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余はいかにしてロリババァ信徒となりしか

作者: 赤巻たると

 


 新年明けの1月1日。

 我が母国でハッピーニューイヤーとして盛り上がるこの日、

 ニッポンでも似たようなイベントが行われている。


 正月《SHOGATSU》。

 神々を奉る国事的な祭りである。

 早朝にもかかわらず、猛々しい侍《SAMURAI》が殺気立った目をしながら街を練り歩く。


 これがニッポンの魂である。

 正月なくして一年は始まらないのだ。

 侍は腰に格調高い財布を提げ、決戦の地である神社《JINJA》へと向かう。


 神社は聖域であり、鳥居《TORII》というスカスカの門で隔絶されている。

 その門を無防備だと侮ってはいけない。

 不用心なのはそれを手薄と思う私達の方である。


 心悪しき者が鳥居を通る時、神の怒りによって身体が四散する。

 これこそ、日本の犯罪率が少ない原因。

 同時に鳥居が真っ赤に染まっている理由なのだ。


 また、神社の中では中央を歩いてはいけない。

 そこは神の通り道。

 我のように訓練なき余所者が歩こうものなら、

 参拝客の持つ宝刀(名刺)によって斬り捨てられてしまう。


 これこそが|斬り捨て御免《KIRISUTE GOMEN》。

 ニッポンの侍が空に住んでいた時代――

 すなわち空中要塞国家・江戸《EDO》の頃より伝わる、粛清の概念である。

 この責任追及の精神は、私達のよく知るハラキリに通じている。


 神社は、神への祈りを捧げる場所。

 我が国のデスカベリチャンネルで紹介される映像では、

 誰しもが拝めるかのように報道されている。


 しかし、これは大きな誤りである。

 偽りの心を持つ者が神前に立てると思ってはいけない。

 本殿へ踏み込む前に、彼らは神と向き合う資格を有しているか審査をする必要があるのだ。


 それこそが御神籤《OMIKUJI》。

 神へと向き合うために行われる試練である。

 神社によって若干のバラ付きはあるが、

 出る結果は大凶・凶・末吉・吉・大吉と定められている。


 これは運勢《UNSEI》と呼ばれ、心の気高さの格が神によって付けられているのだ。

 この結果は毎年変わるが、神の宣旨であるため強い拘束力を持つ。

 末吉以上の者は見事、神前に立つ資格を有する。

 晴れて本殿へ近づくことを許されるのだ。


 では、それ以下の者は?

 凶や大凶が出ればどうなる?


