第二話:異世界の地で…
意識を失ってから一体、どれだけの時間が、経ったのだろうか?
眩しい光にさそわれて、姫凜は目をうっすらと開いた。
「ん…ここは?」
見慣れない植物が、辺りを覆っている。
「やっと起きたか…」
すぐ隣から低い声が聞こえて来た。 大きく目を見開いて、声の主を確認する。
「貴方は…誰?」
「普通、相手に聞く前に自分から名乗るのが礼儀だろう? 異世界のお嬢さん」
「え…?」
彼の言葉に、姫凜は驚きを隠せずにいた。 彼の褐色の肌、漆黒の髪に同色の瞳。
「見ればわかるさ。この世界の人間は、肌の白い人間はいないからな」
「…………」
「安心しろ。お嬢さんを取って喰うつもりはないから。もう少し休んだら、村に行くからな」
「……あたし、佐久間姫凜。貴方は?」
「はぁ…話し、聞いてたか? お嬢さん。ま、いいや。俺はマジェスティってんだ」
漆黒の瞳が優しく微笑む。 見た目は怖そうだが、優しそうな人物であることを確認出来て、姫凜は内心ホッとしていた。
「村って、ここから近いんですか?」
「ん? まぁ、そう遠くはないと思うが…」
言葉を濁すマジェスティに、姫凜は首を傾げた。 だが
「気にしないで、もう少し寝ろ」
と、言われて姫凜は、渋々眠りについた。
異世界の救世主よ…
今しばし、目覚めよ…
「救…世主?」
無意識に紡ぐ言葉。辺りを見渡すと、マジェスティも眠りについていた。
「救世主って…なんだろ?」
「メシアの事だろ? 異世界からきた、救世主…」
「…………」
「まぁ、休んだ事だし、そろそろ出発するぞ」
火の後始末をして、荷物をまとめ始めた。 見る限りでは、逃走の荷造りしているようにも見えた。荷物をまとめ終えると、それを持ち上げて、マジェスティは、姫凜に着いてくるように促す。
「村はどんな所なんですか?」
「あぁ、緑が豊かだ。それに救世主に為るための、清めの湖もある。そこで洗練を承けて、メシアになるんだ」
頭を抱え込んでしまった姫凜。 しかし、マジェスティは涼しい表情で、それを眺めるだけだった。