「よし、ミコシエさま、そいつをやっつけちゃえ!」

 敵将とミコシエを乗せた馬も、他の敵兵らと一緒に撤退を始めている。

 撤退しながら、敵将とミコシエは馬上で尚激しく取っ組み合う。

「うおお、し、しつこんだよこの人間め!」

 敵将は頭を上下左右に振って、首にしがみ付いたミコシエをブンブンと振り回す。

「ああっミコシエさまがっ、振り落とされるっ!」

 ホリル、クーを先頭に、味方の兵は追撃を開始しながらその光景を見た。

「私なら大丈夫だ!」

 ミコシエが、声の限りにこちらへ叫んでいる。

「ホリル、また後ろを顧みず前に出たことを、頭を冷やすんだ。

 これ以上出るな! 兵をまとめて、退け!

 私はこいつを討ってから帰還する。心配するな!」

「ば、馬鹿な、う、討たれるかあー!」

 敵将は何とか必死に手綱を手繰りながら片手でミコシエを振り払おうとするが、ミコシエは狭い馬上でひょいひょい器用にそれを交わす。

 同じく撤退していく周囲の敵兵も、将にまとい付くミコシエを狙おうにも将に当たってしまうかもしれずどうにもできない。将の周りをあたあたしながら、自分達の陣地へと駆けていくほかなかった。


 ホリルらは懸命に追うも距離は段々と開いていき、ミコシエはそのまま、怒涛で撤退する敵兵達と一緒に、砂塵の中へ消えていってしまった。

「え、えええー……行っちゃったよ、ミコシエさま……」

「ひとまず、戻ろう。ミコシエさんは頭を冷やせと言った。きっとあの人は、戻ってくる」

「はあ。無茶苦茶すぎる。私もう、ミコシエさまについていけない……かも?」

 これ以上、本隊との距離を空けるわけにもいくまいというところまで来て、追撃隊は一度引き返した。

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