 答えは単純にして明朗。

 盛大に爆散する。一撃である。

 そこに慈悲はない。

 試練に挑みし侍には、情けをかけないのがニッポンの美徳である。


 また、私たち余所者が、遊び半分でクジを引いてはいけない。

 覚悟なき者は運勢以前の問題。

 本殿近くに封じられた大妖怪――狛犬《KOMAINU》に喉笛を食いちぎられるのだ。



 御神籤によって出た犠牲者は存在そのものが抹消される。

 これが俗にいう|神隠し《KAMIKAKUSHI》。

 日本で失踪を遂げる母国民の8割が、これによって姿を消している。

 御神籤を引く時、私達は骨を埋める覚悟を決めなければならないのだ。


 御神籤の試練は序の口に過ぎない。

 神は真に強い侍を好む。

 いよいよ本殿に昇る権利を得たわけであるが、神への道を阻む試練がある。


 それは意志を持った神具。

 神を奉納するために必須の、神器が備え付けられているのだ。


 その名は本坪鈴《HONTSUBOSUZU》。

 そして賽銭箱《SAISENBAKO》。

 多くの侍を選抜してきた神々の使徒である。


 ――本坪鈴。

 人の頭ほどもある鈴から太い縄が垂れており、

 これを引くことによって美しき音色を奏でる。


 この時に生ずる音は神様へのラブコール。

 下手な音色を奏でれば、その場で縄が参拝者の首に絡みつくのだ。

 演奏の才媛なき者は、無残な神隠しに遭ってしまう。


 ここを突破できるのは、神への愛を鈴で囁ける美丈夫のみ。

 真の侍は雅楽を好むとはよく言ったものである。


 そしていよいよ、最大の難関――賽銭箱だ。

 祈りに込める願いを、神が無償で聞いてくれると思ってはいけない。

 モチツモタレツ。

 願いに見合った誠意を見せることが求められる。


 侍は支払われる俸禄の全てを持参して神の前に立つ。

 その額面に応じて、神は願いを聞くかどうか決めるのだ。


 万物の学問に閃き、世界の答えに辿り着いたユキチ。

 朝と夜を創った宝具・『竹《TAKE》』の長さを比べることで神に愛されたイチヨー。

 神の怒りと呼ばれる難病を封じせしめた伝説の医師ヒデヨ。


 これらを結集すると、ニッポン人の好む絆《KIZUNA》という概念が生まれる。

 言うなれば、賽銭箱は絆を貯めこむ神の財布である。


 この全ての試練を突破した武士は、ついに祈りを捧げることを許される。

 こうして彼らは新年《SHINNEN》の始まりを告げ、一年を駆け抜ける強き侍となるのだ。


 これこそが新年。

 これこそが神社。

 知っているようで知らないニッポンの正月。


 ナマビョーホーは怪我のもと。

 知識だけでは心許ないので、これからある人物の正月風景を見てもらいたい。

 前述した厳然たる参拝が繰り広げられている。

 これを通じて、ニッポンのことをよく知ってもらえることを願う。




【抜粋資料】

・書名『ニッポンの正月~どこに参拝してもおんなじやおんなじや思て~』

・抜粋箇所『第四章~新宗教の成り立ち、ロリババァ神教編~ 172Pから201P』





     ◆◆◆







 少年は、高校3年生の受験生。

 周囲からはジョウジと呼ばれている。

 今年で18回目になる元旦を、彼は暗澹とした想いで迎えていた。


 12月31日はセンター試験のことで頭がいっぱいで、騒ぐ余裕など微塵もなかった。

 刻々と迫りくる試験の足音。

 家族から向けられる期待と将来への不安によって、ジョウジの心はすり減っていた。


 そんな彼は本日、珍しく10日ぶりに家を出た。

 やるべきことはやってきた。

 あとは天運。神に祈るだけである。


「……あぁ、寒い」


 同級生の多くは、クラスほどの規模もあるグループを作り、参拝に向かっているらしい。

 呼ばれなかったジョウジは悲嘆に暮れた。


 普段つるんでいる親友もいたが、

 彼は彼女と参詣すると言っていたので、誘うに誘えなかったのだ。

 そのため、ジョウジは一人、重い足取りで近場の神社へと向かった。


「うわ……人多ッ」


 本殿へと向かう石段の時点で人が溢れかえっていた。

 並んで参拝の時を待っているようだが、一向に列が進む気配もない。

 しばらく考えた末、ジョウジは石段の前を通り過ぎた。


「……他のところ行こう」


 神に祈りたいとは思うが、さっさと帰って勉強の続きをしたい気持ちもある。

 あれを待っていては帰るのが昼過ぎになってしまうだろう。

 手頃に空いた神社を探し、ジョウジは辺りを練り歩いた。


 しかし、今日は当然ながら特別な日。

 どの神社も混み合っており、ピークが過ぎる気配がない。

 記憶にある場所は全て回ったが、滞りなく参拝できる神社は一つもなかった。

 今さら最初の場所に戻るのも嫌だ。


「……帰ろうかな」


 道にはみ出す程に並んだ人の列は、ジョウジの参詣を拒んでいるように見えた。

 ため息を吐いて、彼は帰途に着こうとする。

 だがその途上――ジョウジの足がピタリと止まった。


 変哲のない山林沿いの道。

 この辺りには民家一つなかったはずだ。

 しかし、山林を割るようにして鳥居と石段があるのが見えた。


 人影はまるでいない。

 それ以前に、こんな場所に神社があるなど聞いたことがない。

 胸のざわめきを感じながらも、ジョウジは石段へ足を掛けた。


 どうせ空いてるなら――

 妥協の心が生み出した一歩だった。

 その勢いのまま、石段を登り切る。


 すると、そこには寂れきった本殿が広がっていた。


「……絶対放置されてる所だろ」


 神社としての機能を果たしているかどうかも怪しい。

 というより、間違いなく取り潰された史跡である。

 風化した石碑の宗名を見ると、『ロリババァ神教』と刻まれていた。


 怪しすぎる宗派だ。

 関わるとろくな事にならない予感がした。

 帰ろうか。そう思って踵を返した瞬間――


「ま、まままま待つのじゃ!」


 背後から幼い少女の声が聞こえた。

 こんな閑散とした場所で、そんなことがあるはずもない。

 勉強の疲れで幻聴を覚えてしまったのか。


「待てと言っておるじゃろうが!

