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第二十六話 前言撤回

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。


今日の格言

【鳴かぬなら 私が鳴こう オホホ//❤️ギス】




 ――クハパリとお嬢様が連れて行かれた後、うちらとグローブ、パリカノティタの選手、そして執事さんと共に、卓を囲みながら作戦会議をしていた。グローブとストレイダーズは前回の会議が甘かったこともあり、今回は時間をたっぷり使うことになるのだが……


「お嬢様が連れ去られているのだぞ!? お宅こそ、仲間を連れ去られたのだろ!? こんな悠長に話してていいのか!?」


 執事、ヴァレトラは卓を叩き荒ぶる。卓を叩いた衝撃でかけタオルは揺れ、フォークとナイフが音を立てる。切羽詰まった状況に皆が頭を抱える。


 うちらとて、クハパリ達が心配だ。だが、玄人組との闘いの間際、会議では不完全な部分があった。ここは慎重に行くべき――なわけねぇだろ!


 お嬢様の安否は兎も角、クハパリが狙われた理由は聖書にある。聖書を覗かれたら最後のページが即時実行されるんだよな!? 世界の危機じゃねぇか! こんなところで油売ってる場合じゃねぇ!!


  ――と、言おうとしたが、そういえば他言無用のお願いだったな。うちはやむを得ず執事さんを落ち着かせた。自分もそうしたいが経験からして一旦考えた方がいいと。


 そう。一旦考えた方がいいのだ。ならまず、今までの出来事を整理しよう。 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前回のあらすじ


大地震によって出現した時空の歪みに取り込まれたケンとリカは、原始時代にタイムスリップしてしまった!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 いや、これボボボでボボボなボーボボさんのあらすじだ。もう一回。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 前回のあらすじ


パリカノティタに来たストレイダーズ一行は、パリカノティタの大会でどこかの貴族を見つける。だが、その横にいたのは、書庫イスベルトで死線を共に乗り越えた素人組のリーダー、マダグだった。

なぜ貴族の横にいるのかを聞いていると、会場内が騒がしくなる。急いで駆けつけると、天井には飛空挺に乗る地口教と、地口教に連れ去られるクハパリとお嬢様がいた。

一体、どんな出来事がストレイダーズに襲いかかるのだろうか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 と、まぁこんな感じか。


 余裕ぶっこいてはいるものの、内心は超焦っている。身体中からは冷や汗をかいてしまい、どこかもどかしい。


 こんな感じで前回のあらすじを語っているのも、心配の裏返し。落ち着くためにおちゃらけている。


 すると、ニアスが話を切り出す。


「あの……いいかな。執事さんと俺らは大事な人を連れ去られて、マダグ達は護衛の任務だから残るのは勿論だけど……あんた達は何で残ってくれてんだ?」


 ニアスはパリカノティタの選手達を見ながら言う。 


 クハパリを守ると言う任務を受けたからではなく、しっかりとストレイダーズの一員だからと一括りにしてくれるのは他人事だが、何とも気持ちのいいものだった。


 すると、選手達がお互いを見合って、選手の一人が立った。


「そりゃ勿論、大会を壊した落とし前をつけさせるためだろ」


 パリカノティタを楽しみにしていた人は観客だけじゃない。何なら、観客よりも選手の方が楽しみにしていたのだろう。


「落とし前!? そんだけのために命を賭けるのか!?」


 それを聞いた選手達はムスッとした。選手達にとってパリカノティタは神聖なものであり、ある種の信仰なのだろう。


「まぁ、パリカノティタの選手程、この場で心強い奴らはいないか」


 その発言でニアスへのヘイトは消えたようだった。選手の顔が戻ったのがわかる。


「すみません。いいですか?」


 執事さんが手を上げた。


「この中に地口教の教会……と言うかお嬢様方が連れて行かれた場所を知っている人はいるんですか? そもそも、それがわからなければ事を運ぶにしても八方塞がりですよ」


「教会の場所ならそこら辺に沢山あるが、連れて行かれた場所となると望み薄だなぁ……。地口教の中にもまともな人はいるが――俺たちの中には地口教がいない上に、おそらく上層部の人間しか知らない情報だ。自分たちで場所を割り出すしかない」


