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第八話 緋色の夜空

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。




「それじゃあ、話戻るけど、情報について共有するね。まず、教会にいたロードブルク兵なんだけど、やっぱりこの街に来てるっぽい。街のポスターにもギルドの掲示板にもクレイデンが貼られてた」


「クレイデン……?」


「俺らがギルドの掲示板で見ただろ。ウォンテッド って書かれた紙で、俺らの容姿とか服装の特徴が書いてあるやつだよ。


 まぁ、俺らが見たのはマダグだの、フォーゲットだの知らない野蛮人のことだけど」


 カメラがないくらい昔の指名手配書の人相書きみたいな? この世界確かに電気なくていかにも異世界って感じでテンション上がるけど……名前は人相書きでよかったんじゃ?


「私たちの他にもアガツマガツゴンザエモンさんって人が横に貼られてたから、多分仲間とかだと思われてるっぽい」


「あ、それうち」


「え? なんで?」


「しん……王様にそうやって名乗った。簡単に言うと……偽名?」


「クハパリのコリウスみたいな?」


「……そう」


 うちは少し黙り込んだ後にそう言いいながら頷いた。そういえば、ネルはあの時真っ先に名乗っていたけど、本当の名前なのか? アジア人の顔してないし……どっちだ?


「あとここに3人コウドウの騎士が来てるらしい」


「そういえば、コウドウの騎士って何人いんの?」


「本来は12人だけど、今は9人だよ。」


「は!? じゃあ3人ってめっちゃ多いじゃん」


「なんで3人も派遣したんだろ? 各地の配分ミスった?」

 

「ここに来た主な目的は派遣だけじゃないと思うよ。結構コウドウの騎士って自由人が多いし、自分のやりたいことやりに来たんだと思う。


 もちろん一人くらいは命令されてきたと思うけど、あとは情報目当てだと思う」


「見つかったらやばいじゃん。早くここから出た方がよくね?!」


「いや、この情報が俺らにも来てるってことは、民間の人にも出回ってるんだ。ここで街の外へ出てみようもんなら余計に不審者扱いだろ。ここはあと一日でもいいからステイだ」


 確かにうちが考えた行動は、側から見たら不自然極まりないかも。せっかく仲間もできたんだ。こいつらの足を引っ張るまねはできない。


「でも、それまで何すんの? この街人が多いってだけで、そこまで面白そうな商業施設ないよ」


「ここにきた目的は人が多いことだよ。それを活かすの!」


「どうやって?」


 「人が多いほど多種多様な依頼が舞い込んでくるギルドを使おっか」


 情報が飛び交ってるからって理由で来たと思ったけど、そんなに見切り発車じゃなかったんだな。


「シロがお金持ってきてくれたからって、そこまであの財布にお金入ってないんだよね。そもそも私たちは、今から食べる夕ご飯と明日の宿代だけで、所持金の底をついちゃうし」


「なんに使ったんだよ……」


「全部お菓子の材料!また今度、振舞ってあげるよぉ!」


「そもそもどっからお金貰ってたの?ヌベツミがくれたとか?」


「ほとんどギルドだねぇ。と言ってもそんな危険な仕事とかじゃなくて街のお手伝いだけどぉ」


 お手伝いなんてのもギルドでは行えるのか。じゃあクハパリがうちらにお願いした大葉の採取は本当ならギルドを通して行うものだったのかな?


「ねぇ、危ないのはやだからね」


「いや、そんな悠長なこと言ってられないぞ。一時的にここにいないといけないだけで、明後日には発つ。効率的に金を稼げる依頼を受けたい。多少危険な依頼でも受けてもらう」


「え〜!?」


 ネルの不満の声が隣の部屋に貫通するくらいに響いた。


―――――――――――――――――――――――――


 それからは、夕食を食べて、今日は休むことになった。


 ここまで来るのに寝ていなかったからか、ニアスは目を瞑って10秒くらいで寝た。


 クハパリはわかんない。


 でも、うちは寝ることができなかった。正確にいうと、寝れはするけど、睡眠欲がない。ネルのも多分……同じかも。原因はうちらが五感者だからだろ。元から寝てる人に睡眠もクソもないしな。


 ってか、うちはなんの五感者なんだ? ネルは……聴覚?だったよな。


 そういえば、ロードブルクから脱獄する時も、看守の足音にいちはやく気づいたのはネルだった。


 なんで?