 そこ、そこの根暗黒髪の男! 汝じゃ!」


 ドンピシャで特徴を当てられて罵倒された。

 ジョウジは思わず振り向く。

 すると、そこには和服を来た金髪の幼女が立っていた。

 彼女は軽く咳をして、避難するような目を向けてくる。


「まったく、余計に叫ばすでない。喉が痛いじゃろうが」


 ふと、ジョウジは疑問に思った。

 この幼女は何者なんだろう、と。

 得体のしれない神社に、落ち着いた様子で佇んでいる。

 和服を着ている辺り、初詣をしに来た子なのかもしれない。


 ジョウジは警戒させないよう、優しい声で確認した。


「大丈夫かい。親御さんと離れちゃったのか?」

「……は?」


 ジョウジの問いかけに対し、幼女は凄みの効いた声を返す。

 何言ってんだお前、と言わんばかりである。

 しかし、ジョウジとしては他の可能性に思い当たらない。

 彼は幼女に向かって手を差し伸べた。


「多分、ここは使われてない神社だよ。

 全然手入れされてないし。よければ下まで連れて行くよ」

「し、失礼なことを言うな馬鹿者ぉ! ここは、ちゃんとした神社なのじゃ」


 彼の手を振り払い、幼女は大きく胸を張った。

 ジョウジはため息を吐いて、境内の中を見渡した。

 震度3の地震でさえ崩れ落ちそうな本殿。

 ちゃんと運営されているようには見えない。


「もしかして、この神社の関係者……なのかな?」

「うむ。それどころか、儂はこの神社に奉られる神じゃ。崇め奉ってよいぞ」


 なんと、己を神であると言い始めた。

 懐かしい、自分も小学校の頃はそうだった。

 ジョウジはしみじみと頷いた。


 しかし、この幼女の様子はどこかおかしい。

 子供らしさが不気味なほどにないのだ。

 まさか幽霊ではあるまい。

 ジョウジの心に、少しだけ警戒の念が沸き上がってきた。


 彼は幼女の神発言に対し、否定の答えを返す。


「やだよ胡散臭い」

「ふ、ふふ……まあ、信じられんじゃろうな。

 しかし、これから儂の言葉が真であることを証明してやろう。

 しかと目に焼き付けるのじゃ!」


 少女の持つ謎の自信に、ジョウジは肩をすくめるばかりである。

 彼は残念そうに首を横に振って、幼女に切り出した。


「いや、もう帰ろうかなって……」

「ド阿呆! 御神籤も引かずに帰る参拝客がおるか! 恥を知れ恥を!」


 烈火の如く怒られてしまった。

 その気迫はとても幼女らしからぬ凄みを孕んでいた。

 思わずジョウジも気圧されてしまう。


「……わかったよ」


 境内の横に歩いて行く幼女の後を追う。

 すると、幼女は小屋からカラフルな缶を持ち出してきた。

 小さな穴が開いており、缶には『キンタロー飴』と書いてある。


 細長い形状で、どこから切っても同じ模様が浮かぶアレである。

 幼女はそれを得意げな顔で突き出してくる。


「ほれ、クジじゃ。心して引くが良い」


 ジョウジは慣れない手つきで缶を振る。

 すると、細長い飴が中から飛び出してきた。


「――はっ」


 幼女は見事にそれをパシリと掴む。

 そして飴の表面をまじまじと見つめ、そこに書いてある運勢を読み上げた。


「残念、凶じゃな」

「……ついてねえ」


 これから受験に挑もうというのに。

 なんと幸先の悪いスタートだ。

 がっくりと肩を落とすジョウジだが、幼女は容赦がない。


 笑いを抑えきれない様子でジョウジをあざ笑う。


「儂に不遜な態度を取るからじゃ! バーカバーカ!」


 幼女は飴をボリボリと食べながら、なおも挑発してくる。

 さすがにむっとしたので、ジョウジは幼女に背を向けた。


「……あ、家が俺を呼んでるわ。じゃあな」

「嘘じゃああああああああ! 真に受けるでない!」


 幼女が学生服のベルトを思い切り掴んでくる。

 必死でジョウジを止めようと声を荒らげた。


「参拝すると決めたら最後までやりきるのが礼儀じゃろう! あーゆーれでぃ!?」


 幼女は涙目になっている。

 さすがに帰途に着くのは罪悪感があったのだろう。

 ジョウジは溜め息を吐いて頷いた。


「分かったって……付き合えばいいんだろ」

「うむ、それで良いのじゃ」


 ジョウジの返事に、幼女は満足気な笑みを浮かべる。

 その屈託のない笑顔に、ジョウジの胸はざわめきを覚えた。

 幼女は賽銭箱の前に案内すると、目標を指で示す。


「ほれ、賽銭を投げ込むのじゃ」

「いくら欲しい?」


 面倒くさいので、ジョウジは直接聞いた。

 もしこの幼女が神様なのだとしたら、ダイレクトに尋ねたほうが都合が良いのだ。

 額の希望を訊かれるとは思っていなかったのか、幼女は狼狽した様子を見せる。


「……ご、五百円、とかッ! 神も喜ぶんじゃなかろうかの」


 ちょろい。意外と安い。

 ジョウジは思わずクスっと笑ってしまった。

 そして追い詰めるように問いかける。


「投げ入れたら俺の願い叶えてくれる?」


 いじわるな質問のつもりだった。

 しかし、少女は胸を張って答えてみせた。


「神の名に誓って、努力するのじゃ」

「…………そうか」


 幼女の顔は神妙そのもので、契約の履行を果たそうとする意志は見て取れた。

 言葉の内容は『前向きに善処いたします』と大差ないが、ジョウジは信用してみることにした。

 ――どうせ、他に使う当てもないしな


「じゃあ、はい」


 ジョウジは懐から一枚の紙幣を取り出し、賽銭箱に放り入れた。

 その瞬間――


「ぬひゃぁああああああああああああああああ!」


 幼女がジョウジの腕を必死で掴み、賽銭箱への投入を止めようとした。

 しかし、紙幣はヒラヒラと賽銭箱の奥に吸い込まれていった。


「うるせえ! 騒音妖怪かお前は!」


 耳がキーンとしたため、ジョウジは耳を押さえた。

 そんな彼を心配するように、幼女が顔を覗きこんでくる。


「ま、間違えて入れたのじゃな?

