番外編 もう一人の主人公 1
作品をのぞいていただきありがとうございます。
最後まで楽しんでいただけるように頑張ります。
(追記)
今回の主役はコウドウの騎士になりたいメルロス君が主役です。メルロス君が主役の話はまだまだロートブルク兵になれるところまで書くつもり(若干のネタバレ)です。ちなみに番外編の溜めてる話はないです。
あと消し方がわかりません。誤爆しました。
――シロがこの世界に来る数時間前。ロードブルクではロードブルク兵認定試験が行われていた。
「いいかぁ! お前たちに告ぐ! 兵士とは捨て駒だ! 簡単に命を落としかねない非常に脆い職業だ!
だが同時に、最も誇り高き職業でもある! ……足掻け! 足掻き続けろ! 命を取捨選択しなければならなくとも、敵に打ち負かされていても! 兵士であることを心得ろ!」
ロードブルク城内に響き渡る演説は、ロードブルク兵認定試験のファーストセレモニーにて行われた。
この試験に志願した人たちは寸分のずれもなく並んでそれを聞いていた。
メルロスもまた、その演説を聞いていた。
(まだ兵士にもなってないのに兵士であることを心得ろってなんだよ……)
そんな思考とは裏腹に、彼の顔は覚悟に満ち溢れていた。
覚悟が人一倍ある彼は強面になっており、他の人にはちょっと引かれていた。
――――――――――――――――――――――――
セレモニーのプログラムを終えると、皆、城内を移動した。
城内にはさまざまな高価な品物があり、移動している廊下でさえ、壺に生けられた花が共同墓地のように沢山あり、綺麗に並んであった。
緊張していた受験者は花に見送られながら廊下を渡る。
ただ、その花すらをシカトする受験者がいた。
その受験者こそメルロスである。
「……! おい! お前たち! オウドウの騎士様達がお通りになられるぞ! 各自、端にて整れぇつ!」
オウドウの騎士による大名行列がおこなわれた。
オウドウの騎士。それは王に直々に仕える12人から成る王親衛隊。
12人のうちにシルベル王もおり、またシルベル王がリーダーの騎士。
人々は皆、彼らの本当の実態を知らない。
それ故に、受験者は廊下を通りゆくコウドウの騎士達を頭を下げながら尊敬の眼差しをしていた。
ただし、メルロスの目は違った。
尊敬でも、愚弄でも、敵視でもない。
憧れとはいえない、だが憧れに近い何かだった。
(あの中に入れば、俺も……)
メルロスは焦っていた。
そのままコウドウの騎士は通り過ぎた。
「よし、上出来だ! もし、兵士になったら、今のようにコウドウの騎士様達がお通りになられる際は深く敬意を示すのだぞ! では、改めて移動だ」
受験者達は試験官の後に続いた。
――――――――――――――――――――――――
通り過ぎたコウドウの騎士のうち数人は、受験者達が発していた何かに勘付いていた。
「ねぇ、今回は豊作じゃない?」
いち早く気づいたヴィルゴは嬉しそうに言った。
何を言っているのか理解ができなかったカンケルは聞いた。
「ん? 何故なんだい? 何か感じ取ったのか?」
カンケルは武闘派ではなく、技術開発の部門に携わっていたため、野生児のような感覚は持ち合わせていなかったのだ。
すると、その感覚を持ち合わせていたリブラが口を挟む。
「殺気だよ。殺気を発していた奴が二人ぐらいいたんだ」
「僕にはわかりませんが、前にも殺気を感じ取ったって仰っていませんでした?」
この兵士認定試験はロードブルク建国日に行われたもので、古来より今まで行ってきた由緒正しき式典。
前回の認定試験でも、そのような殺気が入り乱れていたが、そういう奴らに限って試験に落ちたのだ。
「それはそう。でも、殺気を隠していた。殺気を隠せる奴は修羅場を幾つか乗り越えてきた奴らが多いんだ」
新人のカンケルには到底理解できない。おそらくこれから先もだ。
だが、殺気に気づいたコウドウの騎士達にもわからないことがある。
「でもさ、なんか他の雰囲気のやつもいたね? あれ何だ?」
リブラが問いた。
リブラが言っている雰囲気のことは、他の数人も気が付いていた。
……が、その雰囲気の正体を知るものはここには誰一人いなかった。
「確かに……あれは言葉にはできないなぁ。私たちみたいになりたいって柄じゃなかったけど、憧れのような雰囲気はあった」
この中で唯一真相に辿り着けそうなヴィルゴが言った。
すると、ヴィルゴは不気味に笑った。
「どうかしたの?」
「あいつ、今回の試験で好成績を残したら、私の配下にしていいか?」
「私たちはいいよ。でもぉ、あいつちょっときな臭いよぉ」
「大丈夫。調教は慣れてるからね」
「怖いこと言わないでよねぇ」
