序話 今日変な夢見たんだけど。
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森の中で目を覚ました。
見覚えのない景色。湿った土の匂いと、木漏れ日の暖かさ。
――なのに、体中が痛い。
指先を動かしただけで、全身が軋む。まるで高いところから叩き落とされたみたいだ。
周囲には背の高い草と、絡み合う木々。小鳥の声がやけに遠く聞こえる。
視界はぼやけていて、距離感が掴めない。
……それでも、不思議と怖くはなかった。
――むしろ、落ち着く。
「こっちから聞こえたと思ったんだけどな……?」
男の子の声だろう。
助けを呼ぼうとしたが、喉が動かない。
草の上は柔らかくて、身体を包み込むみたいで、このまま眠ってしまいそうになる。
「あれ? 君……落ちてきたの?」
落ちてきた……?
だからこんなに痛いのか。
記憶を辿ろうとして――気づく。
何も思い出せない。
……名前だけは、なぜか浮かんだ。
白憧
名前は覚えていた。だが、過去の出来事が思い出せない。どうやら記憶喪失というのは的中していたらしい。
でも、今は考えたくない。考えるほど体の苦痛が目立つ。
――それにしても、空気がうまい。それに草木の匂い。ここには極楽浄土という言葉が似合う。
「怪我はない?大丈夫?立てる?」
心配してくれている。目を瞑っているからどんな人かはわからないけど、優しいな。多分男の子だ。声でわかる。
「名前は?わかる?」
先ほど思い出した名前を言おうとした…が、壊れたリコーダーのように口を空気だけが通り過ぎていくだけで、声が掠れてでる。
……え。
刹那、うちを襲った痛みは無くなった。まるで最初からなかったかのように。
「よし……これで大丈夫かな。僕は名前はアキ――
彼が名を名乗ろうとした瞬間、暗闇だった視界が黄白色の光に切り替わった。
〜 序章 完 〜
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