第六話 預言者
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隠し扉の奥は洞窟だった。カンテラが道の両脇についていたものの火が入ってはいなかった。そこを抜けると森には出た。
洞窟を誰が作ったかによるけど、とにかく助かったか?でも、敵は見えないからなんとか巻いたかな。
「ごめんね。コリウス。私たちのせいで」
「いや、ごめん。あれは私のせいなんだ」
「ん? なんで?」
「自分たちの追っ手がきたって思ってるでしょ。ロードブルクはすっごい遠いって言ったよね。ピンとこないかもだけど、ここからあそこまで5000kmなんだ」
「え、そうなの!?」
「っていうか、ロードブルクって言ったらコウドウの騎士だけど、あいつらは騎士って格好じゃないし。一般兵でも甲冑を纏ってるらしいから、違うかな。」
「じゃあ…あれなんなの……?」
「あれは私を狙っているの、預言者クハパリを」
「クハパリって誰?」
「今までのコリウスって偽名でしょ」
「そう。私の名前はクハパリ。古代聚落メルマシンクの大預言者なの」
自称してて恥ずかしい単語ばかり出てくるなぁ。大がつくほどと名乗ってるし。古代って使ってるし。
「まず、メルマシンクについて説明するね」
メルマシンクは予言者を輩出する限界聚落でね。結構当たるんだ。あ、ちなみに、口外禁止ね」
「え? なんで?」
「それを話すには昔話を聞いてから。それも後で話すね。」
「はーい」
「メルマシンクは予言者を輩出する聚落。予言者っていうのは、未来を予測する人たちのことね。ほとんど当たるよ。」
クハパリはあっさり言った。けど今めちゃくちゃすごいこと言ってたぞ。しかもほぼ全部って……予言とかじゃなくて未来確定しちゃってんじゃん。
「明日嫌なことがあるかどうかも?」
「うん。分かるよ。そこに生まれた私は預言者。私は神より言伝を授かりし巫女なの。だから、これから起こることがわかる。今はわからないけど」
「今はって…どういうこと?」
「私は齢三歳半にで白紙の本に預言を書き記したの。だから流石に記憶にはないけど、奇行に走ったって事実は知ってる。
内容としては色々あるけど、一番最初のはロードブルクの王位が15の少年に継承されるってものだってお母さんが言ってたかな。
そこから少しして、私が12歳になった時にそれを親から知らせられたときは、そんなわけって思ってたけど、14歳の時に本当になった。
そこでようやく気がついたんだ。私には天賦の才能があるって。って言ってもその一瞬だけだけどね」
ロードブルクの王って、新庄のことだよな。あれ?
「いま、何歳?」
「え?まぁ、17歳だけど…」
あれ? 意外と歳離れてたな……あ、いや、違う。コリウ…じゃなかった。クハパリが14の時に、15の新庄が王位を継承した……?
そして今クハパリは17歳ってことは、あいつは今18歳!? もしかして現実と夢とでは時間軸が違うのか? 多分こっちが早いんだよな……?
「え、なに?」
「あ、いやぁ、なんでもない。ごめん」
「そう? ……それで、今持ってる本がその預言の聖書なんだけど、まぁ、流石に断定はできなくて次の内容が、メルマシンクが全焼して迫害を受けるって書いてあったらしい」
「らしいって、自分では見たことないの?」
「お母さんがいうには、観測してしまったが最後、その預言は絶対になるのって。見たらダメって言われてる。」
「シュレディンガーの猫みたいな?」
「ん?」
「なんでもございません」
「シロ、もう黙って。話の腰を折ってる」
「はぁい…」
さっきまで若干曇り掛かってたコ……クハパリの顔が晴れた気がした。
「次、昔話するけど話の趣旨は変わらないから
ね」

――メルマシンクにはある女がいた
その女は酒ばかりを飲んでおりいつも飲んだくれていた
ある日、酒場で出会った男に恋をした
彼はジャーナリストであるため、お金持ちであり真実を追求する彼の姿勢に彼女は惚れてしまう
だが、彼は仕事熱心であるがため、少女を相手にしている暇はなかった
女は立派な大人と呼ばれる歳となった
だが、少女は未だに彼を忘れていなかった
幾日も彼の存在を忘れ、惜しまなかったことはない
男を探しにロードブルクへ来た女性は、ようやく酒場で男と再会を果たす
やはりまだ男は彼女を女性として見ていなかった
女は自分しか知らない情報を伝えることで、彼は自分を見てくれると信じて、ある都市の情報を教えてしまった
その都市こそがメルマシンク
メルマシンクが予言の聚落であり、中でもわずか齢3歳である少女が『モスロルの禍難』に匹敵するほどの大預言を託されたことを告発した少女はその後、聚落で腫物にされる
彼はジャーナリスト
勤勉たる故、すぐこのことを弊社に報告
それと同時にメルマシンクの情報は国家機密として管理され、世間に知れ渡ることはなかった
その中で予言を観測させないように暗躍するロードブルクはある騎士をメルマシンクに送り込んだ
国の使いであるコウドウの騎士になると期待されているプロメーテは、その都市を焼き払い国にとって英雄となった
「――こうして、メルマシンクは国のたった一兵に壊滅させられたの。まぁ、預言にはこの昔話が別の言い方で書いてあったけどね。」
「で、その少女がクハパリってことね。」
「ちっがう!」
「あ、そう」
「わかってて言ってたろ」
ははぁん。つまりクハパリは結構ヤバいやつだから殺っちゃおうってことで追われてたのねん。
「ちなみに、なんで国家機密になったの? 国民に知らせてクハパリを『wanted!』とか懸賞金出せばすぐ見つかるのに。」
「主に考えられるのは、興味本位で聖書を見ちゃった輩を出さないようにだね。内容がわかるまではその預言は確定しないっていう考えの元だよ。
まぁ、あくまでそういう考えってだけなんだけど。だからこそ、見ないに越したことはないんだよ。
あとはまぁ、それを知って生き残りのメルマシンクの人が獅子奮迅で私らを助けにきちゃうかもしれない。
十中八九の予言とはいえ、未来を予測できるのは結構強いんだぁ。乱数でゴリ押ししてたら、絶対当たっちゃうよ」
「だったら国に聖書渡しゃいいじゃん。お互いに見てはダメっていう利害が一致してるんでしょ?」
「それもそうはいかないの!預言の聖書は他人の手に聖書が渡ると強制的に最後の預言を即時実行にする制約が課せられているの」
「うぇぇ…おっかねぇ…。でも、それこそ国にそのことを直談判しにいきゃいいんじゃない?」
「あそこの人たち結構閉鎖的で他人の意見を聞き入れようとしないの。だから私が言ったところで話も聞いてくれず即刻死刑だろうね。私にそんな力はもうないのに」
痛いほどわかるッ!! あいつらは本当に野蛮人なんだよなぁ…。うちらの意見を聞かないで勝手に覗き魔だと決めつけて理不尽にも程があるだろ!