 選手の一人がそう言った。確かにうちらは今手詰まりだ。だが、どこから探りを入れればいいかわかったもんじゃない。そう思うと同時に、ネルが急に口を開いた。


「割り出すって言ったって……! そんなアビリティがあるって言いたいの!? パリカノティタの選手なんだから武闘派のアビリティしかないでしょ!?」


 想像するにも及ばなかった出来事に驚いてしまったが、この中で一番焦るべきなのは執事さんとネルだろう。むしろ今まで大人しかった方だ。


 ネルはおそらく夢世界(ここ)に来て、初めての女の子の友達で、いつも見ていたがずっと一緒だ。そんなネルが黙っているわけがない。


 だが、ネルのおかげでアテがついた。


「おぉ、そうだよ! 何もこの場の人だけで解決しなきゃならないってわけじゃないじゃん」


「え?」


――――――――――――――――――――――――


 ――うちらはマダグ達から貰った事務所に来た。一日前に去ったばかりで、貰った時間もそう大した時間じゃないけど、久しぶりに思えた。沢山の出来事があったからな。


 今、仲間達は会場で待っている者もいれば、地口教の教会へ行っている者もいる。会場跡地という方が妥当な気はするけど……まぁ、いいだろう。


 早速中へ入り、地下へと続く階段を降りた。


「よぉ! ハイププァル! 元気してたか!?」


 グローブ、玄人組員のハイププァルの元へ訪れた。ハイププァルはニアスが倒した相手だ。その時気絶してたからわからないけど、ニアスとうちの見解が正しければ、ハイププァルは誰かを見つけるアビリティを持っているはずだ。アビリティで地口教を探させるのだ。


「元気なわけねぇだろ。ボードゲームと食糧は置いてきてくれていたが、食糧はもう尽きているし、ボードゲームも殆ど遊び尽くした! お前らがこなきゃ死んでたかもしれねぇんだぞ!?」


 こいつこんな性格だったか? 牢屋に放り込めば性格が変わるのか? しかも元気になってるし。いいこと尽くめじゃん。うちは入りたくないけど。


「元気があってよかった」


「ねぇっつってんだろ!!」


 そういえば、食糧のことも忘れていたな。金庫の中のお金はまだまだありそうだ。こいつらが稼いだお金があってよかった気持ちがあるのと反面、略奪は気に食わないうちがいた。


「で? 食糧はまだか? 最近上から物音がしねぇと思ったら急に来たんだ。期待を持たせただけならタダじゃおかねぇぞ」


「君たちが何かをできるなら別として、今日はお前に用があってきたんだ」


「俺……?」


 ――その後、遠回しだがハイププァルの何かを探すようなアビリティが必要だと端的に伝えた。


「なるほどな……駄目だ」


 そりゃそうだ。捕まえている立場でお願いしにきているんだ。それこそ、グローブ組員全員をここから出せくらいの見返りでなきゃ無理だ。だが、これ以外宛がないのは事実。なるべく悟られないようにするのだ。


「勿論、見返りは約束できるよぉ? お前らをここから出す以外なら」


 さぁ、どう出る? 出す事を条件として求められたら出さざるを得ない。先ほども言った通り宛がないからだ。だが、その後が面倒になる。なるべく穏便に済ませてたいなぁ。


「わかってる。ここで罪償わなきゃならねえのは重々承知している。俺だって子育てを放り投げてだからな。だから――」


 うちは固唾を飲んだ。


「俺の子と面会させてくれ」


――――――――――――――――――――――――


 ――ライグ達は指を咥えて大人しく待っていた。ハイププァルへの依頼だから好きにさせていたのだろう。ギャングといえど、そこは筋が通っているのな。


 今はハイププァルの子がどこにいるのか探すためにマダグに会いに行っている。ライグの子供がグローブだったんだ。ハイププァルもそうらしい。


 正直マダグがどこにいるのかわからないけど、各グループで一人は会場に置いている。グローブはギスターナ、ストレイダーズはメッちゃん、選手はネルにキレられてた人。執事さんはグローブに入っている。


 会場に着くと、ギスターナが誰かと話していた。だが、直ぐにその人はどっか行ってしまった。


「ギスターナ。マダグは?」


「今は他のグローブ達に会いに行っている。事情の説明と戦う準備をさせるためだ」


「うち、丁度そこ行きたいんだけど、ネヴキュベートの地形把握してないんだよね」


「会場にある部屋のどこかにいるぜ。そこまで時間のかかるもんじゃない。お前一人で行けるはずだ。何なら着いてってやろうか?」


「いや、いいよ。……あ、あと、さっきの人誰?」


「ネヴキュベートの国王の側近だ。『この事態は何事だ!?』って来たけど、地口教である事を伝えたら帰ってった」


「地口教って国でも対処できないほど強いの!?」


「強いっていうか……めんどいんだよ」


 その瞬間。ヌベツミを見ていたから全てを理解した。


「……。わかったありがと!」


「おう!」


 何だかんだで、マダグよりもギスターナの方が話し合うかも。


 さて、本題は誰がハイププァルの子供探し、だが……顔似てるかな? それとも口調? いやいや。グローブなんて気の張ってるばっかだったな。


 うちは廊下を歩き、マダグとグローブがいるという部屋を探す。ノックをせずとも話し声が聞こえてくるだけでわかるだろう。


 ――五個目の部屋で、何やら部屋の奥から籠った声が聞こえる。聞く感じ、やっぱり気の張ってる声がする。遺伝子って怖いね。


(ビンゴっ!)


