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第三話 極悪非道の犯罪者

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。





「なぁ! 聞こえてるだろ新庄!」

 

「うがぁぁ!」

 

 だめだ。全然聞く耳持ってくれない。


 ってかなんか頭抱えながら苦しんでるけど。

 

「おい! 今すぐやめんか犯罪者!」

 

 兵士はうちたちに連呼をやめろという。せっかく会えたのだ。うちがこの夢に入った理由があいつだ。あいつだって会いたかったはずだ。


 今は一時的に忘れてるだけのはず。すぐ思い出す。


 なのにそれをやめろだ?やめるか。絶対に諦めない。新庄が心から嫌というまでは!!

 

「新庄! うちだよ! うちのことわかんない!? 白憧!」

 

 やはりな。さっき亜月眞月権左衛門って名乗った時にはネルという名前の方が不自然だと言っていた。


 なぜかはわからない。が、ということは、ここではより名前が特殊な白憧とだけ言われても名前だとわからないだろう。

 

「はぁ!?日本人!?」

 

 ネルは眉間に皺を寄せた。もちろん怒っているわけではない。疑問に思っているのだ。それはなぜか。やっぱりあいつも現実の人だからだ。

 

「おい新庄、早く帰って、ゼ◯ダかえせ!」

 

「ゔがぁっ! づ、づれでいけっ!」

 

「はっ!」

 

  一人の兵士はうちらに向けて指先を突きつける。すると、いつの間にか牢の中に入れられておいた。


――――――――――――――――――――――――


「いでっ!」

 

 痛くはなかったけど、癖で反射的に言ってしまった。うちとネルは同じ牢に入れられた。


 だが、牢に入れられた時の記憶がない。まるで目の前の景色がかわったかのようだった。そんなのは今どうでもいいか?


 そもそも、なんで新庄の顔じゃないんだ? 新庄なのは確かだ。なんでかはわからない……けど、あいつが新庄だってことはわかるんだ。

 

「お前、地球の奴だな」「君、日本人だよね?」

 

 被っちゃったな。やはりそうか。だったら最初から言ってりゃよかったのに。無駄な恥かいちゃったしな。

 

「教えてくれ。この世界について。……前よりも、この世界に来たばかりのうちにもわかりやすく」

 

 ネルは、また困惑をしている。前にこの世界について聞いた時もそうだった。ネルも結構無知なのか?

 

「そもそも、君、獏に会った?」

 

「いや? バク? 動物の方? それとも夢を食べてくれる方?」

 

「そこからかぁっ!」

 

 顰蹙顔でそう言った。めんどくさがってるのか? そんなに内容多いのかな?

 

 「いい? 通常、『五感者』は獏に出会い、この夢の世界に来れる」

 

「ごかんしゃ……」

 

「この世界の住人ではない人。君や私……あと、その新庄さんのことだね。そういう人のことを通称して五感者っていうの。


 五感者の五感は、聴覚とか、視覚とかそういうの。


 私ら五感者は、この夢の中では、自分が夢を見ているということを自覚することができる明晰夢の状態にある。


 夢なのに明晰夢が見れるのは獏の仕業なの」

 

 獏……夢を食べてくれる奴だよな? ここ夢だし。そいつが原因? 

 

「獏ってさっき言ってたやつ?」

 

「あーそうそう。獏は、美味しい夢を食べるために私らに明晰夢を見せてくれる。願いを叶えてほしい私らと、美味しい夢を食べたい獏で、Win-Winの関係にある」

 

「つまり、うち含め、この夢の中には地球人が5人いて、そいつらを五感者と呼ぶ……と」


 うちとネルは五感者なんだよな? 地球から来たし。


 ん? なんでうちは獏に会えなかったんだ?


 ――考えたがわからない。まぁ良いか。今は獏とかどうでも良いし。

 

「なんで五感者っていうの?」


 唐突に聞いた。

 

「異能力が五感に関するからじゃない?」

 

「んえ? 五感者に異能力があるってこと?」

 

「うん。そうだよ。というかこの世界の人の選ばれた人は異能力を持ってるよ。正式名称はアビリティだけどね」

 

 やっぱり、この夢には元の世界には持たざる、なんらかの能力が人間に備わっているらしい。


 でも、だとしたらあの牛の近くにいたやつに触れられた時のあの違和感。あれが能力だとしたら、何かされたことになる……え?

 

「うちも? うちも能力があるの?」


「アビリティね。君、五感者なんでしょ?」

 

 まじかよ! うちに能力!? よっしゃ! んー、なんだろうな。五感が関わってるって言ってたし、耳、目、口……あと鼻。 あれ、もう一つはなんだっけ?