「ふーん。大変そうだね。じゃ、うちらはそう言うことで!」
そういうと、うちはここがどこかもわからずに歩き出した。
「ちょっと待てぃ!」
ネルはそう言いながら俺の服の裾を引っ張った。
まぁ、ですよね……
ニアスが呆れた顔でこちらを見てきた。
「俺はお前らのこと救ってやったのに、自分は無視か! 最っ低!」
「これ以上厄介背負ってどうするつもりだよ!」
覗きの罪を背負ううちとネル、結構悪してるニアス。そこに国から狙われてるやつなんて引き入れたら捕まるのも時間の問題だぞ。
俺には目標があるのに……王に会えても、それが捕まってなら意味がないんだよ!
「お願い! 私を安全なところまで護衛して! 報酬は……教会内にあるから!」
「ほ、報酬……考えてやらんこともない……」
「素直にハイっていえよ!」
ネルはうちの頭を平手で殴りながら言った。
でも、結局どこに逃げるんだ? こんな世界に安全なところなんであるのか? まぁ、聞いたところでどんなところかは知らんけど。
「ねぇ、ここは危なくない? あいつら、撒いたとはいえまだ近くにはいるんだから」
「うん。だから、まずはここから近くのペザルティアにいこっか」
「どんなところなんだ?」
「住宅が多くて……ロードブルクの人口を抑えてぶっちぎりで多い街だね。あそこなら人混みに紛れられるし、観光客も多いから宿場があるはず。人がいっぱいいるから、それだけいろんな情報も渡るからね。正直、行ったことはないけど。」
確かに、そこなら隠れやすい。しかも人が密集しているなら情報も集まりやすい。目標である視覚遮断者に会えるかもしれない!
「行き方はわかるの? ってか私達お金ないんだけど宿はいくの?」
「行き方はわかるけど、足がないかな。だから、結構遠いと思う。5000km程じゃないけどね。あとお金に関してなんだけど……」
「ん? クハパリ? どうかしたの?」
「本当は私のお金が革袋に入っているんだけど……置いてきちゃった⭐︎」
ん? 革袋? どっかで見たような。まぁ、見たとしたら教会内だけど……
あ。
「もしかしてこれ?」
うちは粗末なポーチのようなものを見せた。粗末といえどもずっしりしているから貴重なものだと思った。
「え……?なんで持ってるの……」
うちの過去は少々残酷なものであるが故、貴重な品はのうのうと放置されていたら、現を抜かし取ってしまうのだ。そう。仕方ない。
「出癖が悪かった!」
クハパリの空いた口が塞がらない。、
どうやらこれらしい。どこかで見たと思ったら、机の中のものだった。これの中身、金だったんだな……お金なかったから助かったぁ。
「ま、まぁ、結果オーライ……だよね!」
そんなフォローをするネルの後ろに、草木の音と共に人の声が数人聞こえた。
「おい! お前らぜってぇ探せ! あいつ殺したら10億ルトだってよ! ぜってぇ取り逃すな!」
ルト?んー、この世界の通貨だな多分。ってかもうこれほとんど指名手配じゃん。うちらなんもしてないのに追われる地雷多すぎるだろ!……10億ルトってどんくらい?
確か牧場のチーズで200だったから……10億……!?
人の命は尊きものよなぁ。
「ねぇ、こっち。きて」
小声でクハパリが導く。うちらは物音を立てずに森の中を掻き進んだ。今思うと、クハパリを仲間にしておいて正解だった。うちとネルは五感者だし、ニアスは田舎っぺだから、クハパリ以外土地勘がなかった。それにしても『ルト』か……どっかから取った名前なのかな……。
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太陽が真上に来た頃。疲弊しきった末にようやく街に着いた。森を進む時、少し進んだだけでネルがぐずり出すわ。どうやら喉が渇いたとのこと。もしかしていいとこのお嬢様なのか?いや、こんなお嬢はいないか…
とにかく水を探した。命を奪われそうだったから見切り発車で教会から出てきたものの、水や食料は臨時では手に入らなかった。
勿論、教会以降食べれるものを食べていなかったからお腹も空いていたが、食料は草だけを食った。こんな貧乏飯は久しぶりだ。と言っても、その草は大葉だったけどね。出てくる時に持ったままだった。うちは慣れていたが、やはりぐずるはお嬢様。手強い。
〜 第六話 完 〜
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