 こんな大金……ユ、ユキチを捧げるなんて普通せんものな」

「いや、別に。俺の意志で入れたんだよ」


 しかし、幼女はフルフルと首を横に振る。

 身体を戦わななかせて賽銭箱に腕を突っ込んだ。

 そして一枚の紙幣を引き上げると、ジョウジに返却しようとした。


「つ、つつつ強がらなくてもよいぞ……。

 儂は誤りにつけ込む悪しき神ではない。今返してやるからのじゃ……!」

「その割には手が震えてるんだよなぁ……」


 見かねたジョウジは紙幣を受け取り、再度見えるように賽銭箱へ放り投げた。

 その上で、幼女を説得する。


「いいんだよ。願いを聞いてくれるなら、それで」


 この時点で、ジョウジは幼女を疑う気持ちが薄れていた。

 ただ、自分が溜め込んでいる澱のような想いを聞いてくれないだろうか――

 その浅ましい独白願望が、賽銭箱への迷いなき投入を可能にしたのだ。


 ジョウジは冷えた頭で自分の行動をそう評価していた。

 金に未練のなさそうな彼を見て、幼女はぽんっと手を叩いた。

 そして小悪魔のような意地悪い笑みを浮かべる。


「あ、もしや親御殿の財布から出てきた金じゃな?

 それで惜しみなく使ったと見える!」

「いや、この一年バイトして貯めた最後の金だよ」

「にゃ!? にゃ、なんて大事なお金を!」


 寒さと驚きのあまり、幼女は舌をもつれさせる。

 その姿を見て、ジョウジは辟易して深い息を吐いた。

 どうせこれから使う金は口座に貯めている。

 財布の中にあるものをどう使おうが責められる謂れはない。


「いいから、騒がず受け取ってくれよ」

「そ、そうか……? ならばよかろう」


 幼女もようやく納得してくれたようだ。

 古びた社屋の奥を指さし、ジョウジに祈祷を促した。


「では、汝の願いを聞き届けよう。本殿に向かって祈るのじゃ」

「それじゃあ、遠慮なく――」


 ジョウジは一歩前に出て両手を合わせた。

 二礼三拍手一礼などの作法があったように思うが、今さら気にするべきではないだろう。

 ただ一応、拍手はしておく。

 すると、幼女は得意げな顔をして脇腹を肘でつついてきた。


「ふふん、知っておるぞ。汝のような輩をガクセーと言うんじゃろう?

 勤勉さの欠片もないが、その服装は間違いない」

「…………」


 ジョウジは己の服装に今気づいた。

 そういえば、学生服のまま出てきていた。

 幼女の指摘に、ジョウジは何も反応できなかった。


 学生であることが、試験に向かうことが、陰鬱な感情の源になっていたからだ。

 合格祈願といえば聞こえはいいが、結局はただの救済待ちだ。

 しかし、この苦しみから少しでも逃れるために、ジョウジは今日外に出たのだ。


 忌まわしい状況から脱することができるよう、彼は暗い願いを思い浮かべる。


「……祈れば、いいんだろ?」

「うむ。儂も暇ではないからの。さっさとするのじゃ!」


 上機嫌な幼女と反対に、ジョウジの顔はひどく曇っている。

 彼は暗澹とした希望を思い浮かべ、願いとして祈祷した。

 誰にも届かない、ただのあてつけのつもりだった。

 その、つもりだった。


 ジョウジが後ろを振り向くと、

 幼女が冷たい目で見つめてきていた。


「……それは」

 