「お邪魔しまーす」


 うちは何も構わずドアノブを捻った。すると、目の前ではマダグと他の素人組が何かを揉めていた。


「そもそも、俺らはトンズラしても問題ねぇよ! だってギャングだぜ!? 元々社会不適合者なんだよ!」


「その俺らでも社会貢献ができる絶好のチャンスだろ!!」


「何がチャンスだよ! 元から成り下がってる以上、社会復帰なんてできねぇよ!」


 社会だとか言ってるけど、とんずらという言葉が聞こえた。今から護衛の依頼をトンズラして別のやりたい事やろうという事だろうか。


(それは困るなぁ)


「なぁ! ハイププァルの子供はどこだ?」


 マダグと張り合っている奴よりも大声で威圧した。すると、部屋中が静まり返った。そしてみんながうちを見る。


 そんな中で手を挙げた男がいる。


「俺だけど、なんかようか?」


 ――マダグと言い合っていた男だった。


「名前何?」


「ジュナーラ」


「お前を親父の元へ連れて行く」


「はぁ!? 嫌だね! 力尽くで連れてみろ!」


 ヒートアップしたジュナーラは言うことを聞かない。なるべく穏便に済ませたかったんだけどなぁ。仕方ない。


 マダグと他のグローブは部屋をそっと出た。戦場を作っているようだ。そして、そいつらは玄関で観覧をし始めた。別に今からパリカノティタやるってんじゃないんだけどな。


「親父に何して欲しいのかわかんねぇけど、俺を倒せるだけの強さならいいぜ」


「わかった。かかってこいよ」


 ジュナーラは速攻で突っ込んできた。


(速っ!?)


 反応に遅れたうちは腕でガードした。向こうはラッシュをしてくるが、隙をついて横から殴りを入れた。だが、戦い前だから手加減をして殴った。


「――ぐっ!」


 この感覚は脇腹。抵抗で蹴り込んできたがスレスレで回避した。


 別の部屋は見たことがあるが、どこの部屋も作りは同じらしい。


(――だったら!!)


 うちは洗面台に向かう。それを追いかけてくるジュナーラが見えた。洗面器の上にある灰皿を手に取り、ジュナーラに打ちつけた。


 だが、うちが持っていたのは硬貨が数百枚で、硬貨は床にばら撒かれた。


(は?)


 横から蹴りが飛んできた。顔面に当たった。そして頭が壁に当たった。


(やばい!)


 次に飛んできた蹴りをギリギリ避けることができた。うちはジュナーラの足を掴み、肘を打ちつけた。


 悲鳴を上げた。ジュナーラは再びリビングに戻った。


 ジュナーラのアビリティは直接ダメージを与えるためのものではなく、戦闘をしにくくする妨害である可能性が高い。


 その上、部屋のアイテムがどこにあるのか、何があるのかがわかっているというアドバンテージを持っている。


(――ならイケる!)


 ジュナーラはクローゼットを触った。すると刀に変身した。すると、刀をこちらへ突いてきた。部屋の廊下だったため、避けづらい。でも――


「刀より、槍の方が良かったんじゃない?」


 腕に突かれたが、痛くもないし、傷も浅い。うちは刀を引っ張ってジュナーラを殴る。顔面に、しかも真正面に受けたジュナーラは部屋の奥まで吹っ飛んだ。


 壁まで吹っ飛ばされたジュナーラは目を開けた。うちを必死に探している。だが――


「お前の視界にはいねぇよ」


 ベッド、壁へと走り移り、壁をキックし、ジュナーラの頭上に蹴り込んだ。


「グォ!」


(完全に決まったな)


 そう思っていると、玄関で見ていたギャラリーが渋い顔をして、こちらを見てくる。うちじゃない。ジュナーラをだ。


「まだだぁぁぁ!!」


(やっば!)


 もう一回、ジュナーラに蹴り込んだところで、再びダウンした。


 前言撤回だ。グローブは気の強い奴しかいないって言ったけど――こいつだけだ。



       〜 第二十六話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


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