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ルークルイリス物語  作者: 梅雨前線
紅の動乱編
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第二十三話 虚像の証明

 会議を終え、アレストシスとテレステオは王城の一室に集まっていた。その部屋は王家の人間のみが入ることを許される部屋で、その部屋の存在を知る者は王城の中でも限られていた。アレストシスはこの部屋を、議会ではできない話をする時に利用していた。


 静謐な雰囲気が漂うこの部屋は縦横五ミーコスほどの長さで、中央には正方形の机と椅子が五脚置かれている。部屋の四隅には大きめの燭台があり、凝った細工がされている。


 コンコンと扉が二度ノックされる。「入れ」とアレストシスが言った。


「失礼します」という声と共に、ソフィロスが部屋に入ってきた。


「やあソフィロス、こんな夜半に呼び出してすまないね」アレストシスは、会議では見せなかったような穏やかな笑みを浮かべながらソフィロスに声をかけた。


「いえ、まだ起きておりましたので」と、椅子に座りながらソフィロスは言った。

 アレストシスは、ソフィロスが椅子に座ったことを見ると、部屋の奥側に斜向かいに座るテレステオの方に体を向けた。


「では陛下、今後の教団原理主義派への対応について相談しましょう」


「うむ」とテレステオの短い返事を聞き、アレストシスは続けた。


「今日の議会からも分かるように、教団はあくまでも異教徒の改宗と断罪という名目で行動を行っています。しかし、原理主義派が教団の実権を握った以上弾圧は過激になっていくでしょう。おそらく冬の祭典で、弾圧の強化が布告されるはずです。原理主義派はその先に、王国の転覆も考えているかもしれません」


「・・・王家として動くことはできんな」


 黙ってアレストシスの話を聞いていたテレステオが口を開き、低く、しゃがれた声で言った。


「ですが陛下、騎士団を動かすことも視野に入れて方針を考えないといけません」


 アレストシスは言った。しかしテレステオは一言、「ならん」と言いアレストシスの言葉を跳ね除けた。「他の、争いを生まぬ方法を考えよ」とテレステオは言った。


「ここまで来てしまった以上原理主義派を、血を流さずに止めることなどできませんよ」


 アレストシスは難しい顔でそう言った。しばらく静寂が三人を包む。


「ソフィロス、君はどう思う?兄弟の中で君が一番才知に長けている。今日は君の意見を聞きたくて呼んだんだ。どうだい?」


 アレストシスの言葉を聞き、ソフィロスは少し考え、話し出した。


「今、教団には先手を取られ続けています。自由主義派の排斥も、今回の弾圧強化も、こちらが対策を練る前に動かれました。だったらこちらも、先手を取らなければならないと思います」


「そうだね。何か決定的な一手を先に打つことができれば、原理主義派を止めることができる」


「一つ、具体策では無いですが方針として考えられる案があります」


 ソフィロスは少し躊躇いながら言った。その様子を見て。アレストシスは言う。


「ここでの会話は記録には残らない。なんでも話してみてくれ」


 ソフィロスは一度軽く息を吸って、言った。


「教団の力を削ぐ。すなわち国民の、女神テアディースへの信仰心を弱めるのです。女神テアディースへの信仰心で教団は成り立っている。女神テアディースの三つの恩恵の、どれか一つでもいい。それが恩恵ではないということを科学的に証明し王国中に流布します。これなら血は流れず、教団を弱体化させ原理主義派を止めることができます」


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