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心ひらく鍵のありか  作者: 朝野とき
心ひらく鍵のありか
3/23


 夕刻になり、サッシ窓からの光だけでは薄暗くなる頃、夕飯作りをはじめることにした。

 先ほどはひんやりとした感じで部屋を離れた真雪だったから、夕飯作りはどんな感じになるかとヒヤヒヤしていたけれど、思いのほか、夕飯作りは楽しくすすむ。

 向かい合ってしまうと自分の表情がどうなってるかや、真雪の視線に見透かされるようで落ちつかない気持ちも、キッチンに並んでいるとあまり気にならなくなる。真雪はあまりしゃべらないものの、手際良く楽しそうな雰囲気で料理を作っていた。


 私はといえば、相変わらずのツンツンしたり慌てたりの態度。自分でも苦笑する。

 真雪が好きな照り焼きにするにつもりで寒ブリを用意していたものの、でも「真雪が好きだろうから」とはいえなくて、「ブリがあるけど、何を作る?ブリしゃぶとかは?」とわざわざたずねたり(予想通り『照り焼きがいい』との答えで照り焼きになった)。

 お箸もお茶碗もお湯のみも実は買っていたけれども、まさか「真雪用」とはいえなくて「友人がよく食べに来るから」とごまかしたり。


 でも、真雪の大きな手が細かくネギをみじん切りにしていくのを見れたり、たまねぎを切っているうちに私も真雪も目が潤んでしまって苦笑しあう瞬間があったりして、ささやかでいて大切な時が何度もあった。

 

 ブリの照り焼き、根菜と玉ねぎのお味噌汁、ほうれん草のおひたしにごはん。味噌汁の具に使った大根の厚く剥いた皮を使ったキンピラもつける。

 ささやかな夕食。

 でも二人だと嬉しくて。

 食事をしていると、食材の話や料理のこと、実家での思い出話で時がすぎた。

 


 食器の後片付けを一緒にしていると食器拭きをしている真雪がふともらした。


「昔はさ、よくこうして一緒に食器の片付けをしたよな」

「うん」

 

 再婚当時、母さんと父さんは共働きだった。

 そもそも仕事の関係で出会った二人と聞いている。「真雪」という息子と「美幸」という娘。少し名前の語感が似ていますね……という話から、始まったと。

 そんな二人は仕事で家をあけることが多くて、親が再婚当時、11歳の真雪と15歳の私は料理や後片付け、洗濯を協力しあって過ごしていたものだった。

 互いに親が再婚するまでは、親がいないときは子どもながら「一人っきり」でやっていた家事を、二人でやれるということはとても嬉しかったし、負担が減ることでもあった。


「姉さんと二人でやれて、嬉しかった。それに心強かったな」


 真雪はぼそっとそう言った。

 私が隣をちらっと見ると、真雪はきゅっきゅっと丁寧にお茶碗を磨きあげていた。

 そのちょっと几帳面にふきあげる仕草が昔とかわらなくて、私は隣の真雪に愛しさがこみあげてきた。こどもの頃、一緒に家事をやろうとしたって、真雪の方ができなかったり、少年らしくすぐに遊びに行きたがって、結局私がまとめてやりおえてしまうことも多かった。

 注意して喧嘩したり、分担をこなさないと責めあうような言い争いをしたときもあった。

 それでも、絶対きらいになれなかったし、仕事を放り出してしまう子ども心を口で責めはしても、それ以上に悪く思ったことはなかった。

 それは、真雪がいちどやりはじめると、こうやって丁寧にこなそうとする手を見ていたからだった。始めたら真雪はきちんとする子だ。だからこそ、お手伝いを始める前に遊びに行きたい……ただ、それだけなんだって、わかってたから。

 それよりも、泥だらけ砂だらけの服で「ただいま!姉さん!」って帰ってきてくれることが嬉しかった。

 文句いいつつ砂を流して、「お腹すいた~」と言ってはつまみ食いしてくる手をよけて配膳して。笑ってご飯を食べる、片づける。 

 そんな毎日が嬉しかったし、大切だったんだ……真雪に男性として色香を感じてしまうまでは。

 

「私も、真雪がいてくれて心強かったよ」


 ぽつんとそう言うと、真雪は低く響く声で浅く笑った。明るい笑いではなく、自嘲的な影のある声。


「心強かった?まさか。俺はガキで、姉さんにたくさん押し付けてた」

「そんなこと思ったことないよ」

「本当に?」

「うん」

 

 私がうなづくと、隣の真雪が少し黙った。そして、

「なら……どうして……」

と、低い声で呟く。

 そして、真雪はまた黙りこんでしまった。

 穏やかだった空気から冷えていくものを感じて、私はたずねなおす。

「どういう意味?」

 

