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殉教者たちのプロローグ




 この日二つの魂が異世界へと旅立った。


 本来巡るべき輪廻の輪を外れ、外なる宇宙へ飛び立つことは、昨今だと珍しくないありふれたことであった。


 おっちょこちょいな神様が死の運命にない若者を殺してしまい、お詫びとしてチートを授けて異世界へ送り出すこともあれば。


 あるいは予測不可能な次元の裂け目に飲み込まれ、迷いビトとなることも……。


 ゲームを再現した世界に取り込まれたゲーマー、物語を再現した世界に転生する女性、えとせとらせとせとら。


 されどもこの日に旅立った二人は、もしかすると以前にもあった(ネタかぶり)かもしれないが、それでもとても珍しいものだった。

 


 一人は仏教徒。


 生涯己の心に問いかけ続け、疑い続け、終には死して涅槃に至るべき魂は、されど解脱の境地を得ることなく異世界へと送られた。


 坊主頭ではないことをのぞくと坊主としてなんの落ち度はなく、たまの休日にはどこからともなく人が訪れて相談をされ、そして穏やかな顔をさせて帰らせていた。


 まったく誰からも慕われる男だった。

 


 一人はキリスト教徒。


 祈りを知り、神を知り、罪を赦して、また人の弱さを愛した彼女は、天の国を目指す階段を風の吹くままに飛び降りた。


 彼女は倒れても立ち上がれるものを愛した。


 言葉を尽くすことを頼りに、ただひたすらに言葉を尽くすことを選んだ。


 そんな彼女の人生はやはり迫害と困難まみれであったが、しかしただの一度も力で対抗することはなく、最後には死を目の前にしても信じた道を誤ることなく、ただ祈りの道にあり続けた。



 誰がその道に続けよう。


 二人はその短く儚き生涯で、縁によって人と繋がり、あるいは神の導かれるままに出会って、誰であろうとも敬いと智慧、または祈りと喜びを持って向かい合い、果たすべき運命を果たした。


 二人は信仰つたなき現代にあって、信仰の導となる偉大な先人であったが、誰が苛烈な殉教に憧れよう。


 己の心を疑い続ける一生を誰がなせよう。


 原始的な暴力に脅されながら僅かたりとも力による屈服を望まぬ聖者に誰がなれよう。


 だからこそ、二人はその魂をそのままに、救いなき世界にて巡教の旅をすることを望まれた。



 ――そうしてどこかの異世界に、聖者がふたり産まれ落ちた。


 

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