偽りの正体
映像見た俺は急いでアパートを出た。
「ちょ! 佳志!」
止める亜里沙を放っておき、俺は現場らしきところに向かって全力疾走した。
あの映像は……間違いなく生中継だ。黄金美チャンネルは基本生放送。今現在でも奴は暴れているはずだ!
許せない。なぜ俺に成りすましているのかも分からない。
そいつは俺に恨みでもあるのだろうか? 何か動機があるはずだ。
ドカン!
路地の十字の枝分かれで人と正面衝突した。
「いって……」
誰だろうと見てみるとと、長柄だった。そして真横には賀島の姿があった。
「長柄、今大変な事になってるんだ」
「あぁ……分かってる。俺は前もってその偽物のお前を探している途中だ」
賀島は酷く青ざめていた。
「どうした?」
「………い……妹を見かけなかったか?」
妹……あぁ、あのツインテールをした少女か。
「いや、見かけなかったぞ」
「どこへ探してもいねーんだ! 渋谷区も回った! 警察にも捜索願を出しても全然見つからなかった! 黄金美町にもどこにもいない! 陽はどこなんだ!?」
酷くパニックに陥っている様子だ。
偽物の俺を探してるっつーのに……賀島の妹も行方不明ってのかよ……。
「分かった。俺も用があるからそれ潰したら後で探す」
と長柄と行こうとしたとき、袖をガッシリ掴まれた。
「……何だよ」
「今だ………今探してくれ! 頼む! もう二日も見かけてねーんだ!」
「俺も事情があるってのに……!」
プルルルル――――
俺の携帯電話が鳴った。
何だよこんな時に……!
「何だよ畑! 今忙し――」
「亜里沙がさらわれた!」
「………は?」
さらわれた……? どういうことだ? 意味が分からない。
「亜里沙はお前と風見と一緒にいただろ!?」
「いや……あいつ、ちょっとコンビニまで行くとか言うから見送ったら、悲鳴が聞こえて、俺が見た時にはでっかい車に運ばれてたんだ……!」
「あーチクショオ! ふざけんなよクソォ!」
ふざけてるって位じゃない。頭がおかしくなりそうだ。
今現在、俺にふっ掛かってる問題は、偽物の俺を潰す事、賀島の妹を見つけ出す事、亜里沙を取り戻すこと―――。
あー! もう嫌だ! どれを優先させりゃいいんだ……!
「いずれかを優先させなきゃダメだ……」
「偽物のお前とかなら後でもいいだろ! 俺とお前は陽を、長柄は亜里沙を探せばいいだけだろ!」
賀島のいう事には、あまり賛成できない。選択肢は三つだけだ。
再び長柄がこちらに来た。
「お前にとっては選択肢は三つに分かれてると思うが、実際は1つしかない」
「………あ? どういう事だよ?」
「つまり、偽佳志と賀島陽と亜里沙の問題は全て関連しているってことだ」
「な………どうしたらそれが分かるってんだよ!」
「あくまで推測に過ぎんが、変だとは思わないか? こんな短期間に三つもの問題が降ってくるというのは」
「………」
考えてみればそうだ。さっきからくる問題は、俺らを困らせるようなことしかない。
やはり……何か動機があるのか。
「よし分かった。じゃあ場所は………」
プルルル――
また電話か……次は賀島の携帯が鳴っていた。
出ると、色々と望ましいことにたいする返答をする態度だった。何か朗報でも見つかったのだろうか。
電話を切った賀島は、さっきよりはいい微笑で俺らに報告する。
「犯人の居場所を西園寺たちが特定できたらしい! 地図は携帯に送信された。これで行く宛てが見つかったぞ!」
「分かった。よし、全力で行くぞ!」
正に一石三鳥。これで目的は1つに絞られた。犯人を潰すまで!
走ってる途中、着信音が鳴った。俺のメールだ。
開くと動画が残されており、それを見ると、2人の女が暗いところで両手を縄で縛られ倒れている姿が映っていた。
クソ! 許さねぇ! 絶対許さん! 犯人は誰なんだよチクショウ!
暗い路地をひたすら走り、その奥にたどり着いた先は、大きな大きな倉庫だった。
「なんだこりゃ……見たことねーぞ」
賀島が言った。
「赤星地区の狭間にあるとこだ。分かりにくいのも無理ねーよ」
そう言って扉を開けると、1人のフードをかぶった男と、2人の倒れている女がいた。
「テメェら絶対許さねぇ!」
先に俺と長柄が加速あるダッシュで奴らへ殴りかかった。
ガシ!
――しかしその拳はあっという間に掴まれてしまい、相手の凶悪な笑みが目の前に見えた。
「お前らの相手は俺らじゃねーよ。もうちょっと前を見ようよ………」
落ち着いて相手の後ろを見ると………無数の男が俺らを睨んでいた。
「コイツらはな、テメェにやられた奴らだ。この百人を超える奴らの相手をする報いを受ける義務がある……!」
「この野郎……罪かぶせやがってええぇぇぇえええええ!」
手を離し、俺はそのおよそ百人に及ぶ男達を相手する……つもりだ!
さっきから思うが、賀島が動く様子がない………!
「賀島ぁ! お前も動けよ早く!」
何だ? 目が見開いて、何とも驚異を感じているあっけない顔をしている。俺の言葉で要約我に返ったのか、動いた。
「あああぁ……………」
タッタッタ―――
「ああああああああああああああああああああ!!!!!」
そして、先に走ってリードしたはずの俺と長柄をあっという間な速さで、猛スピードで無数の男たちに立ち向かった。
もはや、我を見捨てた姿だった。