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第二十三話 パリカノティタ

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。


今日の格言

【7歳くらいの頃、う○こというのは人間にとっていらない物を物体にして流す物だと聞き、体の作りが違う虫のう○こは欲する栄養素が違うから人間の俺たちは食えるのだと思った。その日は一日中下痢でした。あれはカマキリだったかなぁ】



 吹っ飛ばされたうちは擎慄頼に戻るために川を越え、森を抜けた。


(うちのアビリティが触覚遮断じゃなかったら普通にサイコパスだろ……そういや、あいつうちのアビリティ知らなくね!?)


 服や身体は土に塗れ、書庫で闘った時の古傷が痛んでくる。全身からは重い疲労感が襲ってきており、一歩ずつ歩くごとにそれが目立つ。


 歩いている時は風呂に入りたいという気持ち一心だった。幸い、事務所には寿屋ほどの立派なお風呂はなかったが、お湯を入れて入れる樽の様な物があるらしい。今日一日が終わったら汗も疲労もそれで洗い流そうと思う。


 夢の中で白昼夢に更けていると漸く森を抜けることができた。辺りは開けた空間にポツンと木と和風建築が置いてある。覚えのある景色だ。


 すると、うちが木の側に近寄ったあたりでメッちゃんの声とはもう二つ、知らない声が聞こえてきた。


「アガツマガツゴンザエモンが来ているという情報が入ってきている」


「ここにいるんだろ」


「誰だよそいつしらねぇよ」


 メッちゃんは誰かに向かってぶっきらぼうに話している。それを聞いたうちは直ぐに近くの木の影に身を滑らせた。


 知らない声の発声源である道場に押し入る輩はフラットな格好をしているが、得物を装備しており一般人とは思えない。そして、何かを警戒していた。


 メッちゃんはうちが犯罪者ということを知らないのだろう。そしてアガツマガツゴンザエモンがうちであることも。


 だが、うちがこの道場に来てるという情報をどこで聞いたんだ? うちはネヴキュベートに来てからロードブルク兵に会ったこともないぞ?


 そう思い、記憶を遡ってみた。まず最初にシラゾノに会って――


(シラゾノだぁぁぁ!!!)


 そういえば、シラゾノはロードブルク兵だった! 一緒に来ていたのは……職場の仲間!? あのまま気づかれていれば危うく捕まるところだったぁ!!


 ――いや、違う! 気づかれたんだ! だから今捕まえに来た! ……だとすればシラゾノは?


 うちは辺りを見渡してみる。見通しのいい空間だったのですぐ見つかるはずだが……他に人影は見えない。


 そもそも、国境を超えて自国の犯罪者を捕まえることはできないんじゃなかったのか? 前にそんな話をニアスから聞いていたが、適応されない……?


「〜〜そもそも国境を跨いでの逮捕は法令違反だろ」


 うちの気持ちを代弁するかの如く、聞きたい情報を抜き出そうとしてくれた。多分偶然。


「いや、自分たちはただの観光客っすよ」


「そうそう。僕ら知り合いで〜〜」


 うちは理解した。結局、こいつらはロードブルク兵だ。つまり、こいつらは観光という名目で来ているものの真意は犯罪者の逮捕にある。


 つまり昇進目当てで来たってことか。現金な奴らだ。すると急にメッちゃんは高笑いしだした。


「お前ら、ここに人が立ち入りしてるとでも!? こんなボロい道場に客が寄るかよ!」


 腹に手を当てて目からは数粒の涙が浮かんでくる。普通は笑い泣きするほど可笑しなことでもない。うちはそのことに引いてしまい、兵士たちも苦笑いをすることしかできない。


「お前ら、俺を笑いにきたのか?」


 すると、メッちゃんは拳を前に差し出す。


 さっきまで高笑いしていた時とは一転して、急に引き締まった顔に様変わりする。


 あの動きは何度も見た。この場ではうちが一番その動きが危ないことを知っている。


(おいおい……そりゃいくらなんでもマズいんじゃねぇの?)