 

 考えれば考えるほど眠れないなぁ。


 そもそも、今何時だ? うち平日は必ず0時寝なんだけど……ま、学校ないし、時間なんて気にしなくていいかぁ。


 ……けど、娯楽がないと、こうも暇になるんだ。趣味が少ないおじいちゃんおばあちゃんにとって余生ってあんまりいいモンじゃないのかな?


 あーまたなんか考えちゃってた。なんか余計に頭が冴えてきちゃった。


 外の空気でも吸うか。


 うちは音が出やすい木製のドアをニアスが起きないように慎重に引いて、部屋を後にした。


 廊下でもギシギシと音がして近所迷惑で申し訳なくなった。階段なんて特にひどかった。


――――――――――――――――――――――――


 屋上に出た。やっぱり夜は暗くはない。なぜか空が赤い色をしている。なんだか不思議な感覚だ。酔っているからかわからないけど、夜風に吹かれると気が抜けそうになる。


「あぁ、なんかやるせないなぁ」


 本音がぽろっと出てしまった。正直、ここに来るまで周りに流されてきた気がする。


 ネルに冒険しようと言われ、ニアスはうちも仲間に誘ったけど、クハパリにも護衛してって言われてさ。


 あまり、自分がしたい冒険とはちょっと違う。そもそも、こういう異世界ってなろう系だと、俺teeeなのに。それがうちの場合、犯罪者呼ばわりですわ。


 うちが夢に見ていたのは、ハーレムとか無双だとかなのに……異世界っていったら、一大イベントとか欲しいじゃん。


 中学生ですよ? もうちょっと優しくなりません? ハードコアなんだよ。まぁ、この世界の交通と通信のインフラが整っていないことにありがたみは感じたけど。


 ん微ミョい! 舐めてんのか! ……本来、こんな時に酒をかっ喰らうのかなぁ。今はただ、熱ってるだけだ。


 ――スタッタッタッ


 うちが愚痴を垂れてると、階段の方から足音が聞こえた。警戒して屋上と階段を跨ぐ扉に体を向けた。すると、ゆっくりと扉が開いてくる。扉が開くにつれ、うちの警戒心も増していく。


 (なんだ? 兵士の残党か?)


