表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

第十七話 ライグハート

作品をのぞいていただきありがとうございます。


最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。




(思いついたぞ……ライグの目的を潰す手段)


「お前が一番有効打だ! 頼みたいことがある!」


 マダグが今一番の有効打だ。ギスターナも同じ属性だけど、今は満身創痍だ。なんかマダグはスッキリした顔してるし、頼るならあいつだ。


「親父……俺、反抗期って……来てねぇよなぁ……」


(これは……任せろって言ってんだよな……?)


 すると、ニアスが動いた。ライグに蹴りついた拍子にガードされる。足を掴まれたニアスは下に再び叩きつけられる。


 だが、これは好期だ。今ニアスはヘイトを買ってくれている。今うちにできることをするんだ。今しかできないことだ。


 ライグは最深部の本を狙っている。あれで何ができるのかはわからない。が、厄介なのは確かだ。その目的を潰してやる!


 ――うちは一階へ向かった。


――――――――――――――――――――――――


(後ろ……前……後ろ……左)


 数で押されている。しくった……いつか奇襲はされると思っていたが、今日だったとは……。あれさえ取れればいつだって構わなかったのだが……。


 (左脇腹……あまい)


 幸い、黒髪の頭の切れるやつは敵前逃亡を図った。それで数が減ったのはいい。だが、マダグ……顰めっ面から脱糞した後の顔になった。大方俺へのトラウマを克服したってところか。腹立たしい……。


 (右――いや、フェイントか)


 大丈夫……大丈夫だ。このまま冷静に対処していけばいい。捌くのは得意だ。顔は動かすな。重心はぶらすな。流すだけでいい。流して、余裕ができたら反撃するのだ。


(股下……しくった)


 ――くっ


 蹴りを顔面に喰らった。ギスターナは半死半生。青髪のガキは喰いついてくるが、相手にするほどじゃない。今狙うのはマダグだ。


 マダグ……クソっ! 元はと言えば全部全部「無名の商人」とか言うきなくせぇやつが悪りぃんだ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ――雨の日だった。


 グローブに近づくエグゼ教。それを排除するのが俺の役目だった。だが、エグゼ教は信徒の人数が多い上に一般の人も多くいる。たった一個の情報がエグゼ教の信徒と言う情報だけ。無茶だった。砂漠に落とした一粒の塩を探すようなものだ。


「……教えましょうか?」


 不敵に笑うその商人は何を考えているのかわからない。が、言うんだ。そのエグゼ教の特徴を教えてくれる……と。


 神に思えた。スパイが紛れ込んでいるとも考える程自分を追い詰めていた。そんな時に現れたのがこいつだ。唯一の救いだ。俺は疑うことなく奴の言うことに従った。


 特徴は……橙色をした髪、青色の眼球、いつも緑の服を着ている……女性。なんで気が付かなかったんだろう。


 家に帰った。そしたらエグゼ教の信徒がいたんだ。俺らの邪魔をするな、そう思って……躊躇なく包丁で刺した。滅多刺しだ。何度も……何度も何度も何度も何度も!! 何度も刺したんだ。


 エイラだった。俺の愛する……妻だった。考えた。どうしよう。死体を処理するか……? 今なら生き返るか……? どうしよう。どうしよう。どうし――


 ――いや……こいつだ。こいつがその信徒なんだ。グローブを潰すエグゼビュールの親愛なる信徒。


 そう思った瞬間、世界の見え方が変わった。殺してよかった。よかったんだ。正解だった。俺は間違っていない。間違わない。間違えない。


 マダグが後ろにいた。よかった。無事だった。立っている。それだけで俺は十分だ。俺の救い。


「マダ――」


「人殺し……」


 


「……え?」


「人殺し人殺し人殺し人殺し! 母さん……母さん! ぶち殺す。お前の爪を剥いで指を切って傷跡を潰して、焼いて切って焼いて切って……ぶち殺してやる!」


(俺が……人殺し……?)


