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第七話 いや、そんなん言われたって…

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。




 ペザルティアは人口が一番多いということは本当だった。入り口を見るだけで視界のほとんどが人だった。


 人混みは苦手というわけじゃないが、うるさくて居づらいから早速掻っ攫った……じゃなかった。預かったクハパリの金で宿を取った。


 宿の値段は一泊400ルト。日本円と同じくらいの価値っぽいけど……だとしたら破格のお値段だなぁ。


 俺とニアス、ネルとクハパリに部屋が分かれたんだけどね。部屋はまぁ……綺麗とはいえなかった。


 やっぱり400円のホテルみたいなもんだからなぁ。


――――――――――――――――――――――――


 暇を持て余した俺とニアスは早速探検に出かけた。中高生が初めて見る景色はどれも目新しいものばかりだった。


 訪れたのは風情のある酒場。


「ここ?」


「そ。酒場は来たことある?」


「ある? じゃねぇよ。未成年なんだからダメに決まってんだろ」


 未成年だからお断りされると思ったが、渋々入店を許可してもらえた。なんで?


 どうやらここの世界の成人は16歳。それでもうちはまだ未成年だけどね。だが、ニアスは16歳。成人だ。……一個上だったのか。全然タメでいかせてもらうけどね。


 俺たちは肩で風邪をきりながら堂々と歩く。いかにも荒くれ! って感じで睨みつけてくるのがわんさかいた。


 が、アビリティ持ちの俺らに敵うと思ってんのか!と言わんばかりに睨み返した。俺はまだアビリティ発覚してないけど。これが虎の威を借る狐ってやつか……気持ちいねぇ!


「おっちゃん!エリィアエール。ジョッキでよこせよ!」

 

 既に何度かお酒を注文したことがあるのだろうか。かっちぇ! まぁ、うちはジュースでいいけど。えーと、ソフトドリンクっと。

 

 「うちは……じゃ、じゃろまんびあー?」


 この店にソフトドリンクなどという甘えた飲み物はなかった。あるのは酒のみ。最低でも、水割りだった。

 

「え、それ結構度数高いけど大丈夫か?」

 

 は? 俺まだ未成年だが!? ちょ取り消し取り消し!

 

「ま、まじかよ!ジャロマンビアー入りました!」


 するとさっきまでガンを飛ばしてきた荒くれ者達が騒ぎ出した。

 

「まじかよあのガキ!」

 

「そので酒豪だな! カッケェ!」

 

 見直したぜお前!」


 荒くれどもは盛大に盛り上がった。うちはお酒弱いんだよなぁ。


 昔、新庄のお父さんはよく梅ジュースをを作ってくれた。甘酸っぱいシロップを水で割って飲むのだ。


 時々原液の状態で飲むのも喉が痛くなるが好きだった。


 ある日台所に梅ジュースが置いてあった。コップに注ぎ飲んでみた。


 梅酒だった。


 口に入れた瞬間鼻にツンとくる匂いがあった。


 と言っても酔った気でいただけかもしれないけど。


 でも、別に一つだけしか年変わらないもんな……

 飲んでも……いいよな……。


 そう思えば、うちはいつの間に机の上に置かれていたジャロマンビアーを息を切らしながらグビッと呑んだ。


 あまり『くぅ!』とはならなかった。それよりも苦いが勝つ。でも、周りからの盛り上がり……気持ちいい……けど気持ち悪りぃ……。


「大人はこれが好きなのか……」


 思ったことがぽろっと口から出た。


「ちげぇよぉ!わかってねぇな。飲みたては不味いんだよ!」


 ニアスはそう言いながら手を上げた。


「おっちゃん!こいつにビーフジャーキーちょうだい!」


「あいよ」


 そういやジャーキーっておつまみか。単体でしかキメたことなかったからあんまり意識してなかったけど……


「いや、もういいや……」


 頭がふわふわする匂いの残酒が口の中に残ってる。


 でも、あんまり気持ちのいいものじゃないな。


「え、もぉ!? しゃーねーなぁー!おっちゃん、オカンジョー!」


 ニアスは机を何度も叩きながら声を荒げた。結構酒には弱いのかもしれない……だったら、なんで度数高そうなやつ選んだんだよぉ。


――――――――――――――――――――――――


 

 店主に嫌悪の眼差しを刺されながら店を後にした。


 次に来たところは冒険者ギルドだ。このギルドでは犯罪者を捕まえることも仕事のうちらしいからな。やっぱり、お尋ね者たるもの、敵情視察はしておこう。


 中は酒場と同じような机が五、六個。ここにも荒くれって感じのがたくさんいた。だが、誰一人として、うちらを見て声を荒げるものはいなかった。


「なぁ、敵情視察っつっても、俺ギルドに入ってるっていったよな。戸籍情報とか見られそうで怖いんだけど……」


「大丈夫でしょ。なんか情報伝達能力疎そうだし。現に追われたことは二回しかないし。その一つは別件だし」

 

「追われる事が二回は多いんだよ!!」


 ずっと入り口の前で駄弁っていたから、受付嬢がうちらに話しかけてきた。


「あの、何か御用ですか?」


 騒がしくしてたからか、うちらに対する表情は苦笑い。


 どうにかして笑顔でいることをキープしようとしているのがバレバレだった。


 すると、表情を「スンッ」と変えたニアスは笑顔になって振る舞った。


「あんまり何かしにきたってわけじゃないんですけど……そうですね……ギルド解散の手続きをお願いしてもいいですか。」


 安心したのか、苦笑いが本当の笑顔に変わった。


「はい。ではこちらへ」


 そういえば、なんだっけ?