 そんなことを思ったが、完全に扉が開くとそんな心配は無と化した。


「やはり君も眠れないか。シロ」


 そこには星空を眺めながらうちに問うネルがいた。


「やけにかっこいいね」


「カッコつけてるからね。なんだよ『やはり』って」


 うちは、鉄格子に寄りかかってた体を反転させ、ネルの方へ向かせた。


「五感者だからかな? 牧場でも全然眠れなかった」


「それなー、私も。こんな暑い場所だったなんて知らないんだけど。冷蔵庫からファンタ取り出そうとしようとしたけど、ここ夢の中だったわ。夢見心地ってな! ガハッ!」


 よくわからないネルのボケはともかく、うちはここに来るまで、気温についてはなんら問題なくこれた。


 これがうちの能力? 一番考えられるのはやっぱり触覚の能力だけど……気温は関係ないだろ。


 っというか、そもそも能力の発現方法すらわからない。


 ま、まだいいか。


 それよりも、うちはもっとネルと話したいことがある。


「なぁ、前から気になってたんだけど、なんでうちのこと仲間に誘ったの?」


 うちは今、うちなりに鎌をかけてるつもりだ。もう一緒に犯罪した仲だ。マルチ商法でもないしね。せっかくなら本音を聞きたい。


「……まぁシロになら唯一話せるか……いいよ。」


 あれ? すんなりだな。こっからさらに鎌かけを展開するはずだったんだけど。うちのライアーゲームが開始すらしなかった。


「でも一つだけ質問させて。私たちって……友達?」


「もちろん」


「即答ね……」


 ライアーゲーム終了。


 ネルは呆れた後にクスッと笑った。生ツンデレは初めて見た。


「じゃあ、話すよ。まず私の生い立ちについてね」


「生い立ちって……なんか壮大すぎない?」


――――――――――――――――――――――――


 ネルのお父さんはでかい企業のCEO。お母さんはギリシャ人のご令嬢。そこから生まれたのがネル。


 お父さんは言うまでもなく、ネルのお姉さんも超ハイスペック。頭脳明晰で学年ではいつも一位にいるお姉さんは、文武両道でもあった。


 その下にネルが生まれたんだ。当然、家族には自分たちと比べられたらしい。


 ネルは周りの人からは羨ましがられ、妬まれた。誰もネルの努力を知らないで。そのせいで、自分とは住む世界が違うのだと誰も近寄ってくれない。


 唯一、親身に寄り添ってくれたのはお母さんだった。元々体が弱かったお母さんは、コロナウイルスによって病死。


 普通、こういう時に寄り添ってくれる人は両親か友達とSNSに書いてあった為、友達を作ろうとしたらしい。


 だから、神社へ行って友達が欲しいと願った。


 初めて友達ができた。勉強の学年一位になってた子だった。自分の話も聞いてくれて嬉しかったらしい。


 ある日、学校が終わった後にその子の家へ訪れた。連絡先をもらっていなかったから、その子の家へ行って遊ぼうと誘おうとしたらしい。


 だが、友達の家の前で自分のお父さんとが友達にお金を渡していた。会話を聞くとお金を渡す代わりに友達になってあげてと言った内容だった。


 目の前の衝撃に酷く落胆し、覚悟を決めたネルは、工業地帯近くの海に飛び落ちた。


 暗く、苦しい海の底で酸素も吸えない中、ネルが考えたことは、ここが一番安心できる場所だった。


 そして、ネルは溺死した。


――――――――――――――――――――――――


「でも、私は沢城神社で友達が欲しいって願い事したから、夢に連れて来させられたの」


「その友達がうちらってこと?」


「多分ね。実際、私の怪しい誘いに乗ったでしょ」


 なんか悲しい願いだったな。多分うちと一緒に罪を被っても文句をあまり言わなかったのはうちを友達に選んでくれたからだろう。


 うちは沈黙した後、悲しい顔をしながらネルを抱きしめた。


「ちょっ! 何!?」


「うちらが守ったるさかい゙! 安心しぃやぁ! うちらはズッ友やで!」


「ちょっ、キモいんですけど!」


 そう言いながらも、抱きしめられることに抵抗しないネルに対してうちは、正直こいつ満更でもなさそうだなと思ってしまった。


「でも……嬉しかった。今のもだし、怒らないって目標作ってくれたし。……ありがとね」


 ここにきて最高の笑顔……か。


 ……待ってろよ新庄。お前にこいつらを紹介してやるから!!


「でも、それを言うならこっちもお礼を言わなきゃ行けないことが結構あるんだけど?」


 うちは照れくさくいった。


 すると、ネルは険しい顔をした。


 おそらく覚えていないのだろう。


「……例えば?」


 案の定だな。


「寿屋の時に救ってくれたじゃん。それに、さっきクハパリにうちの目標聞かれた時に内緒って言ってくれたし」


「流石にコウドウの騎士ぶっ殺すこと! とは言えないでしょ」


「いつかは言うけどね」


 静寂な時が続いた。


 気まずいとかじゃない。いうことがないから何をいうか考えているんだ。


 だが、うちにはある。切り出していいものなのか……。


 覚悟を決めたうちはいった。


「決めたよネル……うちら……ギャングになろ」


「は?」


 

 

       〜 第八話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


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