 その瞬間、我に戻った。手には血のついた包丁、倒れたエイラ、そして……笑っている俺。それを見ても尚、俺は間違ってないと思った。


(こいつも……エグゼ教の信徒か)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「今日で潰してやるよ! マダグ……いや、エグゼ教の信徒ぉ!!」


 俺のアビリティは透明化だけじゃない。別の世界への移動、それが俺のアビリティだ。これは、誰も疑わなくていい世界に行きたいと願った、俺の『夢』だ。


 中途半端な俺の夢。それが俺のアビリティ、《虚空へ(レルム・ステップ)》だ。


     グローブの心臓 ライグハート

  ――――――――――――


――――――――――――――――――――――――


 親子揃ってで笑い出してる……怖っ。


 とりあえず、シロは何か策があって飛び出した。それは間違いない。なら、俺らができることは足止めだ。


 あぁ、でも……体、動かね。周りがクラクラする。どうしよ。いや、マダグは今ライグと戦っている。俺が頑張らないで誰がマダグのサポートをするんだ。属性の相性が悪く立ってできることなら何でもやろう。


 なら、立ち回りだ。立ち回りを考えれば攻撃が当たらなくとも優位に立ち回れる。そもそも、攻撃が当たらなければ相性が如何とかを考える必要はない。そのためにはまず、観察をしよう。


 俺はライグとマダグの戦闘を凝視した。


 マダグは……露骨に攻めているな。対してライグはマダグの攻撃を捌きながらカウンターを狙っているようだ。マダグの攻撃は見えないのに……器用なもんだ。たまにライグが消えたり現れたりするが、全ての攻撃前には現れてから攻撃をしている。


(腕に何かが……?)


 俺は目を擦ってもう一度凝視した。今度はライグの腕を特に。


(属性だ……!)


 腕には各々の属性が付与されている、もっと言えば攻撃部位に属性が付与されているように見えた。


 俺の属性は水。と言うことは、俺のアビリティを活かせるのではないか!?


 俺はライグとの距離を一気に積める。そして、ライグの後頭部に向かって回し蹴りを喰らわす瞬間、足に僅かに付与された水が見えた。即座にその水を固め、ライグの頭に喰らわした。


 

  ―――――――

 


 ――ぐぶっ!


(よし! 俺の考察と蹴りが当たった!)


 俺の蹴りに合わせてマダグが、俺の蹴りで下を向いた頭に向かってアッパーを繰り出した。そして床にライグが倒れ込む。

 


  ――――

 


 あとちょっとだ。あと数回小突けばやつは倒れる。なんせ頭の前後から攻撃を喰らったんだ。しかも脳震盪はやつの動きを見れば目に見えている。


 そして今、ようやくわかった。今までだって、攻撃される瞬間に手を出して、衝撃を逃がすことはできていた。――だったら。攻撃判定が出る()()()に付与される水を固めればいい。そうすれば、受ける衝撃は半分になる。それどころか、固めた手に伝わった衝撃が、そのまま相手にも返る。


「親父……何で俺が今までお前のことを親父と呼んできたかわかるか……?」


「知らねぇ! いいから黙って俺に殺されろ゙!」


 マダグは下を向いた。歯を食いしばり、拳を固く握った。俺は知っている。この行動をする理由を。


 ――悔しいんだ。今まで強く恨んできた思いを蔑ろにされる気持ちは何にも変え難い悔しさになる。


「――俺の母さんを殺した殺人犯じゃなく、親父の愛する妻を殺した殺人犯って思い出させるためだ!」


「黙れ黙れ黙れ黙れぇ! お前は必ず殺す!」


 ライグはマダグの母を殺したのか!? なら何故マダグをも殺すんだ? いや、大体わかる。ライグはその出来事を無かったことにしようとしているんだ! 母を殺し、息子を殺してのうのうと生きようとしているんだ。


「お前達は逃げない! 今確信したぁ! 本を得てお前らを殺してやる!」

 


 ――――――

 


 そういうと再びライグは消えた。そして走る音が聞こえたが、段々と音が小さくなっていった。最深部への扉へと走り出したのか!?


 何故喋れる!? 何故走れる!? 確かに俺は脳震盪を起こした。でも攻撃が弱かったからか軽い脳震盪だった。だが、やつは違うはず!


 いや、何は如何あれ最深部へは行かせない!


 そう思いながら俺とマダグはライグを追いかける。マダグは左右に腕を振った。血管が浮き出ており筋肉も膨張している。長い棒のようなものを出したのだろう。だが、粗末に、がむしゃらに振ったからか、当たったような音も悲鳴も聞こえない。代わりに聞こえるのは、からぶった「ビュン」と言う音と左右の壁にぶつかる音。


