青春の胸騒ぎ
「あの2人さ、上手くいくと思う?」
「さあ。とりあえず今日の報告を聞くのが楽しみすぎる」
「ほんとそれ。絶対まどかあたふたしてるよね」
「めちゃくちゃ想像できる。ところでさ」
「うん?」
「横田姉さんはいつ帰るの?」
「前から思ってたんだけどさ、その姉さんって何?キモいんだけど」
「そんなストレートに言わなくても…」
真夏に比べると夜風が涼しい季節になった。20時を過ぎても横田は帰ろうとしないため、俺たちはいつもの公園のブランコに2人で仲良く揺られていた。
「そんなに早く帰ってほしいんだ」
「いや、そういうわけじゃないけど親とか心配するだろ?もう時間も遅いんだし」
「しないよ。心配なんて」
「なんでだよ。普通心配するだろ」
「バイトの時間終わるのもっと遅いから。これぐらいなら何とも思わないよ」
「ああ、そっか。そういや姉さんって何のバイトしてるの?」
「秘密。さて早く帰ってほしいみたいだし、私はそろそろ帰ろっかな」
「なんかトゲある言い方」
「どうだろうね。じゃあまた明日ね」
「おい、バス停まで送るから」
「いいよ。迎え呼んだから大丈夫。じゃあまあ明日」
そう言って横田は俺を1人ブランコに残し去っていった。ミステリアスという単語がこれ程似合う人がいるだろうか。そういえば横田のバイトもそうだが、プライベート的なことは一切知らないことに気づいた。
「まぁちさとか梨木に聞けばいいか」
そうして俺もブランコから降り、これから訪れる秋の涼しさを肌で感じながら家まで歩いた。
「と、まあこんな感じの出来事だったよ」
「そっか。あれからやっぱり水科ちゃん軽音部来てさ、めちゃくちゃ走って疲れたよ〜」
「予感的中だったね。お疲れさま」
「結人もお疲れさま。明日が楽しみだね!それじゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
美優との電話も終わり、俺も寝ることにした。明日はみんなで学祭の話をしないといけない。それがとても楽しみで俺はまるで小さな子供に戻ったように眠れない夜を楽しんだ。
「結人おはよう」
「おはよう」
いつもと変わらない朝、いつも通りにおはようと言ってくるちさとの顔はどこか違うように感じた。ずっと抱えてた悩みが解消されたのだからそれは当たり前だろう。
「書いてきた?入部届」
「うん!今日から改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく!」
後ろから梨木がちさとに抱きついて言った。
「今日から一緒に頑張ろうね!」
その2人の姿を見て俺や星峰、横田の事情を知っている組は小さく微笑んだ。
「なぁ、朝のアレってなに?水科さん部活やめたの?」
昼休み、ご飯を食べながら安達が言った。
「ああ、ちさとずっと吹奏楽部で先輩たちから嫌がらせ受けててさ。そんなとこでやらないで軽音来ないかってみんなで誘ってたんだ」
「なんで嫌がらせ?」
「ちさとは真面目にコンクールとかで上を目指したかったらしいんだけどさ、うちの吹奏楽部ってそういう感じじゃないらしい。それで先輩の反感を買ったって感じ。まぁ意見の相違かな」
「なんだよそれ!水科さん悪くねーのに許せねーよ!」
「まぁそういう人もいるってことだ。事後報告になって悪いな」
「まぁ俺たちのヒロインが苦しんでる姿なんて見たくないからな。軽音部で頼むぜ」
「ちょっと気持ち悪いけど任せてくれ」
笑いながらご飯を食べてあっという間に放課後になった。
「ちさと!一緒に部活行こ!」
放課後が来ることをずっと待っていた梨木が今日イチのテンションでちさとに話しかけた。
「うん!遥香先輩連れてってください!」
「なんかそれは照れるからやめて」
「え〜!なんでなんで!いいじゃん!」
「お前ら早く行けよ。俺はちょっと用事あるから遅れていく」
「えー!結人も一緒に行こうよー!」
「だから職員室行かなきゃいけないの!梨木、先に行ってちさとのこと紹介してあげて」
「一ノ瀬に言われなくてもするつもり」
「なんか最近いろんなところからトゲを感じる」
「私だってパーティ行きたかったんだから!」
「だからそれはごめんって…」
「じゃあ今度うちでみんなでお泊まり会しようよ!」
「え!絶対行く!まどかと結衣にも声かけてみんなでしよう!」
梨木は昨日のパーティに誘われなかったことがショックだったらしく、話したときに少しだけ拗ねていた。ちさとがきちんと埋め合わせをしてくれるようで安心だ。
「それじゃあ俺は先に出るから」
そう言って教室から出て、職員室とは別の2階の空き教室に行った。
「おう、遅れてごめん」
「遅いよ。まどか部活始まっちゃう」
「ごめん。それで、昨日はどうだった?」
そこには星峰と横田がいた。部活の前に昨日の結末を話す約束をしていたのだ。ちさとや梨木には少しずつ話したいと言っていたので、昨日の事情を知っている俺たちから聞くことにした。
「一応ね、LINEは交換した。でも私緊張しちゃって全然上手く喋れなかった」
「え!やったじゃん!じゃあもうLINEはした!?」
横田が聞いたが、星峰は首を横に振った。
「いやーバスケならガンガン行くんだけどさ、なんか恋愛だと全然自分から行けなくて…。たぶん柊くんもLINE来るの待ってたと思うんだけど、まだしてないんだ」
「はあ!?せっかく聞いたのに!勿体無い!今日なんて送るか考えよ!」
「昨日はLINE交換しただけ?」
「うん。バス停まで走ってさ、バスが来るまで少しだけ話したの。お互いのこと全然知らないから、まずは友達にならない?って言われてLINE交換したんだ。今度みんなで遊ぼうって言ってくれたの!」
「あいつしっかりしてるな」
「うん。爽やかスポーツマンって印象そのものだね」
目の前には昨日のことを思い出し顔を赤くしている星峰がいる。あれ、こんなかわいらしい生き物だったっけ?と錯覚してしまうほどに。
「とりあえず上手くいきそうで安心したよ。LINEの中身とかは2人で考えてくれ。俺はちさとのこともあるから部活に行く」
「あ、一ノ瀬」
「なに?」
「昨日あんなことがあったばかりだからさ、一応気をつけなよ。何かしてくるかもしれないし」
「ああ、わかってる。わざわざありがとうな」
「私の貸しは高いんだからね」
「それはちさとにつけといてくれ」
とりあえず涼太の問題は順調にスタートを切ったみたいで安心した。あとはちさとの方だけだが、横田が言うように吹奏楽の先輩たちが何かしてくる可能性がある。
あの性格からして、辞めてすぐ軽音部に入ったなんて知ったらまた何かしてきそうな気がする。
「一応美優と梨木にも言っておくか」
何か起きる前に手を打てればいいんだが、何事も無いことを祈って俺も部室に顔を出した。
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