1. 追放
新連載です!
俺、【御津羽】は、忍者の家系に生まれた。
小さい頃から忍者になるための教育を受けてきた。
剣術や魔法などの基礎訓練、音を一切立てずに歩いたり走ったりする訓練、手裏剣を一ミリもずれないように的に当てる訓練など、さまざまな厳しい訓練をしてきた。
ーそして今、18歳になった俺は初任務から帰ってきた。
ー訓練はとても辛かったが、それでも一人前になることが出来たのは、現役の忍者でもある俺の父が、優しく接し、時には厳しく励ましてくれたおかげだ。
「優しい子だな、御津羽は。」
いつも父はこう言ってくれた。俺はそんな父が大好きだった。
* * * * * *
初任務を終えた俺は今、父に任務の報告をした。
俺の話を聞いた父は、こう言った……。
「お前が優しいのは分かる。人を殺すのが辛いのも分かる。だが、忍者の主な任務は暗殺だ。それが出来ないお前は忍者失格だ。御津羽、お前を家から追放する! もちろん、親子の縁も切る!」
* * * * * *
ー俺の初任務は、自分でも認めるが、ひどい結果だった。
任務の内容は、領民から過多な税金を取っている貴族の、暗殺だった。
貴族の屋敷に到着し、俺は容易く内部に潜入した。
標的の貴族の部屋の天井裏まで来た。標的は部屋の奥の椅子に座っていた。
この部屋には標的以外は誰もいない。
今、標的はこちら側に背を向けている。
あとは【消去魔法】をあいつに放つだけだ。
【消去魔法】とは、俺が昔、訓練の休憩時間に遊び心でやってみた魔法で、なぜか出来てしまった魔法だ。
魔法が当たった物の【なにか】を消し去る。俺にしか出来ない魔法だ。
例えば、
【消去魔法 抹消】は、当たった物の存在を消し去る。
もっとも、消去魔法は1日に4回しか使えないが、4回あれば十分だ。
もちろん、【消去魔法】を人に向かって放ったことは一度もないが。
俺は今、消去魔法を標的に放とうとしている。当たれば、標的の貴族は消えるので、貴族は行方不明という扱いになる。
「消去魔法 抹…」
……待てよ。本当に良いのか?
あの貴族は、「標的」である前に、生きている1人の人間だ。
いくら悪政をしたからといって、その命を勝手に消してしまっていいのか?
俺は迷った。
…今、殺す決断はできない。でも、父さんからの命令。絶対だ。
俺はどうすればいいんだ?……
そして、俺はある結論に至った。
…殺すのはいつでもできる。俺には最強の消去魔法があるから。だから、一旦帰って父さんに相談しよう。…
迷いはあったが、俺は貴族の屋敷を後にした。
* * * * * *
「お前が優しいのは分かる。人を殺すのが辛いのも分かる。だが、忍者の主な任務は暗殺だ。それが出来ないお前は忍者失格だ。御津羽、お前を家から追放する! もちろん、親子の縁も切る!」
「えっ!?…… なっ、なんでだよ! 確かに相手を殺せなかったのは俺が悪いけど、追放だなんて…ひどすぎねえかよ!?」
「黙れ。お前は心が脆弱な、ダメ忍者だ!」
「ダメ忍者って… 俺たち今までずっと頑張ってきたじゃねえか! 俺、これまで以上に頑張るから! 心も強くするから! 頼むよ父さん! ねえ!」
「うるさい。はあ、わしの跡継ぎはお前の弟、龗にしよう。お前はさっさと出ていけ!」
「そんなあ…」
もちろん、家を出たくはなかった。
しかし、ここで家を出ないと多分、殺される。忍者の世界はそういう世界なのだ。
* * * * * *
俺が今居るのは、オトラント王国という国の、北端あたりだ。そこに俺の家の忍者屋敷がある。
ここからオトラント王国の首都、フリウリまでは、かなりの距離がある。
だから俺は、王国の北の隣国、ドーベラ帝国の首都、マーチボルンを目指すことにした。
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