 やばい学の無さが出てるな。耳か?最近環境音があんまり聞こえないけど……ってデバフやん。


 目は、周りよりはいいな。ゲームやってる割には、視力検査は左右Aだし。


 口? そもそも口にかかわる能力ってなんだよ。あ、口じゃねぇや、味覚だ。いや、それでもわかんねぇよ。


 鼻は……詰まってるわ……最悪だな。


 もう一つはなんだっけ。最後に味覚とか聴覚とか覚がついているのが五感だから……触覚? って虫かよ。


 やべぇわからねぇ。

 

「ねぇ、うちの……アビリティって何?」

 

「それは君にしかわからないよ。無意識に出るもんじゃないから。


 でも基本的に五感者のアビリティは、自分の司ってる五感を永久的に遮断する代わりに、相手に同じ五感の機能を強制的に遮断させたりできるよ。あとは、共有したり、感度あげたり。


 私のアビリティは聴覚だから、君は聴覚ではないでしょ」


 ネルは自分の聴覚を遮断してるってことか。あれ?


「え、じゃあ、何で会話成立してんの?」


「それは知らん。環境音だけ聞こえない感じ」

 

 ちょっと微妙だなぁ。あんまり前線で戦わないで、サポートとかだったら、まだ融通は効くけど……今はまだ二人だからなぁ……。


 ってか、なんかここにきてからうち、血の気が増している気がする。急に戦いのこと考え出すし。


 確かにゲームみたいで面白そうな世界って考えちゃってるけどよくないよなぁ。まぁ、新庄連れ出す時は戦いになりそうだけど。


 ってか、五感者のアビリティって全部こんなんばっかなのか? うちもかなぁ? えー、いやだぁ。


 まぁ本当は別に戦闘は避けるのがベストだけど。


 ここは夢だから、もしかしたら五感者は死ななかったり、死んじゃっても現実に戻るだけかもしれないし。よし!


 じゃあ今からどんなアビリティを持っているのか研究するか!


――――――――――――――――――――――――

 

 犯罪生活一日目。既に牢の中です。


 ですが、捕まってよかったとも思っています。なぜなら、現実ではそういなかった女の子の友達と同じ部屋にいるからです。


 刑務所というのは男女で牢が別々のはずです。特にこの国ではフェミニズムが激しいらしいです。


 が、運命の悪戯か、はたまた単に経費がないからか、そもそも刑務所ではなく牢屋という一括りにされているのか。


 ともあれ、女子と入られてラッキー!


 ではあるものの、特にこれといった進展はありませんでした。云うならばあっち向いてホイを一、二回したぐらい。


 只今絶賛、話に聞いたアビリティを開花させるため修行に勤しんでおります。


「あのぉ僕、本当に動かしたわけじゃないんですけど!」

 

 足音と共に兵士一人と青髪の青年がこちらに向かって歩いてきた。


 青年は手首を縄で縛られている。兵士は青年に並走し後ろを歩く。そして青年は牢にぶち込まれた。

 

「んな訳ねぇだろ! あのな、あそこにいたのはお前ただ一人だ」

 

 一瞬だけ、青年の眉が眉間に寄り、体がピクリと動く。

 

「他の人もいましたよ! シャフベスさんとか、ヌヨレンガさんとか!」


 少し間が空いた後に、看守らしき人はこう答える。

 

「全員……死んだじゃねぇか……!」

 

 その一言を聞いた時、青年の緊張していた顔の筋肉は一気に緩和された。そしてそのまま約10秒の沈黙が続く。

 

「は……? 冗談きついっすよ。逃げ切ったんじゃないんですか」

 

「お前の鈍感さには呆れるよ」

 

 そういうと兵士は牢に背を向け歩き出す。

 

「あ、ちょっと待ってくださいよ!本当にやってませんよ! 僕のアビリティ知らないんすか」

 

「アビリティの詳細は……扱う当人しかわからない。これがどういうことか……わかるだろ」

 

 兵士は牢屋を後にする。兵士の背中には悲しみに暮れていた。その様子に唖然としていたネル。そして何かの詠唱を毎度毎度変えて唱えるシロがいた。

 

 そんな中、青年がこちらの存在に気づいた。まぁそりゃなんか叫んでるやべぇやついたらいやでも気づいちゃうよな。

 

「あ、ああ……ごめんな。うるさくしちゃって」

 

 青年が詫びをうちたちに入れた。

 

「へぁ? ごめん何も聞いてなかった」

 

「リューベルドジャスハク湖って知ってるか?」

 