 海の主みたいなのがニアスの村の人を襲ったとかいってたけど、その村の人と一緒にパーティ組んでたのかな。ほとんど亡くなっちゃったのかな。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏……


 …ん? 掲示板だ。ちょっと見てみよ!


――――――――――――――――――――――――


   wanted!!

 

 名前    マダグ

 懸賞金額 120000ルト

  特徴  黒髪短髪

      結構イケメソ

      右手の人差し指、中指に指輪

      おそらく装石具

 


   wanted!!

 

 名前   フォーゲット

 懸賞金額 1520000ルト

 特徴   白髪短髪

      ちょっとイケモン

      右目白色、左目黒色のオッドアイ


   wanted!!

 名前   マリンフォートナ

 懸賞金額 800000ルト

 特徴   茶色よりの黒髪ちょいロング

      イケのオジ

      可愛い赤さんを連れている


――――――――――――――――――――――――


 なんかいっぱいいるなぁ。けど……なんだこの大雑把すぎる手配書。


 ほとんどイケメンしか載ってないっぽいぞ?


 イケメンって……これ書いた人の主観だろうが!!


 ……うち、ここに載れるのかなぁ……。


 あ……このフォーゲットってやつ……牧場で会った奴じゃね? 特徴は……


 残念なことに全部一致してる。くそッ! こいつ指名手配犯かよ! せっかく気絶させたのに! 本来なら152万円がうちの手元に……!


 いや、告発したらうちも捕まるか。


 すると、横から湿った手で肩を叩かれた。


「おい! そこの君! ちょっと路地裏まで来てもらおうか!!」


 や、やばい。うちが犯罪者ってことがバレたのか……!? って! んだこいつ!? 全身が緑色だ。しかも何か膜に覆われている……。


 たまごみたいだ……。


「な! んだよ……売り込みなら他所でやってくんねぇか……」


「はぐらかすな!いいから来てもらおう!ここじゃ危ない!」


「わ、わぁたよ!」


――――――――――――――――――――――――


 うちは威圧的なあいつにすこーし怯えながらついていった。人気のない裏路地に着くとあいつは口を開いた。


「大犯罪者よ!もうこの俺が来たからにはお前を必ず捕まえる!」


 やっぱりバレてたか。いやでも、大犯罪者って……それよりもこいつそんな有名なのか?


「お前、何もんだ……!」


 うちの問いに奴はポーズを構えながらこう答える。


「海葡萄の素晴らしさを伝えるために! 美しい海からやってきた! 正義のヒーロー! 海葡萄マンだッ!」


 これ卵じゃなくて海葡萄か……かっこよく……はないな。


「捕まえられる前に何か言い残すことはあるか!」


「はッ! やってみろよ!」


 フォーゲットって奴を倒したから調子に乗って挑発にも乗った。


「やむを得まい! 少々手荒で行かせてもらう! てりゃぁぁ!!!」


そういうと、奴はこちらに向かってくる。その姿はまるで……まる……で……うさぎの様だった……。


 あいつの走り方を見ていると、なんだかぴょこぴょこって音が聞こえる……。


 なんだあの走り方。ってかあいつなんてったっけ? 海ぶどうマン? モチーフが限定的すぎる! 絶対子供にウケないだろ。


「くらえ! 海葡萄パァァァァンチ!」


 軌道が読めやすいな。いい年した大人じゃないのか? へなちょこパンチにもほどがある。


 うちは素早いフォームで相手の腹に逆突きをくらわせた。すると、海ぶどうマンは緑ぃ汁を吐き出しながら悶絶して倒れた。


 流石に瞬殺だな。うちも結構な力を入れた。本当の海ぶどうなら、割れてたと思うし。大人一人分の戦力以下だろ。


「なぁ、お前ヒーロー向いてないって」


 海ぶどうマンは地を這いながらうちの言葉に耳を傾ける。そして掠れた声ながら必死になって訴える。

 

「向いてる、向いてない……どうこう……の、はなぁしじゃぁない……! 人の……意思と、いうのはぁ、強い……動力源だ。それが、ある……だけで、自分の人生だけじゃなく、他人の……人生まで変え……てしまえるんだぁ。すごいだろ。だが、ここで、諦めたら……今日を眠れない……子供が、困るじゃない……か」