 そのとき、ピルルルルとケイタイの着信音が鳴り響いた。

 私の仕事関係に分類している人からの着信音だ。

 私は慌てて手をふきながら、

「ごめん、仕事関連だ」

と、真雪に断ってからリビングのローボードに置いてあったケイタイ電話を取りに寄った。


「はい斎藤です」

『斎藤先輩!休みにすみません!』


 電話からは、情けない声の会社の後輩の安東君だった。今年入社の子で、入社5年の私が相談役にまわるよう上司から頼まれている後輩。


「なに安東君。どうしたの……」

『会社用のケイタイ、落としちゃったみたいで』

「はぁ!?日曜出勤だとは聞いてたけど」

『今日、クライアントからの要望で、日曜出勤だったんですよぉ』

「ちょっと待って、いつのこと?そして、よく探したの?」

『一時間半くらい前に、クライアントに会う直前にはあったんです。マナーモードを設定したのを覚えてるんで……。クライアントの会社まで、歩いてきた道のりをたどってみて見つからなかったんで、応接室に忘れたか、道に落として盗られたか……』


 安東君の声がどこまでも暗く低く落ち込んだものになる。

 私は叱りとばしたい気持ちを押さえつつ、頭の中で思いめぐらす。事態が大きくならないうちに収束させないと……。 


「忘れたってあんたね……。クライアントって、K企画の結城さんよね」

『はい。K企画に電話はかけたんですけど、もう誰もでなくって。会社ビルにきましたけど、事務室の電気も消えてるし』

「……わかった。結城さんのプライベートナンバー知ってるから、特別にかけてあげる。しばらく待って」

『はい……』


 私はため息をついた。

 安東君が今日あったクライアントのK企画の結城さんは、フロアディスプレイでお世話になっている方だ。そして、実は私の趣味仲間でもある。

 もともとディスプレイや我が社の店舗の室内装飾関連の仕事上で、いろいろと先輩の代からつながりはあったけれども、たまたま私の趣味で通っているピアノ教室で鉢合わせして以来、プライベートナンバーを交換して時々ピアノを聞かせてくれる音楽バーに飲みに行くこともある。――……もちろん、清い仲だ。

 結城さんは60歳目前にした、ピアノをたしなむ紳士。彼はたぶん私と娘さんを重ねてるんだと思う。離婚して以来、ほとんど顔を合わせることがなかったお嬢さんが私と同い年と言っていたから。「娘と一緒に、ゆっくりと旨い酒を飲んでみたかったな」と漏らしたことがあったから。


 さて……プライベートと仕事を交えるのは、本当はまったくいいことじゃない。私個人の信用にもかかわる…。

 でも、会社用の携帯電話が紛失するということは、個人情報が漏れるということにつながるわけで……これは緊急事態、かな。まだ入社一年の安東君だけの手には負えなくなってくるだろう。

 まずは課長に安東君の状態は説明し、結城さんとの連絡をとることは伝えるとして……。あたまの中で算段していると、ふと視線を感じて顔をあげる。


 真雪が、キッチン横のカウンターに立ったまま軽く寄りかかって腕を組み、私のことを見ていた。

 さっきまで食器の片付けをしていたせいで、腕まくりしたままな腕は、筋ばった腕から手首にかけてがむき出しになっている。その男らしいラインにどきっとした。


「ご、ごめん。ちょっと仕事が緊急で後輩からヘルプが来たんだけど。あ、先にお風呂入っていていいよ。洗濯機の上のタオルを使って」

「……うん」


 真雪が軽く頷く。でも、動こうとしないで、よりかかったまま私を見ている。

 その淡々としているのに、まったくはずしてくれない視線に緊張して、私は何か言わなきゃと思って頭をめぐらした。


「あ……。は、歯ブラシは洗面台の右の扉に新しいのがあるから!別に使っていいわよ」

「うん」


 それでも、真雪は返事だけで動かない。こちらを見つめる視線も動かない。

 

「え、えっと……あ、そうだ、髭剃りいるかな?明日の朝とか…洗面台の左側の引き出しに新しいの入っているから、使って?」

「……」


 真雪の視線が厳しくなった気がした。

 

「真雪?」

「……」


 返事がなく、ただ見つめている。しばらくして、真雪はとても低い声で、

「急ぎの仕事なんだろ?まだ解決してないんだったら、さっさと連絡とれば?」

と、言い放った。

 その声は今までで一番低い声。

 こちらをじっと見据えてくる。

 気になって口を開きかけたけれど、また携帯電話の着信音が響いた。

 表示は、安東と私の直接の上司である伊崎課長だった。またせるわけにいかなくて、真雪の視線からそらすように身体を横に向けて電話をとる。


「はい、斎藤です」

『斎藤、今、安東から会社のケイタイ紛失の連絡が届いた。斎藤は結城さんと直接連絡とれるって?』

「はい。伊崎課長に報告してからと思って、まだ結城さんには連絡してませんけど……すみません出遅れて」

『いや。私に報告してからが順序だっているから、別にいい。それより結城さんの事務所になかった場合なんだが、携帯電話会社に紛失連絡して電話のアドレスロックをかける必要があるから、即刻、私に連絡してくれ。そして、見つかった場合は私が取りに行くからと』