 今までの慈愛に満ちた視線とは違い、

 ジョウジを責めるかのような眼差し。

 まるで言っても聞かない子供を戒める大人のような表情だった。


「それは、汝の本心ではないじゃろう?」


 ジョウジの欺瞞を断罪するかのような一言。

 ジョウジの心臓が痛いほどに跳ねた。

 こんなにも、二人の外見年齢は離れているというのに。


 今この瞬間、ジョウジはこの幼女より歳下であることを自認した。


「……どういう、意味だよ」


 自分の内面が見透かされているかのような錯覚。

 自分を取り繕おうと必 死で、ジョウジは反抗的な口調で尋ねた。

 しかし、幼女は一歩も引かない。


「拗ねた答えを返しても無駄じゃ。儂は、儂だけは、絶対に騙されん」

「…………」


 窘めの念がこもった断言に、

 ジョウジは沈黙以外の反応を返せなくなってしまう。

 そんな彼の持つ最後の逃げ道を、幼女は容赦なく塞いでみせた。


「――自ら失敗を願うなど、正気の沙汰ではないぞ」


 射抜くような、ジョウジの頬を叩くような、幼女の言葉。

 この一言で、彼は確信した。


「……心が読めるのか」

「当たり前じゃ。言ったじゃろう? 儂は神なのじゃと」


 幼女は威風堂々たる態度でジョウジに向き合った。

 しかし、ジョウジの内面では願いを看破された焦燥で渦巻いていた。

 彼が願ったのは、己の破滅。


 ――どうか、この受験が失敗し、周りの人が自分に失望しますように


 さすがに読心術を使われるのは想定外だったのだろう。

 どす黒い情念の塊を幼女に見ぬかれてしまい、ジョウジはうつむくより他になくなる。


「何があったか、話すが良い」

「いいよ、別に……」

「――ダメじゃ。儂の言うことを聞け」


 幼女はジョウジの逃げを許さない。

 うつむく彼を下から覗き上げると、目に不思議な光を宿して言い放つ。


「賽銭を投げ入れて願った以上、契約は成立した。

 儂は汝の望みを聞く義務があり、汝は本心を離す義務がある」

「…………」


 ここに来て、ジョウジは取り繕うことを放棄した。

 どうせ思惑を知られてしまったのだ。

 今さら何を喋っても変わるまい。


 ジョウジは観念して、今まで蓄積してきた想いを吐き出した。


「――期待されるのに、疲れたんだよ」


 その呟きを皮切りに、ジョウジは自分の過去を滔々と語った。

 小学・中学校の頃は、大人の手を焼かせるやんちゃ者だった。

 しかし、両親は一切の興味関心を息子である自分に示さない。

 何かがあった時も迎えに来ようとさえしなかった。


 周りの子供が無償の愛情を受けているのを見て、

 自分と他の子が違う境遇であることを察した。

 しかし、羨ましいとは、思わなかった。

 思わないようにしていた。


 両親が関心を示さないなら、それでいい。

 自分は好きに生きさせてもらう。

 中学校に入ってからは、親と離す機会がいっそう減っていった。


 勉強は苦手な方ではなかった。

 むしろ学内でも十本の指に入る成績で、高校は県下有数の進学校へと入学した。

 この時までは、ジョウジも気負わず生きてこれたのだ。


 しかし、なまじ良い高校に入ってしまったばかりに、周囲の期待がのしかかってしまった。


 ――優秀な子じゃないか、利発そうな雰囲気をしてる


 違う。自分は一度として優越感を覚えたことはない。

 ただ、人と比較されることが大嫌いだったのだ。それなのに……。


 ――ウチの家系から、こんな子は出てこなかったからねぇ


 たとえそうだとしても、お前らが誇るべきことではないだろう。

 どうして他人の努力を己の手柄のように喚き散らせるんだ


 ――将来はきっとH大学だろう? そして商社入りかな


  なぜ勝手に人の進む道を決める。

 自分の夢など、聞いたことも理解する気もないくせに。

 無責任な言葉で追い詰めようとしないでくれ。


 ――良い子息を持って、ご両親は幸せですね


 その一言が、全身を締め付ける呪縛の起爆剤になったのだ。

 今まで両親は自分のことに関心を持とうとしなかった。

 だからこそ、自由でいられた。

 自分の好きな生き方を選んでこれた。


 だが、周りが期待を煽るばかりに、両親は固執した希望を抱くようになった。

 それがジョウジにとって絶望を煽る結果になるとは思いも知らずに。

 ある日、全く自分に興味を示していなかった両親が声をかけてきた時、

 ジョウジは怒りと絶望に震えた。


――ジョウジならきっとできるわよ。頑張ってちょうだいね

――ああ、父さんと母さんを助けるんだぞ


 何を言っているんだ、とジョウジは本気で呆れた。

 呆れるあまり耐え切れない憤怒に身を焼かれた。


 今までロクに自分を見てこなかったくせに。

 頑張っている姿など、微塵も知らないくせに。

 利用できる価値があると知ったら、ころりと態度を変えた。


 それが許せなくて、耐え切れなくて、ジョウジは学業の傍らバイトに打ち込んだ。

