2 セクシー女優SAEKO
そして「これは、真面目な相談なんだ。俺、何でもうまくいってしまって、うまく行き過ぎちゃって、飽きちゃうっていうのが悩みなんだよ」そう真剣な顔でつぶやいた。
医者は大きな口を開ける。そして開けた口が元に戻らない、のジェスチャーをする。
「お前さん、本当に、それ本気でいってるのかい?」
「本気だよ。そうじゃなかったらここに相談にこないよ」
医者は頭を抱えると、早口にまくし立てる。「飽きてくれ。勝手に飽きてくれ。それで終わり。よかった。よかった。全然、問題ない。飽きてOK。人は誰しも飽きる!ということで、じゃあ帰ってくれ」医者はふんぞり返って椅子に座りなおした。パイプ椅子がギシギシと不快な音を立てる。
「いや、俺は真面目に言ってるんだよ。若い時はそんなこと無かったよ。でも最近、なんだか急に全部飽きちゃって。このまま死んじゃってもそれはそれでいいかな、とか思っちゃう時があって。そこでぞっとするんだ。
それをなんとかしたいんだよ。また力溢れる俺を取り戻したいんだ」男はカウンターにさらに身を乗り出す。
「平日昼間にこの店に来てる中年野郎なんてほとんど飽きてて死にたがってるよ。だからみんなおんなじ。ろくでもない奴なんだよ。大丈夫。それにね、そのうち夢叶うから。それ絶対叶うから大丈夫。あと三十年もしたらほぼ全員ポックリいってるから心配しなくて平気」
医者はとりつく島もない。医者はまたセクシーグラビアを読み始めた。
「やっぱり、スマホの画面よりこのグラビア印刷の肌のなまめかしさがいいんだよね。高精細な液晶じゃ逆にわかんないんだよなー」
などなどつぶやいている。
「医者さんそのグラビア、SAEKOだよね?セクシー女優の」
男は医者の持つグラビア雑誌をのぞき込む。
「そうだよ。かわいいよね。僕SAEちゃん大好き」
男の目に光が宿る。
「SAEKOのサイン入り生写真を俺がなんとか用意してくる。それなら、俺の悩みは解決するかな?」
医者は、グラビアから顔を上げる。
「寧鳥さん大好き、って書いてくれる?字難しいよ。丁寧の『寧』の字に『鳥』だからね!それで『ねいとり』ね!」
「書く書く。もっと過激なこと書いてもらおう!ずっと好きでしたとか」
「ほんとに!うれしいやったー!会える?会える?」
「あー。いやあ。そこまではちょっとわかんないかなー。まあでもとにかく生写真にサイン入りね」
「わーい。じゃあ早速やろう。特別大サービスの大特価で面倒みちゃう。ところでええと、自殺を手伝えばいいんだっったよね?」
「違う違う!死にたくなっちゃうほど飽きてるのを克服して、元気になりたいの」
「そかそかお安いご用だよ。じゃあとりあえずビールでも買いに行こうか。酩酊状態になればだいたい中年男なんてみんな素直なもんよ」医者はダウンジャケットを脱いで、財布と鍵が入った斜めがけのクマのシルエットの形をした可愛いポシェットを身につけた。
「それつけてくんだ?」男が指さす。
「可愛いでしょ」医者、寧鳥はにこやかに返した。
「いこいこ。ええっと」
「俺は河合です。寧鳥さんよろしく」
「河合くんね、オッケー」
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