コウドウの騎士は王の元へ歩くのだった。
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城内を移動すると、まず部隊編成を行われた。
一般兵の部隊には武力隊、異能隊の二種類があり、異能隊はアビリティを有しているもので編成される。
武力隊はアビリティを有していないもので編成される。
受験者達は次々に列へ並び、順番を待つ。
だが、その編成結果に不満を持つ者がいた。
「はぁ!? なんで武力隊なんだよ! この通りアビリティは持ってるだろうが!」
メルロスだ。
メルロスは試験官に手から輪っかを出して見せた。
すると試験官は言った。
「確かにアビリティを持ってはいるが、お前は武力隊に分類される!」
「なんでだよ!?」
武力隊は武力が重視される部隊。確かに、アビリティを有していない者が編成される
だが、アビリティを有しているが、武器を生み出すもの、バフと呼ばれる身体的強化、デバフと呼ばれる身体的衰弱をかけるもの、また解くものなども分類されるのだされる。
その説明を聞いたメルロスは落胆する。
それもそのはず、メルロスはコウドウの騎士になろうとしているからであった。
民衆はコウドウの騎士は戦いにおいて、圧倒的な強さを王に買われることで入れる部隊ということを知っている。
コウドウの騎士の大半は異能隊出身。
異能隊はアビリティの訓練を目的とした部隊である。
また、身体においての強化はバフアビリティがない限り限度があるため、コウドウの騎士に入りたいメルロスにとって、この編成結果は不都合だったのだ。
「おい! 早く行けよ!」
「後ろつまってんだ! 早くしろ!」
緊張でピリピリした後ろに並んだ受験者達はメルロスが早く行くのを催促した。
コウドウの騎士の中には異能隊には劣るものの、武力隊も何人かはいるため、メルロスは武力隊の認定試験会場へと移動した。
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「よし、全員いるなぁ。ではこれより、ロードブルク兵士認定試験、武力隊の部を始める。試験は第三次に亘って行われる。根性のあるやつから前に出よ。第一次のルール説明を行う」
周りに呼びかけた試験官に呼応した受験者達は次々に前へとでた。
メルロスは慎重に見ており、心の中で前に出た受験者を侮辱をした。
(バカだなあいつら。ルールも伝えられていないくせに前にでやがって。後ろにいるやつの方が有利だったらどうするんだよ)
この手の試験を知っているのか、メルロスは呆れる。だが、それと同時に、心配もしていた。
すると、メルロスは後ろから肩を叩かれた。
「き、君も様子を見ているの?」
「あ、あぁ」
「よかったぁ。僕だけじゃないんだね。ちょっと緊張するよね。仲間がいて本当に良かったよぉ」
戸惑うメルロスは自分が何故様子を見ているのかを問いただそうとする。
「あ、いやッ。違うくて……」
そう言おうとするメルロスに気の弱そうな彼が言った。
「そうだ! 君、名前は?」
諦めたメルロスは肩を落として言った。
「メルロス。君は?」
「僕はミライノフィア。ミライでいいよ」
「そうか。じゃあ俺もメルでいいよ」
「優しそうな人がいて良かったよ」
メルは、確かに今ここでパイプを広げておくことで、試験で有利になるかもしれないと考えた。
「ルールを説明する。今からお前達には、一対一で戦ってもらう。強さ次第でグループを編成する」
それを聞いたミライは怖気ついた。
「えぇ……聞いた? 殴り合いってこと? 多少の戦闘は覚悟してたけど……勝てるかなぁ」
「大丈夫だよ。まだ、全部の説明を聞いたわけじゃない。もしかしたら、ルールの穴があるかもよ」
続けて試験官はルールを説明する。
「ここに書かれてある白線を越えたものは失格となる。また、お前らには装石具を支給する。だが、装石具は全て別物だ。自分たちで鑑定し、工夫し、戦い抜け」
装石具は素力式ののものさえあればいいやと思ったメルは安堵した。
だが、次の説明を聞いたメルは悔やむこととなる。
「なお、この中に、アビリティを支える者がいると思うが、アビリティの使用は禁止とする」
「はぁ!?」
「今回はあくまで武力における強さを図る」
二度も想定外なハプニングが発生したメルはイラついていた。
そこに、心配したミライが声をかける。
「メルってもしかしてアビリティ持ち?」
イラついているメルは息を吐きながらいう。
「はぁ〜。そうだよ。ほれッ」
すると、メルは手から輪っかを出した。
「おぉ! ずごい!」
それを聞いたメルは機嫌を取り戻しながらいった。