「名前長えな」

 

「その湖はリューベル川につながっていて、またその川から海につながってんだよ。そこに、海から川へ、川から湖へと海の主が渡ってきてたらしい」

 

「主って…言い方が湖に住むちょっとでかい魚に命かけてるおじいちゃんみたいな言い方だぞ。絶対その魚大したことないでしょ」

 

「竜みたいな見た目だけど」

 

「竜みたいなの!?」

 

「そいつは都市伝説として俺らの村で語り継がれてたんだけど、何回も目撃情報があるんだ。俺ららもこの目で見たし」

 

 多分モンスターみたいな存在がいるのかな。竜みたいな見た目ってことは、都市伝説級かもだけど…その半面『俺らの村で』ってことは逆にそこの村でしか語り継がれていないってことだし。ま、まぁビビるのはまだ早いな。

 

 「誰かが竜に何かをしたのかわからんけど、リバース村の住民はそいつに襲われた。最初は優位に立ち回ってたつもりなんだが、あいつ、圧縮した水をこっちに向けてきやがって。


 最初こそ奴は弱いと感じてたんだけどなぁ。多分理由は水をチャージしていて反撃ができなかったからかも……?」

 

「ハイドロポンプ的な?」

 

「え? ハイ? あ、まぁそうなんじゃね? ポンプってことは……


 まぁとりあえず、ビームの様なものだったと思う。それがめちゃくちゃ強力で、その水は村一番の大工に任せた村長自慢の家をも破壊して、仲間が数名やられるほどでさ俺は仲間の死を踏み台にせざるを得なく、渋々帰ってきたのが現状。


 冒険者ギルドに報告しようとしたら、前例がないって言われて。ましてや俺のアビリティは水に関するアビリティのだから、『お前も仕業かも』って俺が疑われたんだよ。あのハゲざけんな」

 

 だからアビリティは使ってる人しか内容はわからんみたいな話してたのか。


 つまりこいつあまり有名なとこの出身なわけではないから、国もそのモンスターについてわからないし、こいつのアビリティ自体も国は知らないから、こいつの仕業かもしれないって話か。


 この人は多分五感者じゃないんだよな? アビリティからもう違う。しかも、流暢に村について話していた。たぶん地元の人だ。

 

「もう行ったかな?」

 

 青年はかすかにぼそっと呟いた。


 多分看守がもうここから去ったかなと言う意味かな。

 

「じゃあ、俺はこれでお暇させていただきます」

 

「え? なんだよお暇って? 出れねぇだろ?牢屋に閉じ込められてるんだから。できることと言えば、せいぜい不味い飯食って、換気できない、部屋と言えるのか怪しいこの場所で、トイレの中に糞ぶちまけること位だろ」

 

 青年ははにかんだ後、立ち上がり、トイレの中の水を手で掬い、牢の扉の鍵穴にぶっかけた。


 うわばっちぃと思っていると、いつのまにか青年の牢の扉が開いていた。

 

「あれぇ?」

 

 一瞬の出来事で、何が何だか……。


 だが、彼にとってはこんなチンケな牢はいつでも脱出できるってことだ…すげぇ……!

 

「んじゃ、そういうことで…」

 

「あぁ、あ! 待って! 私達のも開けてよ!」

 

「そうだよ、連れないぞ!」

 

「そもそもつるんでないだろ!」

 

 ここにきて、今まで見せて来なかったネルの動揺を見ることができた。


 正直、ネルのことは結構買ってた。だから、そんなネルの反応見ると、こいつがどんだけすごいかがわかる。

 

「お願い!」

 

「ホント! このとおーり!」

 

 うちはそう言いながら正座をし、できる限り頭を地面に擦り付けた。

 

「いや、どの通りだよ……」

 

 え? 正座だよ? この世で最も誠意を表した座り方だよ? この世界ではそういうのは通じないのか。


 そんなことを思いながらも、うちは擦り付ける速度を早めた。


 正直痛くはなかったけど、そんなうちを見かねるや否や、彼はうちらに声をかけた。

 

 「わか…わかった! から! やめろぉ!」

 

 面倒くさそうに青年はまたトイレから水をかっさらい、その透明な水をうちらの牢の扉の鍵穴に突っ込んだ。そして何かをひねり、扉を引くと…開いてしまった。


 牢の中に入り、座って呆然としているうちらに手を差し伸べながら言った。

 

「初めまして。さようなら。俺の名はニアス。水を固めるアビリティを持っている。はい、自己紹介終わり」


 そう言いながらポリポリと顎横を掻くニアスにうちはあっけに取られていた。

 


        〜 三話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


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