表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

第二十四話 迷子

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。


今日の格言

【今回の章のタイトル道場入門ですけど、クソほど道場関係ないと思います】



「――危ないですよ」


「……あ、そうっすね。ありがとうございます」


 近くには執事を連れた、ザ・清楚って感じのお嬢様がいた。白をベースとし、所々に水色が入っているドレスを身に纏い、細い手には純白の手袋が嵌められている。


 うちはその品性に見惚れながら、門の前に停めてあった馬車を思い出す。一方の色は違ったかもしれないが、この人が身に纏うドレスと馬車には似ているところがある。とても綺麗で印象的だったためか、この馬車は、もしかするとこの人の馬車かもしれないと思う。


 貴族には悪印象しか持っていない。悪役令嬢、破滅フラグ等々……まぁ全部令嬢恋愛小説でしかないんだが。前にいる人は正真正銘令嬢。悪人顔ではないが……善人の皮を被った悪女なのかもしれない……。


「あなたもハルヴァリアを見に来たのですか?」


「はるばりあ?」


「かつての三翼戦争で数多の功績を称えられた南西の一翼、ヘルヴェールの仲間が乗っていた巨人兵が持つとされる巨剣です。その剣は雨雲をも穿ち、敵兵を蹂躙したと言います。剣が纏う紫色の光は電撃が走り、雷帝の剣とも呼ばれています。近づくと感電する恐れがあります故、警告させていただいた所存です」


(なにそれかっこいい! 巨人兵の剣かぁ。ますます抜きたくなるじゃないか。)


 すると、さっきから近くにいた、執事と思われる人がお嬢様に近づいてきた。意外と若く、20歳のようにも見える。そんな執事が頭を下げ、手を胸に持ってきて言った。


「コクバ様。只今探していた護衛を確保いたしました。そのため来賓されていたパリカノティタに御足労願います」


 その言葉を聞いたお嬢様は目を丸くしながら空を見上げた。やはり夢世界では空を見て時間が過ぎるのを感じることが一つの時間経過を知る方法なのかもしれない。


「もうそんな時間か……すみません。私はこれで失礼します」


 うちは貴族でも何でもないのに、お嬢様はドレスを摘み上げ、頭を低くしてそう言った。その光景はまさに絵に描いたようなお嬢様像ぴったりで、うちは呆気に取られてしまう。


「あ、はい。さようなら……? ご機嫌よう……?」


 お嬢様は背を向けて執事と共に去っていった。最後テンパっちゃったな。恥ずかしい。ってかお嬢様が最後、「そんな時間か」って言ってたけど、うちが思ってるほど清楚じゃないのか? ボロを出したな悪役令嬢め!


(もう目的は済んだ。ハルヴァリアを見れて大満足だ。さて、うちもメッちゃんの元へ戻ろ――いない!?)


 さっきまで一緒だと思っていたメッちゃんたちは辺りに居なく、付近の景色には見覚えがない。無愛想そうにうちを見てくる周りの人の目はうちにとって耐え難い。これはもう完全に――


「迷子じゃん……」


 うちはそう悟るのだった。


――――――――――――――――――――――――


「は!? シロ――待て!」


 俺はシロを呼び停めようと、大声で言った。だが、おそらく聞こえておらず、そのままどこかへ走り出した。


 俺が走って停めても、地形を把握できていない以上、迷子が二人になるだけだ。そのため、走って追いかけるのは諦め、メッちゃんと共に動くことを選んだ。


 クハパリはこの街に来たことがあるのだろうか。多分ない。ネルは絶対ない。唯一頼れるのはメッちゃんだけだろう。


「メッちゃん……はこの街来たことあるんですか?」


 みんなと共に歩きながらメッちゃんに問いた。もし、メッちゃんがこの場の地形を把握していなかったら、迷子が二人から五人に変わるだけだ。


 いや、正確には迷子になること自体は恐るべきじゃない。本当に恐るべきは迷子が2グループに分かれることだ。迷子と云うより、この世界では16歳が成人であるからして、情けなくも迷える大人というべきだろうが、ここはあえて迷子と云う。


 これだけ考えたが、メッちゃんはとてもつまらない答えを口にした。


「当たり前だ。他に買い物できる場所がない」


 当たり前なのだろうか。俺はそう考える。確かに道場の近くには何もない殺風景な光景が広がるだけで、特にこれといった物はない。


 だからと言ってネヴキュベートに赴くのもあまり納得できない。何故なら道場から行くベルトポートとネヴキュベートの距離は殆ど一緒のように思えた。何なら、ベルトポートの方が近いかもしれない。