「俺の輪っかは伸縮自在。大きくするには限度があるし、条件があるけど、小さくするには限度がないんだ」
「へぇ〜。使えなくて残念だったね。でも、素の戦いも強そうだけど……その筋肉とかすごいし」
「まぁな。」
メルとミライは話しているが、もうすぐ戦闘が始まろうとしていた。
「それでは、前に出た順から二人一組で戦え」
それを聞いたミライは焦った。
「どうしよう! このままじゃ、良い装石具が取られちゃうよ!」
それを聞いたメルは機嫌を直してくれた恩返しかのように、ミライを宥めた。
「いや、これでも良い。確かにあの装石具は弱いものもあれば強いものもあるだろうな」
「それじゃあ――
何かをいようとしたミライに、正気を取り戻したメルは言葉を遮って言った。
「ただ、どうだろうぁ。強さを図るための試験なのに、あれば強さが逆転するほどの装石具を認定試験に出すかなぁ」
「確かに……」
「ましてや、そんな強いのは元からいる兵士に配布した方がいいよなぁ」
説得力のあるメルの考えに、ミライは何も言えずにたたまれた。
「それより、見てようぜ! あの中で強いやつを見つけて仲間にするんだ!」
「そ、そうだね」
観戦をするために前に出たメルとミライは鉄格子に捕まりながら強い受験者を探し始める。
すると、何やら近くのギャラリーが騒ぎ始めたので見に行くと試合が始まるらしい。
「おい、お前ら! こっちでゲライドニュードルが戦うってよ」
ゲライドニュードルはメルの耳にも届いていた。
史上最年少の歳で空手道の大会を三度優勝した天才であるということを。
まさか同じ部隊で同じ時期に受けるとは思っても見なかったが、メルはこの戦いに少々興が乗った。
「ねぇメル。あの人女性だけど大丈夫なのかな。なんか装石具持ってるとはいえ、危なくない?」
「大丈夫でしょ。いざとなったらロードブルク兵随一の回復アビリティ持ちのコースタトリトスさんに治してもらえるし」
「そういう問題じゃなくて……」
でも確かに、ゲライドニュードルの対戦相手を見ると女性だった。
手には棒を装備しており、服越しでもわかるような腹筋をしていた。
女性だから勝てないなどと現を抜くようなことは言わない。腹筋割れてるし、そこそこ蹴りや突きは重いのだろう。
それでも相手は空手経験者でありながら金を取った強者。相手にとって不足があると感じた。
「それでは、用意……スタートッ!」
試合のゴングのようなものが鳴り響いたと同時に、ゲライドニュードルは左拳をだし、右手を引き手にしながら走り込んできた。
すると、大きく一歩を踏み込んだと思うと、拳を突き出した。
「うわぁ! 早すぎ――
すると彼女は横に一歩移動した。
それだけなのに、彼の突きは彼女の脇腹スレスレで当たらなかった。
それどころか、彼女は突いてきた彼の腕を後ろに引っ張り、持っていた棒で彼の鼻を殴った。
「すげぇ……」
彼は鼻血を出しながらよろめいたが、再度立ち上がる。さすがは三度の優勝を持つ空手選手。
すると、スタンスを変えたのか、構えを変えるゲライドニュードル。その姿はまるでゴリラから虎へ豹変したように雰囲気がガラリと変わった。
両者とも受けの体制に入っていた。
それを理解したのか、棒を持った女性は体勢を低くしたまま彼の間合いに突っ込む。
(なるほど……カウンター狙いか……)
この観客の中でメルだけがそのことをわかっていたが、その思考は愚か、ゲライドニュードルは彼女の攻撃を待っていたが、彼女は攻撃をして来なかった。
戸惑っているゲライドニュードルに彼女はその一瞬の隙を突き、後ろ足を軸に前足を上げて踵での蹴りを喰らわせる。
死角からの蹴り。しかも顎狙いともなれば当たれば脳震盪を起こし、この戦いは終わるだろう。
だが、ゲライドニュードルはそのことに気づき、彼女のの足をギリギリで掴み場外に投げ出した。
(なんでだ……。確かに彼女のゲライドニュードルへの蹴りは完全に死角であり、攻撃を受けていることに気づかない位置にいたはず……。
蹴りよりも先に蹴った時の風が届いたのか……?)
吹っ飛んだ彼女は棒を床に差し込み勢いを殺したことで失格を免れた。
あくまで試験であるが故、床は柔らかいスポンジのようなものでできていた為、免れることができたのだ。
これが戦場で、マグマ溜まりの近くで戦闘していたら、勝っていたのはゲライドニュードルだったのだろうか。
「もういい……俺の負けだ……だからもう、やめてくれ……」
急にゲライドニュードルが負けを認め、戦いを放棄することを懇願し始めた。
〜 番外編 第一話 完 〜
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