 あの両親に養ってもらっているという事実を消したかった。

 その日から、学費と生活費を己の手で稼ぐようになった。


 学業の時間を犠牲にするリスクを負ってでも、心の平穏を買ったのだ。

 でないと、本当に心が壊れてしまいそうだった。

 しかし、膨大なバイトに追われ――身体に軋みと歪が現れ始めた。


 学業も仕事もミスが増え、特に成績は下降線をたどっていった。

 自分の行きたい道に進める成績を下回った瞬間、

 ジョウジは自分の中で何かが壊れる音を聞いた。


 足掻きながら身体を削っているのに、

 己の進みたい道すらも閉ざされようとしている。

 だというのに、周囲は一切の期待を崩さない。


 そればかりか、ドロドロとした押し付けまでもを孕ませるようになった。


 ――優秀と信じさせたのはお前だ

 ――責任をもって最後まで成功しろ

 ――私に、親戚たちに、恥をかかせるな


 勝手な話だと思った。

 頼んでもいないのに自由を奪って、

 汚れた期待に満ちた鎖を投げつけてきて、

 失望させるなと叱咤してくるのだ。


 どうして心を病まずにいられる。

 誰にも相談できず、張り詰めに張り詰めて、

 ジョウジはこの日まで生きてきたのだ。


「それで、気づいたんだ」


 ジョウジは投げやりな口調で、目の前の幼女に思惑を告げた。


「大学受験に言い訳のしようもなく失敗すれば、

 周りの目も覚めるんじゃないかってな」


 己の過去を話し終え、ジョウジは大きく肩を落とした。

 しかし、幼女はしばらく沈黙したままだった。

 その空白を、ジョウジはたまらなく怖く感じた。

 しかし数秒後、幼女はうんうんと頷いた。


「……なるほどのぉ」


 反応してくれて安心したのか、

 ジョウジは自分の狙いを打ち明けた。


「どうせ、俺の進みたい道にいける望みはもう薄いんだ。

 せめてものあてつけに、盛大にな」


 これが、両親に、親戚に、周囲の人に対する復讐だ。

 お前らの見る目のなさを、深淵から笑ってやる。

 それがせめてもの反逆なのだ――


 全てを聞き終えた末、幼女はポツリとジョウジに訊いた。


「汝はそれでいいのか?」

「ああ、後悔はするだろうな。でも、今の状態に、もう耐えられないんだ」


 あの環境に身を置いていると心が腐敗する。

 受け入れれば自分が自分でなくなってしまう。

 だからこそ、茨の道と知ってジョウジは反抗することを決めたのだ。


 愚かな選択を自認して、彼は自嘲的に笑う。


「俺みたいなのを、世間では真面目系クズっていうらしいぜ」

「まあ、儂から見れば人間など割りとクズじゃからの。否定はせん」

「……なんてことを言うんだ」


 神様というのが特別な存在なのだと改めて思い知る。

 ジョウジの前に立つ幼き神は、不満気な顔でジョウジを睨みつけた。

 目を強制的に合わせて、逸らすことを許さない。


「――――ッ」


 ジョウジは思わず身震いした。

 しかし、幼女は手を抜くことなく、呆れた顔で彼に言い放つ。


「まあ、汝が致命的に阿呆な点が一つだけある。

 それは、愚かな周囲に付き合って、

 自分の可能性をかなぐり捨てようとしておることじゃ」


 それくらいは言われるだろうと、ジョウジも思っていた。

 特に心には響かない。

 これ以上頑張ることに疲れてしまったのだ。


 もう、どうにでもなれ。

 そう思ってここに来たというのに――


「――逃げるな、立ち向かえ。そう言っておるのじゃよ」


 目の前の幼女は、逃走することを許してくれない。

 彼女の物言いが納得できないのか、ジョウジは唸るように声を絞り出した。


「弱い奴の気持ちがわからないから、そんなことが言えるんだろ」

「逆じゃ。強さも弱さも備えた、広い視野を持っておるから言えるのじゃよ。

 反対に汝は、弱さという道具に甘えて視野狭窄に陥っておる」


 反論しようとする言葉を全て叩き潰す幼女。

 その一言一言には重々しい念がこもっている。

 ジョウジは反発する手立てを無くしてしまった。


「――自分が弱い。弱いから仕方ない。

 そう信じて思考停止しておるからこそ、簡単に投げ出せるんじゃろうな」

「何を……ッ! 俺がどれだけ悩んでたと……ッ!」


 さすがに今のは聞き捨てならない。

 ジョウジは牙を剥いて反駁しようとした。

 しかし、幼女はそれを許さない。


「――無責任な期待。

 それを知っておきながら、なんで失敗するなどという選択が出てくるのか。

 儂にはちっとも分からんのじゃ」

「…………」


 その言葉は、身の上話の中でジョウジが何度も語ったことだ。

 しっかり話を聞いた上で言っているのだということを、嫌でも分からせてくる。

 その上で、幼女はジョウジの甘さを打ち砕こうと、

 絶望の淵から引きずり上げようと、容赦のない言葉を浴びせた。


「汝が失敗して誰が得をする?

 周りのバカどもは『ああ、失敗したんだ。残念だったね』の一言で終わりじゃぞ?