「了解です。今から結城さんにかけますね」

『安東は斎藤に甘えているところがあるから、斎藤からは今回に関しては安東にフォローの電話しなくていいぞ』

「え?」

『ちょっとお灸をすえてやらないといけない。個人情報漏洩は命取りだからな。斎藤が結城さんと知り合いだったとしても、ビジネスとの混同は正直いやだろう?』

「そりゃ、まぁ…」


 伊崎課長の落ちついた言葉に、電話越しに頷く。


『斎藤は、バリバリ動くわりに…やさしいからな。尽くす女は、時に男を駄目にさせるぞ。俺が安東には愛の鞭をくれてやる』

「えぇ!?尽くす女?愛の鞭!?」

『たとえ話だ。じゃ、結城さんによろしく……頼む』


 伊崎課長の電話が切れて、私は一息つく。

 う~ん、たしかに安東君のやったことはアパレルメーカーの企画部の私たちの問題だけじゃない。紛失した携帯電話から顧客の情報が漏えいすれば、会社全体の信用問題に関わるわけで。


「……安東君、大丈夫かな」


 ぽそりと呟く。伊崎課長は、営業あがりで企画部に来た課長で、態度は優しいけれど、その実、非常に厳しい。始末書出して、さぁ終わりとはいかないだろう。


 その時、私が座っていたソファの隣に、大きな振動が起こった。

 振り向くと、さっきまで立っていた真雪が、私の隣に座っている。


「おふろ……入らないの?」

「別に、後で入るし。それとも入浴時間制限、あるの?」


 真雪の瞳が凍てついてするどくて、一瞬おびえてしまう。

 お風呂をすすめるのが、そんなに気に入らないのだろうか……あぁ、姉に行動を口出しされているように感じるのかな?

 悪かったなと思いつつ、あやまっても通じないような気がして、私は結城さんに連絡することに意識をうつした。


 携帯電話のコールが数回響いた後、『結城です』という落ちついたテノールの声が聞こえた。


「斎藤です、こんばんは」

『やぁ、斎藤さん、めずらしいね夜に』

「はい。あ、あの……」


 私はおずおずと切り出そうとする。すると、私が口を開く前に結城さんがちょっと笑いを交えた声で先手を打った。


『あ、デートのお誘いかな?君の好きそうな演目のピアノリサイタルが、来月あるみたいだよ』

「え、え、デート!?ち、ちがいます!リサイタルも興味ありますけど……、今日はそのお電話でなくて……あの、」


 プライベートナンバーから仕事の内容を切り出すのは少々勇気がいる。

 息を整えてから話しだそうとした、その瞬間。


『ごめんごめん』

「え?」


 結城さんは笑い声になった。


『安東君の忘れもの、だろ?』

「あ!」

『会社を戸締りする時、応接室のソファーでチカチカ光ってる携帯電話があってね。たぶん安東君のかなぁと思ったけれど、勝手に開くのもいけないと思って。しばらくしたら斎藤さんからかかってくるだろうなぁと思って、意地悪してまってたんだ』

「な、結城さん……」

『ごめんね。斎藤さんから電話がなかったら、そちらの伊崎さんにきちんと表から電話いれるつもりだったんだけど…表からだと、始末書になっちゃうだろ?』

「すみません、お気づかいいただいて…」

 