 止めに入ろうか迷う。あの威力を直で食らったうちは止めたいという気持ちとは裏腹に、うちを捕まえに来ている奴らを助けたら、恩を仇で返されそうだ。


 すると道場の向い側からもう一人高身長で筋トレをしているであろう男性がメッちゃんたちに合流する。


「おい、お前ら何してんだ。リブラ様の用が済んだ。早く来い」


 それを聞いたメッちゃんは腕を下ろし、兵士は一度メッちゃんを見てからその場を去った。会話からしてもう一人は上司だろうか。


 難は去ったと確信し、木影から姿を現し、再びお天道さんの下をあるく。お天道さんはいないけどね。


 メッちゃんはうちの存在を確認し、向こうもこっちに近寄ってきた。


「さっきのは?」


「ロードブルク兵だ。全く、どこの誰なのかはしらねぇが、他国の領土を踏み荒らしてまで捕まえたい相手なのかね」


「そっすね。ははは」


 予想はついているが、確信がないため聞いた。やはりさっきの人達はロードブルク兵だった。そして、やっぱりうちがそのアガツマガツゴンザエモンだということは知らなそうだ。


――――――――――――――――――――――――


 ――道場の中に戻った。ストレイダーズ一行は三人で座って並んでいた。道場だけど正座はしていなく、ニアスは胡座をかいていたり、ネルは体育座りで虚無になってりしていた。クハパリは手を振ってくれた。でへへ。


 うちはみんなの近くに座り、メッちゃんはみんなの目の前に座った。


「じゃ、さっきの続きだ。お前ら本当に(アビリティ)持ってんのか?」


 おそらく、さっきは兵士が押し寄せてきたせいで話を中断したのだろう。だけど……


「持ってますよ?」


 そもそも、アビリティを持っていないからうちを省いたんじゃなかったっけ? うちはてっきりアビリティの能力をしっかり確認できたから入門を許可されたもんだと。


「じゃあなんでグローブに勝てたんだ?」


「え?」


 アビリティを持っていない方が有利に闘えたとかそう言う問題なのか?


「俺はお前らを入門させる条件として事件を解決しろと言ったよな」


「まぁ……そうっすね」


「俺はグローブがいるなんて聞いていない」


「というと?」


「元々、グローブは念入りに計画を立てて行動に移るタイプだ。そして計画を立てればグローブは、国を一つ壊滅できるかもしれないんだ」


「でも、俺たちが闘っても勝ったんだ。僅差で勝った身からだが、言うならそこまで強くなかったぞ?」


「いいや、お前らが思っている10倍は強い。さっきも言ったろ、あいつらは計画を念入りに立てる主義だ。あいつらのボス、『グローブの心臓』のアビリティはなんだった?」


(グローブの心臓ってもしかして……ライグのこと? 巷ではグローブの心臓なんてブイブイ言わせてたんだなぁ)


 うちは心の中で嘲笑した。


「最初は姿を消すって言われてたけど……」


「解釈を広げて別の世界へ行くみたいな能力になった思う」


「あからさまに隠密アビリティじゃないか」


「そうだけど……?」


「か〜っ! 分かれよそんぐらい。別に国を滅ぼすには真っ向から戦わなくてもいいだろ。側近を殺したり、嘘の情報を流し込んだり」


 そうか。確かに、それならライグのアビリティは打って付けだ。しかも、ハイププァルとか言うやつもだ。あいつのアビリティは詳細まではわかっていないが、多分敵の位置とかを把握できる能力だ。それこそ、隠密だ。


 でも、そこまでギャングって感じじゃないんだな。


「そこでさっきの話に戻る。お前らがアビリティを持っているなら、目に見えるアビリティじゃないってことだ。ニアス、お前のアビリティはなんだ?」


「水を固める……です。現状はそれしか分かっていません」


「シロは?」


「痛覚を無効にする」


「まじか」


 なんだ。うちはめっちゃ不快になったぞ。うちのアビリティに失望したって感じだ。ムカつく。


「人の(アビリティ)にケチつけたきゃねぇが、(アビリティ)は攻撃特化の方が強い。例えば俺のアビリティ。空気中の元素を結合、分離ができる」


「げんそ?」


 なるほど、元素か。通りでベクトル違いな技がポンポン出てくるもんだ。爆発できて、毒ガス撒けるのにまだ能力の一部とかやばいな。


 というか、夢世界では元素をあまり知らないのか。おそらくメッちゃんはアビリティを知っていく上で元素を知ったのだろう。元素という言葉はあるけど一般的な単語として流通はしていなかった的な?


「まぁそこはいい。つまり俺は空気中で水蒸気による爆発が起こせる。これは攻撃特化だ。そして、もう一つに毒ガスを充満させられる技がある。これも攻撃特化だが、守りにも使える。対して、シロ。お前のアビリティは防御特化だ」


 そうか。防御と言えるような防御ではないけど、防御しかしてないのか。でも不服だ。なんでうちはこんな弱い五感者になっちまったんだ。

 

「攻撃特化は特化と言われてはいるが、防御としても使える。頑張れば俺の爆発も防御として使えるしな」


 確かに。攻撃は最大の防御ともいうしな。それを実に体現できている。……でもそれって攻め続けたら相手は攻撃をする余地がないって意味じゃなかったか?