 無責任というのは、そういうことじゃ」


 どこかでわかっていた。

 しかし、失敗することが奴らへの報復になる、ということを疑いたくなかった。

 だが、幼女の言う通り、奴らはきっとジョウジが大失敗しても、堪えもしないだろう。


 ここで、幼女は彼の手をとった。


「…………ッ」


 ジョウジは反射的に怯えてしまった。

 しかし、幼女が差し出した手は、どこまでも柔らかい。

 底なしの優しさを持っている。


 気づけば――ジョウジの手は震えていた。

 これを見かねて、幼女が手を取ってくれたのだろう。

 視界がにじむのをジョウジが感じていると、幼女は明るく諭した。


「あたりに振り回されることはない全力で受かるのじゃ。汝は栄達の道を歩め」

「そんな……簡単に」


 しかし、幼女の言うことを否定できなかった。

 なぜなら、彼女の示す道こそ、ジョウジが本心で目指していた――


「勝利を勝ち取った上で、両親や周囲に言えば良かろう」


 ここで、幼女はニヤリと笑みを浮かべた。

 邪悪な雰囲気を漂わせながら、ジョウジに正しい復讐の仕方を教えこんでいく。


「――お前らが期待をしたせいで、追い詰められていたのだと。

 もう二度と、根拠のない希望を抱くな、と」


 成功した上で、彼らの間違いを指摘する。

 それこそが、ジョウジが報われる復讐なのだ。


「親も人間。平気で間違えるし誤りもする。

 じゃからと言って、それに付き合って我慢する必要はないんじゃぞ。

 厭なことは――言え」


 そういえば、両親に表立った反抗をしていなかったように思える。

 一度彼らの妄想を打ち砕くために、立ち向かうべきなのかもしれない。

 ジョウジは己を嘲笑した。


 迷える子羊など、噴飯ものでしかないと思っていた。

 しかし、ジョウジにとって、この幼女は間違いなく――


「たいだい、神じゃあるまいし。言葉にせんと分かるわけなかろう」

「そう、だな……ありがとう」


 幼女の言葉を聞き入れ、ジョウジは大きく頷いた。

 彼女の慈悲を切り捨てた指摘によって、慈愛に満ちた道を示されてしまった。

 それを幼女の方も察したのか、彼女は優しく本殿の奥を指し示した。


「さて、もう一度だけ祈れ。そして汝の願いを聞かせてみよ」

「――ああ」


 ジョウジは瞑目し、厳かに手を合わせた。

 もう迷わない。

 惑わされない。


 自分の本心を、湧き上がる闘争の心を、全てを織り込んで――

 一つの願いを紡いだ。

 しばらくして、幼女は優しく微笑む。

 そしてジョウジの手を取った。


「――第一志望の大学に受かりたい。よかろう、聞き届けたのじゃ」


 幼女はそのまま本殿の戸を開ける。

 そしてジョウジを中に連れ込むと、中にある神棚の前に連れて行った。


「俺は、受かるのか……?」


 不安そうに声を震わせるジョウジ。

 そんな彼に、幼女はある物を握らせた。


「汝には、これを授ける」


 ジョウジは大切そうに指を開く。

 そこにあったのは、変哲のないお守り。

 『学業成就』という、簡素な四文字が書かれた袋だった。


「これがあれば……俺は……」


 神の力のもとに、成功を勝ち取れるのだろうか。

 ジョウジが期待を胸に膨らませていると、幼女は自信満々に頷いた。


「うむ。これを見ておると、なんか勉強意欲が湧いてくるじゃろ?」

「……は?」

「む?」


 ジョウジの間の抜けた声。

 それを不思議がる幼女の声。

 不安を感じたのか、ジョウジは恐る恐る尋ねた。


「……受かるんだよな? お前の神通力か何かで」

「さぁ、汝次第じゃろ」


 突き放すかのような一言。

 ジョウジは倒れこむような勢いで幼女に食って掛かった。


「なんだそりゃあ! なんでも叶えるんじゃなかったのかよ!」

「ド阿呆! ホイホイ叶えとったら世界が滅茶苦茶じゃろうが!

 因果律をわきまえるのじゃ若造!