「だーかーらー!うちは冤罪をかけられてるだけなの!……まぁ、冤罪じゃないか……でも!意としてやったことじゃないの! ってかうちも子供!」


「ん? それは……間違えて殺しちゃいましたって言ってるのと同じじゃないか?」


「ここの常識はどうなってんだ! とにかく、うちはそんな子供には危害を加えないってこと!」


「犯罪者の言うことを誰が信じるか……この変態さんめ……!」


「その言い方やめろ! じゃあもういいよ! そこでずっと寝そべってろ! このタコ!」


「……海違いだ!」


――――――――――――――――――――――――

 


 あー、もう疲れた。宿に行こう。


 そんなことを思っていると、大声で何か声掛けをしている声が聞こえた。


 大通りに出て、あたりを確認するとニアスがいた。


 どうやらニアスがうちの名前を叫んでたらしい。


「シ……あ! やっと見つけた。おい!どこ行ってたんだよ! 手続きすぐ終わったのにどっかで油売りやがって。何してたんだよ。」


「なんかヒーローに喧嘩ふっかけられた」


「ヒーローって喧嘩ふっかけるの!? なんで!」


「うちのこと犯罪者って知ってたらしいよ。声かけられたときに、おい!はんざいしゃーって言ってたし」


「それでついて行ったの?バカすぎん?もうちょいはぐらかせなかったの?」


「ねーごめんってばー。もう宿いこ。疲れた」


「しゃぁねぇなぁ」


――――――――――――――――――――――――


 夕陽が沈みそうな頃に宿に戻ってきた。疲れた上にうちらの部屋は2階だったから余計に疲れた。部屋のドアを開けるとベットで座っているネルたちが鬼の形相でうちらを見てきた。


「え! なんなのよ!出ていきなさいヨォ! ワキチたちの部屋だゾッ!」


「そうだ! 女子は他で別部屋あるだろ! ここは俺らの部屋だ!」


 うちらは帰れコールで女子たちを退却させようとしたが、それは無力だった。


「私まだ自由行動していいよって言ってなかったよね!!」


「あ。」」


「目的。忘れてないよね。もちろん調査してきたよね」


 うちらは少し間が空いたあと、ニアスと耳元で話した。


「目的って……?」


「なんか情報集めんじゃなかったか……?」


「その情報が何かを聞きたいんじゃん……」


「知るかよ……」


「なんだよ知らないの? 役にたたねぇな……」


「お前だって知らないじゃねぇか……!」

 

「……」」


 うちらは悟った。諦めようと。


 ゆっくりと、動きを早くならない様に誠意を持って、腰は45度に曲げて。放った言葉は、「ごめんなさい」


「まぁ、仕方ないか。私も自由行動しちゃダメなんて言ってないし。」


 あれ、案外怒らなかったな。まぁ、反省はしないとね。


「じゃあ、私たちの情報を共有しとくね」


「ってかそもそも目的ってなんだ?」


「コウドウの騎士を探すことなんだよね? なるべく逃げるために場所とかその人たちのアビリティの情報を押さえておきたいとか」


 あ! 思い出した。そういえば目的ってコウドウの騎士をぶっ殺すか、五感者の中の視覚遮断者に会うことだったような。


 多分クハパリにはうちらの探している理由の遠回しで伝えている。流石に五感者とか教えちゃダメだしね。


「思ったんだけどさぁ、その目的って将来性に欠けるよね?流石にそれだけで行動してたらなんか後悔しそう」


「どうゆうこと?」


「みんなでそれぞれ叶えたいこと叶えながら逃げようよ。逃避行だけが目的なんてつまらないから」


「それもそうだね。うーんどうしよう」


「それなら俺はもう決まってる。俺の村を滅ぼした海の主を倒す! それが終わったらお前らともおさらばだ。」


「うわ、最っ低! 私たちと別れるのがそんなに嬉しいんだ!」


「いいじゃん。言葉のあやだろ。目的が面白くなきゃいけないんじゃなくて、目的を達成していくにつれ面白い方がいいし」


「じゃあ、私は昔助けてくれた人にもう一度会いたい」


「こう言う可愛いのでいいんだよなぁ。シロは……もう決まってんのか」


「え、何何!?」


「内緒ぉ!」


「えー、ケチィ……じゃあネルちゃんはどうするの?」


「ね、ネルちゃん!? 私は……特にないかな。今こうやっていろんなところ冒険してるのが一番楽しいし」


「じゃあ、うちが決めてあげるよ」


「はぁ? 何それ」


 ネルから聞いた情報は、五感者というのは現実逃避をしたい人だという。俺は異例だと思うけど、少なくとも、ネルはその人なんだろう。ネルが現実でどんな思いしたかは知らない。でもだったら、ネルには明るくいてほしい。だから……


「怒らないこと!怒りそうになったら苦笑いでもいいから、笑うこと!」


「いつも怒ってるていいテェのか?」


「ちげぇよ! ってか、そういうとこだよ!」


 怒ったネルだったが、クハパリとニアスが笑ったことでネルにも笑みが溢れていた。




       〜 第七話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


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