騎士団の日常(3)
セリアの奇行…、下着の件のせいで時間を使ってしまい、私の机の上はいまだに書類の山が占拠している。窓からは夕暮れの優しい光が入ってきている。
徹夜では終わらないな…。そんなことを考えているとタオルを首にかけた大男、エドガーが何やら手紙を持ってきた。どうやら剣の鍛錬を終えたようだ。
「これが今さっき来たんだ。ほら、エリス団長宛に」
私は渡された手紙を見て固まってしまった。まず、色と柄がおかしい。ピンクにハートという…恋文でも送るのかというものだ。
「ちなみに送り主は…」
エドガーが言いかけた所で私は止めた。こんなものを私に送りつけてくるのは、彼女しかいない。
「分かってる。 言わなくていい」
「だな」
エドガーはやや苦笑しながら、どこかへいった。手紙の送り主を見てみると、予想通りの名前が書いてあった。
“貴女が愛してやまないセリアより”うん、一つ訂正しよう。セリアのいう愛を、私は彼女に向けたことは一度もないっ!
突っ込みどころはあるがとりあえず、読むことにした。
『愛しのエリスへ。 あぁ、私の愛しのエリス。美しい私だけのエリス。私がいないから、きっと貴女は寂しい思いしていると思うわ。だけど安心して……』
読むのが疲れたので、大幅に飛ばすことにした。だが、飛ばせど飛ばせど内容は変わる気配がなかった。そしてラスト10枚目。最後の一文まできてしまった。
『今回の報酬は、私とエリスの夢である二人の愛の巣を建設する費用に回してね 貴女が愛してやまないセリアより』
予想はしていたが何なんだ、この突っ込みどころ満載の手紙は…。それに私に関する事ばかりで、任務のことが何も分からないじゃないかっ!
私の心境を知ってか、エドガーが苦笑しながら近付いてきた。
「その顔だと今回もなかなか恥ずかしい文面だったんだろうな。いっそのこと、セリアの愛に応えてみたらどうだ?」
「馬鹿を言うな。私は女だ。同性でなんてあり得ないだろ…」
「そうか? セリアは美人だし、エリス団長を男装させれば美男美女のカップルだと思うんだがな~。」
エドガーは豪快に笑いながら、手紙の一枚目に目を通し始めた。他人事だと思って、酷い奴だ。ご機嫌な様子のエドガーを見て、私は一ついい案を思いついた。
「じゃあ、こんなのはどうだ。お前とフレッドで愛し合うというのは?」
私とエドガーは同時にフレッドを見た。料理をしているフレッドが視線に気づき、素晴らしい笑顔で返してきた。町にいる女性が見れば、目がハートになってしまうかのような素敵な笑顔。
「エドガーが夫でフレッドが妻だ。 いい組み合わせだろ?」
エドガーの顔が、だんだんと青白くなっていくのが分かった。
「エリス団長…、すまなかった。それだけは勘弁してくれ。は…、吐き気が…」
するとエドガーは口を押えながら、トイレへとまっすぐ走っていった。
今までの会話が聞こえていなかったのか、フレッドは首をかしげながら料理を再開しだした。