 毎度毎度、出雲でどれだけ血みどろの闘争が行われとると思っとるんじゃ!」


 叱りつけたつもりが、怒られたのはジョウジの方だった。

 確かに、神頼みで全てを解決しようとするのが間違いだったのかもしれない。

 ジョウジが項垂れていると、幼女はその肩をポンポンと叩いた。


「ともかく、受かるかどうかは汝の努力で決まる。

 ま、試験までの残り日数、そのお守りに土下座して祈りを捧げることじゃな」

「帰りのゴミ箱に捨てそうになるから、煽るのはやめてくれ」


 まあ、捨てるつもりなどさらさらないが。

 晴れやかな面持ちになったジョウジを見て、幼女も満足したのだろう。

 彼の背中を押して、本殿の外へと出た。


「頑張るのじゃぞ。今は周りのことなど気にするな。

 汝の全力を傾注すれば、叶わぬ夢ではない」

「……了解。でも、よく考えたら、結局は振り出しかよ」


 ジョウジは肩をすくめる。

 しかし、そこに落胆の思いは一欠片もなかった。

 ジョウジは目の前に広がる視界が急激に広がるのを感じた。


 幼女の後押しに乗って、一歩足を踏み出した。

 そのまま前を歩いて行こうとして――


「あー、ちと待て。こっちを向くのじゃ」


 幼女に呼び止められた。

 なんだろうと思い、後ろを振り向く。

 その瞬間、ジョウジは柔らかい感触を額に感じた。

 見れば、幼女が宙に浮いて彼に口づけをしていたのだ。


「…………ッ!」


 高校生には刺激が強すぎたのだろう。

 ジョウジは言葉にならない呻きを上げて絶句する。

 呆気にとられる彼に、幼女は心強い言葉を投げかけた。


「汝には儂の加護が付いておる。安心せい」


 それはありがたい。ジョウジは礼を言おうとした。

 しかしその寸前、あることが気になってしまう。


「……お前、誰にでもこういうことをするのか?」

「さあ、どうじゃろうな?」


 幼女は妖艶な笑みを浮かべる。

 唇の端をチロリと舐めて、ジョウジに挑発的な視線を送った。


「ただ、唇を他者に這わせたのは汝が初めて――とだけ言っておくのじゃ」


 それを聞いて、ジョウジはなぜか温かい気持ちを覚えた。

 名残惜しいが、そろそろ行かなくてはならない。

 目標を達成するために、勉学に励まなければならないのだ。


 最後に、ジョウジは幼女に声を掛けた。


「……名前、よければ聞かせてくれないか」

「そうじゃなぁ。信徒は一人もおらぬが、神界の連中は儂を『ロリババァ神』と呼んでおる」


 ロリババァ神。

 来る途中にあった神社名の通りだった。

 なぜ横文字が混ざった神名なのか、思わず苦笑してしまう。


 ジョウジは照れくさそうに頭を下げた。


「そっか。ありがとうな……ロリババァ神様」

「なに、礼などいらぬよ」



 手をヒラヒラと振り、幼女は謙遜する。

 本当に、妙なところで器の大きさを見せてくる。

 ジョウジはここでゆっくり首を振った。


「いやいや――」


 彼は大きく息を吸い、幼女へと微笑みかけた。


「ロリババァ神教の”信徒一号”として、神様には感謝しないとダメだろ?」


 そう言って、彼は親指を立てた。

 そして淋しげに境内の外へ歩いて行こうとする。


 己の道を、往くために――


「汝……」


 思わず、幼女はその背中に声をかけようとした。

 しかし、すんでのところで思いとどまる。

 信徒が答えを出したなら、快く送り出すのが神の勤めだ。


 彼が振り返ることは、もうないだろう。

 そればかりか、もしやここに来ることさえ――


 幼女はふっと肩をすくめる。

 それなら、仕方ないと受け入れるだけだ。

 しかしその瞬間、彼女にとって予想外な言葉が飛んできた。


「じゃあ、ありがとな!

 絶対受かってみせるから、見とけよ!

 そんで――絶対また来るからな!」


 ジョウジがこちらを振り向いて、力強い決意を告げたのだ。

 大声で再会を誓った後、気恥ずかしくなったのだろう。

 彼は一気に石段を駆け下りていった。


 今度こそお別れだ。律儀な少年を見送り、小さな神は満足そうに嘆息した。


「ふぅ……人間の巣窟に降りてきて幾十年。

 やっと来た初めての参拝客が、あんな生っちろい子供じゃとはの」


 やれやれ、と肩をすくめる。

 そして空へ消え行くほどに小さな声で、彼女もまた本音を風に乗せたのだった。




「……まあ、悪くはないの」








 

 




 ロリババァ神教……ロリババァ神を奉るマイナー宗派。神界闘争に敗北し、古代の結界が晴れない場所にしか神社を建てられなかった。祀られるロリババァ神は、そのことを今でも引きずっている。信徒を増やせば結界が壊れることが判明したため、迷いこんでくる者を待ちながら、勧誘活動を続けているという。初代神主は一色丈二。


 一色丈二……ロリババァ神教の初代神主。名門H大学の文学部民俗学科に進学した後、神道各派で修行を積み、ロリババァ神教の神主となる。その際、数多の大神社からの就任要請を全て退け、当宗派の神主になった。熱心で敬虔な人柄の彼を見て、入信を希望する信徒がいるという。現在もロリババァ神教の神社にて、愛する女神を奉っている。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルビ失敗が激しい ルビ失敗なのか分からなくなってきた
[一言] まさかアレクが日本に来ていたなんて、ねぇ。
[一言] 流石、元旦からブッチギってますね。いい年の始めになりました。 やはりロリババァこそ至高の属性也。 少しずつでもロリババァ神が連載したら、感激ですなあ。
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