 電話なのに、私はぺこりぺこりとお辞儀してしまう。本当に申し訳ない。

 それよりも、やっと一人で仕事を任されるようになった途端、この基本的失態。伊崎課長じゃないけれど、安東君の教育を一からやりなおさねば……。


『いや、僕から斎藤さんにプライベートナンバーの方に電話すればいいことだったんだけど、ちょっとイタズラ心がわいちゃってね』

「は、はあ」

『いつもハキハキした斎藤さんが、ちょっと怯えて電話してくるのも、なんか可愛いね』

「あのですね、結城さん、可愛いって…。それはプライベートのつきあいがあるから許されますけど、仕事上だとセクハラですからね?」

『わかってるよ。安東君の携帯電話はどうしようか?』


 笑いをにじませながらも、結城さんはゆっくりと余裕のある声でたずねる。


「伊崎が取りにうかがいますので、折り返し伊崎の方からお電話する形で…」

『えぇ、斎藤さんが取りに来てくれないのかい?伊崎さんも優秀な人で好きだけど、音楽は愛してないからなぁ』

「……結城さん」

『冗談だよ。わかった、伊崎さんからの連絡を待ってるからナンバーも教えていいよ』

「ありがとうございます……。それから、安東が申し訳ありませんでした」

『うん。斎藤さん、また、レッスンでね』

「はい。では、また」


 私が安東君の会社用携帯電話が見つかってほっとしたのと、結城さんとからかわれつつもうまく連絡をとりあえたのとで、ホッとした。

 伊崎課長に電話する前に、ふぅぅとため息をつくと、ギシっとソファがなった。つい隣を見ると、真雪が背もたれに肘をかけながら私を眺めていた。

 さっきと同様に、冷たい目線となっている。いや、ますます冷え込んでいるような……。


 仕事のやりとりが気にいらないのか、リビングで話しているのが気にいらないのか、それとも別に気にいらないことがあるのかわからないけれど…怖い。

 私は、また真雪の目線からそらすように背を向けて、伊崎課長の番号を呼び出した。

 ワンコールで、『伊崎だ』との返事。


「見つかりました!結城さんの会社の応接室にあったそうです。伊崎課長が取りにうかがうという形でよかったんですよね?」

『そうだ。もちろん安東と一緒だがな。斎藤は、もういいよ。騒ぎにまきこんだな』

「いえ……安東君の教育は頼まれていたのに……」

『いや、今日、日曜出勤で一人で行かせたのは私の采配ミスだ。もう少し、部内の配置を考えないといけないな。それより、ありがとう。結城さんとの人脈があって助かった』



 私は結城さんの了解を得ているナンバーを伊崎課長に伝えて、電話を切った。

 これから伊崎課長と安東君が結城さんのもとへと行くわけだ……。

 ひとまず私の出来ることは、終わった。


 電話を切って、携帯電話をソファーの前のローテーブルに置いて、大きく息を吸って吐いた。


 あぁ、緊張した。

 伸びをした後、ずずず……とソファの背もたれに身体を預けた。


 やっと隣に座る真雪に意識をむける余裕が出来た。でも、同じソファに座っているような距離で、顔を見合わせて何かを話す勇気もない。結局、しつこいなと自分でも思いつつ、

「真雪、お風呂、先に入っていいよ」

と促してみた。 

 案の定、隣からは無言。


 仕方ない、私から入ろうかな……明日から仕事だし。

 そう思って立ちあがろうとした瞬間、左手をぐいっと引っ張られた。


「えっ」


 戸惑うままに、引き寄せられたかと思うと、私はソファに仰向けに押し付けられる。

 まぶしいはずの電灯から遮るように……大きな影が私に覆いかぶさっている。押さえられる左手首。


 見上げると……真雪の顔。

 黒髪が私に向かってさらさらと流れおちる。

 ソファに押さえつけられて……これって、まるで襲われるような体勢になっている気がするんだけど…。


 私は気が動転して、ただただ真雪の顔を見つめる。

 真雪の目は、まるで何もうつしてないかのように、無表情だった。

 どうひっくりかえしても、恋人同士の甘い夜を期待させるような眼差しや雰囲気ではない。


「ま……ゆき」


 かろうじて、声をだしてみる。

 ちょっと私の声は震えていたけれど、これは、怖いからじゃない。

 この体勢が…真雪の身体に覆われるようにして、そして真雪の顔を見上げているということが……まるで幻のようで。

 こんな角度から……まるで恋人が愛を交わすような体勢で、真雪の顔を見上げる日がくるとはおもわなかったから。

 ――……たとえ、それが愛の無い状態であっても。


 真雪は女に困っているような男じゃないと思う。

 私を押し倒す必要は、たぶん、ない。

 ちょっとした興味本位なんだろうか。

 イライラしたとか、欲求不満?

 それとも、ちょっとからかってみたくてこんな状態になっているんだろうか。


 黙ったままの真雪を見上げながら、思う。

 ――……これって、もしかして、チャンスなんじゃないのって。


 それって馬鹿にされてるって怒る人もいるかもしれないけれど、私は…私は、ありえない真雪と私の関係だから……もしこれが一夜のあやまちでも、真雪が私が「求めてくれる」なら……いいと思った。

 甘いものじゃなくても。

 単なる欲求不満からくるものだったとしても。

 好きだ惚れたで後あと両親含めて問題になるよりかは、一夜のよくわからないあやまちで、過ぎ去るもので、真雪が……何も禍根を残さないのであれば。私にとっても一夜の思い出になる――……?

 そんな都合良い、甘い夢のようなことを思ってしまったとき。

 

 真雪の綺麗な薄くほんのり紅い唇が皮肉気に笑った。

 嘲笑うような笑いを、私に向ける。



「姉さん……そんな、清楚ななりして、枕営業もやってる…わけ?」



 真雪のいつも艶を含んでいるはずの声が……今は、掠れていた。



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