 俺は遠距離攻撃がないから、攻撃も索敵もできない。でも、遠くに行っていないことは分かる。足音が三人分。しかもどれも小さくなっていない。


「邪魔すんじゃねぇ! 殺してやるから大人しく待ってろ!」


 そう言い終わると、足音は二人分になっていた。俺は咄嗟に腹をガードした。さっきのように、腕には水属性の甲冑を作り纏って。


「殺されるから大人しく待てないんだろうがぁ!」


「親父こそ、殺してやる!」


 これが……親子の会話なのだろうか……。殺気立つ親子。それに挟まれる俺。可哀想だと思えよ。


――――――――――――――――――――――――


 遂に着いてしまった。最深部への扉に。さっきライグが一階でアンドロイドの脇腹に鍵を差していたおかげで、扉が開いてしまっていた。ライグは難なく最深部へと渡る。俺たちもライグを追って扉を渡る。


(何だこの感覚……)


 扉を渡るとただならぬ空気に押しつぶされそうになる。ライグよりもその奥にある何かの方がよっぽど強くて、怖くて、気味が悪い。


 奥に奥に進むほどにその感覚が漂う。本当にシロは策があって戻ったのか……? もしかしたらこの感覚が怖くて逃げたんじゃあ……


 ――あぁ、いやいや! 何考えてんだ俺は! シロは俺を信じてこの場を任せてくれたんだ。俺もその想いに応える。


「マダグ、何でライグは奥に行こうとしてんだ?」


「親父はこの奥にある本を狙っている。奥にある本は『呪誘式』の装石具だ。それであいつは屈強な精神と力を得ようとしている」

 

「呪誘式!? 何でそんなもんなこんなところに――」


 いや、ここは普通の場所じゃない。イスベルトブリューの書庫なんだからそりゃそうか。と言うか、イスベルトブリューほどの人しか持っていないよな。


――――――――――――――――――――――――


 奥に着いた俺たちが目にしたのは、淡紅色に光を放つ薄気味悪い本とライグだった。


「やった……遂に手に入れることができた……。俺の悲願はこの日のためにあったんだ。」


 ライグは腹を抱えながら、みよけもよだつような大笑いをする。笑い終えた後、ゆっくりと、一歩ずつ本に近づきながら手を伸ばし、遂にライグは念願の本を手に入れた。俺たちはその姿をただ傍観することしかできなかった。


「これが……忘却の書リコレクション・コーデックス。何と美しぃ!」


 そう言いながら一枚一枚を舐めるようにペラペラとめくり、あるページでめくる手が止まった。序盤のページは何かが記されていることがわかった。だが、あるページで、ページをめくる手が止まった。そのページとは白紙のページだった。


「何でお前はその本を欲していたんだ!」


「そうだなぁ……教えてやるよ。この本でお前らの記憶を転写し、マダグの記憶を消すんだよ。……かっかっかっ! 清々するぜ。この本で、マダグ、お前との日々はおさらばだ!」


 そう言うライグは狂気じみていた。本をとってからだ。ライグはライグでなくなりつつある。これが呪誘式の装石具なのか。


 ――だが、何故だ。あんなに憎まれ口を叩いていたのに、何だか悲しんでいるようにも見える。


「あばよ……マダグ」


「待て――」


 マダグはライグに向かって飛び出した。だが、ライグはマダグが飛びついた拍子に、白紙のページをマダグの額に突きつけた。――かのように思われた。


「……はぁ?」


 だが、次の瞬間にはもう、ライグの手元にはなかった。その場にいる全員が口を開きながら唖然としていた。


(外した…!? いやまさかそんなこと――)


 そう思い、後ろを見てみた。すると忘却の書が浮いており、そのまま何処かへ行ってしまった。


――――――――――――――――――――――――


(あぁ、よかった。これ、ちゃんと起動したんだな)


 うちはそう安堵した。奥からは本がひらひらと飛んでくる。名もわからないアンドロイド。君のおかげでうちらは勝つことができそうだよ。


 そう思いながら、手元に舞い着いた。本を優しく手に持った。手に持つと同時に強い衝動に駆られそうになる。これを使えば強くなれると。でも、それと同時にうちはストレイダーズのみんなのことを思い出した。


「うちらはこんな本いらねぇ――」


 俺は本を投げ、構える。さっき戦ってる時にわかったことがある。攻撃発生時に、攻撃部位には属性が付与されることがわかった。


 うちの属性は炎。つまり、うちの拳は燃える。


「あばよ、死の産物。神よ、力を貸したまえ! 《燃ゆる拳(フレイム・フィスト)》!」


 拳は火花を散らしながら本を燃やす。この書庫イスベルトに、火花のパチパチという音が鳴り響く。



       〜 第十七話 完 〜

ご愛読ありがとうございます。


もしよろしければ改善点やご感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