 まぁ気にすることもない。

 

「だが、防御特化は攻撃ができない。そこが難点だ。防御特化は攻撃特化よりも防御力は上だが、その分攻撃ができない。そこで疑問が出てくる。防御しかできないお前らがどうして勝てたんだ?」


「どうやってって相手は隠密なんだ。攻撃も防御も特化してないじゃないですか。なら、俺らでも勝てるはです」


「逆だ。一番は特化していないのが厄介だ」


「じゃあなんで俺らはライグを倒せたんだ?」


「まぁ、ライグを倒したのは息子のマダグだし」


 今までの会話は分かりづらかったけど……要は攻撃特化のアビリティは防御もできるけど、防御特化は攻撃ができないって意味かな。


「ま、何はともあれ、アビリティについて少しは分かったか?」


「え? 今の授業のつもりだったの?」


「……そうだ」


 あ、これは想定してなかったな? 途中からいい流れになって如何にも仕向けたかのようにしたかったんだろう。


「お前らの(アビリティ)の詳細、弱点がわかったところで、それに適する訓練を授けよう」


 お、きたぞ。さっきの訓練は訓練と呼べるような感じじゃなくてただのイジメだったが、訓練ならうちは好きだ。何事にも全力で取り組めば楽しいからな。


 どんなのかな。ヌメヌメした柱を登る訓練か? それとも守るって言ってんだから、手を神みたいにデカく神々しくして球を守れるゴッドなハンドか?


「一ヶ月後からネヴキュベートでパリカノティタという大きな大会が開かれる。アビリティを使用して闘うコロシアムみたいなもんだ」


 わかってきたぞ。つまりそこに出場して闘えってことか。いやぁ、優勝は出来ないけど二位とか上り詰めて表彰されたらどうしよぉ! あ、でもその前にニアスと闘わないといけないのかな。まじかよ、ごめんな。今回は優勝させてもらうわ――


「そこに行って見学しろ」


 は?


――――――――――――――――――――――――


 ネヴキュベート。行かないと思っていたのに行くことになってしまった。別にダメなことではないけども。


 ネヴキュベートに行く当日になった。それまでは訓練かと思いきや休息。爆発に巻き込まれたんだからそりゃそうだ。だが今日は風呂も入って、すね毛は整えることができなかったが、準備万端。


 メッちゃんとストレイダーズでネヴキュベートの周辺につくと見えるのはでかい剣の柄のような部分。あれがクハパリの言っていた剣か。まだ刄の部分は見えていない。これから見るのが楽しみだ。


 そしてもう一つ、目立つものがある。馬車だ。それも二台。パリカノティタというものはスポーツであり、貴族の間でも大変人気とメッちゃんが言っていた。ただあくまでも貴族は選手ではなく客。傍観していることしか脳がないらしい。


 ロードブルクのような、門だけに厳重な警備を張ってはいなく、何もされないまま、あっさりと――


「――通れたけど……いいの?」


「ネヴキュベートはあんまり犯罪起きないからねぇ。なんと驚異の年に片手で数えられるかぐらい!」


「それってすごいの?」


「驚異って言ったけどぉ、わかんない。けど、ここってイスベルトブリューとか三翼のヘルヴェールの故郷だしぃ、歴史に伴って犯罪率が落ち着いているのかもしれない」


「そうなの?」


「勘」


 門を潜ると建物の影に隠れ、うちが一歩ずつ進んで行くたびに姿が現れるのは巨大な西洋の剣。巨剣と呼ぶべきか。今にも柄が落ちてきそうなくらい斜めに傾きながらも地面に突き刺さることでバランスを保ち続けている。


 そして何よりうちが気にしていた刄はなんと紫色に輝き……樋? と呼ばれる部位は光沢を鉄であり放っている。バスターソードのエンチャント版みたいだ。


 うちは気持ちが高揚し、迷うことなくバスターソードの麓まで走った。


「は!? シロ――待て!」


――――――――――――――――――――――――


「うっひょー!!」


 バスターソードが突き刺さっている地面には広範囲のヒビが入っており、そのヒビを囲むようにして立ち入り禁止の看板と柵が建てられていた。


 うちはその柵を掴み、ブォーンというプラズマ刀のような音や地面から飛び出る紫色の光に見惚れていると自分も気づかぬうちに顔がどんどん剣によっていく。


「――危ないですよ」


 そう忠告してくれる女の人の声で目を覚まし、我に戻った。これも、もしかしたら書庫にあった本と同じようなものなのかなと思ってい、その女性の方へ目を配ると、品性に一片の疑いもない美少女が高価そうなドレスを着込んで温情な眼差しでこちらを見てくるお嬢様のような女性がいた。


      


       〜 第二十三話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


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