「ベルトポートは? あそこ屋台やってましたよ?」


「おばちゃんしかいないから行かない」


 この人にとっての三代欲求には凄まじい偏りがあるのかもしれない。尤も最も多いのは性の欲求だろう。赤裸々に語るメッちゃんの姿は流石としか言いようがない。


「それに……ここには大分、苦労をかけた」


 何を言っているのかわからなかったために、メッちゃんの言葉を無視せざるを得なかった。


 すると急にメッちゃんが話題を振る。気まずいからという理由で振ったわけではないと思う。今までの印象的に、メッちゃんが空気を読めるはずがない。


「そういえば、クハパリ、ネル。お前たちのアビリティを聞いていなかったな?」


 ネルが最初に口を開く。欠伸をしながらでなに言っているのかわからなかったが、会話をしていく中でなんとなくで理解できるようになってきた。

 

「わゔぁいのあいきぃわはくがつわかあ、ひうんへおはかあぁい(私のアビリティは複雑だからわからない)……けど今わかっているのは聴覚の共有、音が出ている場所の把握ができる」


 正直、最初にネルが口を開くとは思わなかった。何時も怠惰で気力のないネルだが、今回は何かと積極的だった。


 意味のある積極性だったのか、意味がある積極性だったかはわからない。だが、意味のない言葉は言わないだろう。だが、大して重大なことではないと思ったので、あまり気に留めずに受け流した。


「クハパリ、お前は?」


 女性に対して「お前」というのは些かどうかと思い、本当にこいつはロードブルク兵だったのかと思ったが、クハパリ自身は意識していなかったっぽい。


「え!? 私? 私はアビリティは持っていないよ」


 クハパリは敬語を使わなかった。そして目が泳ぐ。そのくらい動揺していた。俺はその理由を知っている。


 クハパリはアビリティは持っていない。それは本当だ。だが、クハパリの持っている聖書が装石具。そして、知られてはまずいことだからだ。


 メルマシンクの住人であったこと、その中でも預言者であること。それは知られてはならないのだ。


「は? 持ってない?」


「え……すみません……?」


 急に瞠目しながら声を荒げるメッちゃんにクハパリは驚愕し、狼狽するクハパリを見て我に戻ったメッちゃんは冷静さを取り戻し、真摯に向き合った。


「あ、いや、謝ることはない……」


 やはりこの人はロードブルク兵だったのかと吟味したところで疑問が湧いた。


(どう云うことだ? 今の会話でなにがわかった? なにか行き違いがあったのだろうか)


 そう言えば、俺がアビリティを持っていることや、シロは自分が持つアビリティを理解していなかったことを指摘していた。


 アビリティがわかるアビリティではないと思うが、何か見分け方があるのだろうか。そして、クハパリはその見分け方でアビリティを持っていると判断された。


 だが今、話してみた結果クハパリは「自分はアビリティを持っていない」と言った。メッちゃんはクハパリにアビリティが有ると思っていた。そういうことなのだろうか。


「シロは多分こっちにいったな。どうせ雷帝の剣に興が乗ったのだろう」


 雷帝の剣? その単語に聞き覚えはなかったが、恐らく先ほどから見えるデカい剣のことだろう。ネヴキュベートに来る前からウキウキしていたシロが立ち寄ろうとしない訳ない。


 そもそも、それが分かっていたのに、何故自分たちはシロが独りよがりで剣に立ち寄らないと思っていたのだろう。そこまで気が回らなかったのだろうか。


 それにしても、もう既にメッちゃんはシロの性格や、そこから考えられる行動をわかっている。メッちゃんは俺らが思っている以上に凄い人なのかもしれない。


 そんなことを考えていると、情けない声と共に床に這いつくばっているシロを見つけた。


――――――――――――――――――――――――


「うぉぉぉぉん。何で居ないんだよぉ。ってか何処だよここ。お前ら誰だよぉぉ」


 うちは近隣住民の人々に向かって指を向けて言った。ここは一体何処なんだ。ニアスたちは何処にいるんだ。そういう思いにより恐怖がさらに掻き立てられる。


 指で指しているうちに、見覚えのある近隣住民に指を向ける。目を凝らしてよく見ると――


「ニアスぅ!」


 うちはそう言いながらニアスに抱きついた。


「お前……人に指指すとか行儀悪すぎな」


 下半身に抱きつくうちを何とか離そうと手でうちを押す。だが、うちは抱きつく。本来なら男に抱きつくということはしたくはないが、状況が状況であるため、抱きつく他ない。


 今でも周りの人はうちを無愛想な目で見つめてくる。まだ世界の理を知らなそうな五歳児ぐらいの男の子でさえその目で見つめてくる。だが、うちは抱きつく。ニアスが恥じようと、周りの人が無愛想に見つめてきても、うちは屈しない!


