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光る骨の剣  作者: k_i
第4章 ホリル一行
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 ミコシエ達はエルゾ峠麓の村を発ち、オーラスに向けて順調に旅を進めた。まずは、オーラスの前に広がる広大な砂漠を抜けるため、砂漠船の出ている町テイーテイルを目指すことになる。砂漠には獰猛な魔物が住む上、歩けば十日以上かかる。更に厄介なことに流砂が渦巻いているため、それを避けて綿密に計算された航路を行かねば、よほど熟練の旅人であっても大砂漠の徒歩の旅は命の危険に晒されるのだ。

 テイーテイルまでは数日かかるが、宿場も多く道も整備されている。やがて、エルゾ峠以外の各方面からの街道も合流してくる地点に来て、他の旅人の姿もちらほらと見られるようになった。

 休息に立ち寄った茶店では、勇者リュエルの死や、それに新しく選ばれた次の勇者がオーラスに向かっているらしい、といった話も耳に入ってきた。

 

 やがて無事テイーテイルに到着すると、町はかなりの人で溢れている。交通の要所であるため元々人の多い町ではあるものの、それにしても、という程の人でごった返している。砂漠船の停留所に向けて少し歩くと、すぐに、同じく砂漠を越える旅人らしい者達の会話があちこちで聞こえてくる。

「参ったな。便が一杯か」

「何だって。しばらく、欠航だと!」

 どうやら、人々はこの町で足止めを食らっているらしいことが、わかってきた。

 停留所前はいっぱいで中に入ることもできず、ミコシエらは立ち往生してしまった。

「どうしたものだろう?」

「まぁ、ひとまずは落ち着けるところを見つけたいところだが」

 レーネが宿を探しに行くと言い、ミコシエとハガルは待ちがてら、滞在する人達に話を聞いて回った。しかし、誰に聞いても答えは同じである。もう一週間程も前から砂漠船の便は欠航したままなのだ。何でも砂漠を越えようとすると、全長数十メートルもあるという巨大な魔物が船を襲うのだという。実際に三隻程、船が沈められ死者も出ている。

 おかげで町は旅人でいっぱいになり、随所で野宿をしている人さえ見られるといった始末であった。停留所へ来るまで、商店街のある町の中央通りを抜けてきたが、喫茶や食堂前の外テーブルなどにもうつ伏せて寝ている人達がいたくらいだ。

 案の定、レーネは戻るなり、

「だめね。どこも、いっぱいだって」

 中央通りの裏にある安宿街にも行ったが、全ての宿に満室だと言われたという。

 

 ミコシエらは仕方なく、安宿街の近くに群生する砂漠椰子の林の木陰に、ひとまず腰を落ち着けた。この周囲にも、多くの旅人がある者は不満げに、ある者は諦めた様子で、寝泊りしている様子が窺えた。

「そっちは何か、耳寄りな情報でも得られて?」

 レーネは疲れた様子で、二人に問う。ミコシエは目を閉じたまま。ハガルが、いや、これといって、と言いかけ、

「ああ、そう言えば」と付け足して言う。「何て言ったっけな。ホリー……ホリル、だっけ」

「ホリル?」

 何でも、前勇者リュエルの任を継ぐためオーラスに向かっているという、新しく勇者に選定された者ら一行もまた、ここテイーテイルで足止めを食らっているらしいというのだ。

「へえ。どんな子なんだろね。まだ、若いはずよ。勇者に選ばれたとき、私もあの人もまだ……」

 レーネはそう口走り、ハガルが「ん? 何の話だ」と言ったが、レーネはそれ以上の説明はしなかった。ミコシエは、黙ったままだ。

「勇者でも、砂漠の龍とやらは何ともできんものかね」

「勇者と言ってもまだ、オーラスで正式な儀式を受ける前よ。それに旅の始めじゃ、勇者と言ってもまだまだひよっ子だからね」

 レーネがそう答えると、ハガルは、

「何なら、俺達でその龍だか何だか知らんが怪物退治に行ってやろうか」と言うのだった。

 レーネも、それにミコシエも笑い、そう言ったハガルも笑ったが、オーラスに行かねばならぬ以上、実際そうすることも考えないではないな、と内心は思っているのだった。ミコシエはまた一方で、砂漠に潜むその魔物について何がしかの引っかかりを感じた。

「新しい勇者、ね。一目見てみたい気もする」

 レーネはそう呟いたが、それはすぐに、現実となる。

 その日が暮れようとする刻に、勇者に選ばれた若者自ら、ミコシエらのもとを訪ねてきたのだ。聞いていた通り、若者は名を「ホリル」と名乗った。

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