 そう心に誓いながら、うちはガッツポーズをした。


「さて、そんじゃ本命のパリカノティタに行くか」


「いやうちにとってはハルヴァリアが本命なんだが」


 そうなうちを無視してメッちゃんは前へ突き進む。ニアスたちはメッちゃんについていき、うちは問いただすようにみんなを追いかけた。


――――――――――――――――――――――――


 パリカノティタの会場に着いた。会場には騒音が響く。期待を胸に語る者や、誰が勝つかで揉める者、誰かに連れてこられたのか困惑している者。その者らが喋るたびに、うちのパリカノティタへの好奇心は高くなる。


 この会場の形が歪なのか、ここがパリカノティタ専用の会場なのかはわからないが、二階から一階を見下ろすことができ、二階は観客席、一階には試合を行うスペースが幾つか出来ていた。すると、メッちゃんより説明が入る。


 バスケや相撲、わかりやすいので言えばバドミントンやバレーボールはそのような形になっているが、一階の試合を行うスペース同士の間の上にも見下ろせるスペースがある。


 これは観客が360℃どの方向からも自由に観覧することができるようになっている様に設計されているのかもしれない。


 観客席の一番手前、つまり一番下の方に位置する席に座る人にとっては邪魔になるのではないか。そう思った。だが、これは見ればわかる。そもそもその見下ろせるスペースと一番下の席では高さが違うのだ。


 これによってショートカットができ、試合を円滑に進めることや、観客が選手を応援するのに支障をきたさないのだと言われたが、別にどうでもいい。


 今は二階の冷たい手摺りに恐れながら捕まり、天井から床、端から端を見て構造を知り、指定された席へ移動している。


 三階も一応あるにはあるが、恐らくあれは貴族や王族なんかのお高く留まる連中の席だ。高いところから見下ろす何で図々しい奴らめと思いながら三階の席から視線を外す。


 席は階段状で用意されており、うちらは席と席の間を歩く。窮屈なため、メッちゃんを先頭にうち、ニアス、クハパリ、ネルの順番で着いてきている。


 メッちゃんはチケット? のような物をみてブツブツ呟く。多分席番号を見ていると思われる。ニアスはうちの背後を大人しく着いてきており、クハパリは見る物全てが目新しいのかワクワクしながら辺りを見回す。ネルは大人しいが、退屈そうだ。


「なんかここ暑くない? 熱気がヤバい……」


 早速ネルの駄々が発動し始めた。それを皮切りにみんなの緊張が解けたのか、みんなの口が開き始める。


「ジュースとか売ってないの?」


「あったとしても買わねぇぞ」


「ですよねぇ……」


 金銭的に問題がなければジュースが欲しかった。あとポップコーンとかひまわりの種とか。そもそもジュースがあるのかと小耳に挟む程度に聞いていたら、メッちゃんが席を見つけてくれた。何だかお父さんみたいだと思いながら席に座る。


 立っているのもいいが、恐らくファーストセレモニーが終わってからじゃないと立つことができない。あと、多分ネルはずっと座っていないと駄々を捏ね始めそうで嫌だ。


 すると、ぞろぞろと人が席に座り始めた。外からはもう直ぐ始まるという知らせの声が聞こえてくる。人が会場に集まりきったのか、会場のドアは厳重に閉められた。


 トイレはあるのかなと思っていると、ドラムやシンバルの演奏が聞こえてくる。


「これより、第62回 ネヴキュベート パリカノティタを開会する!」


 その声と共に歓声がより湧き上がる。この声の発声源を特定しようと見渡すと、三階で偉そうな人がそのように司会をしていた。


 三階は貴族たちが閲覧する場じゃないのかと思っていると、反対側にもう一つ三階があることに気づき、目を配ると、先ほどのお嬢様と執事、それに――


(――マダグ!?)


 グローブ素人組のほんの数名がお嬢様の横に配属されていた。




       〜 第二十四話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


もしよろしければ改善点やご感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