プロミスザスター
昼休み、俺は久しぶりに安達と山崎といつもの場所でご飯を食べていた。
「なーんか今日の星峰ちょっと距離を感じるっていうか…いつもよりちょっと変じゃない?」
「「いや、お前のせいだろ」」
俺と安達は声を揃えて言った。誰が見ても夏休みに何かあったのかと思うくらいの急接近。元々仲が良いグループ同士だったこともあるが、それにしても側から見ていたら違和感があるのだろう。
「やっぱ俺じゃダメなのかなー」
どこか遠くを見ながら山崎がポツリと言った。正直俺はその姿を見ているのが少し辛かった。星峰に好きな人がいるということを知っているから。山崎の恋は叶わない可能性が高いから。話すことが優しさなのかどうか、誰かに相談したいと思っていた。
「んなことねーよ。フラれたわけじゃないんだから。ただグイグイ行くのはあまり良くなさそうだから、ゆっくり行こうぜ」
「安達…そうだな!よーし!負けねーぞ!!」
山崎の目にまた火がついている。「な、こいつ単純だろ?」と俺の耳元でボソッと言う安達に俺は「性格悪っ」と笑いながら言った。
頑張れよ。応援してるからな。
放課後、俺と梨木は部活に行く途中のちさとを捕まえて頑張れとエールを送った。
「もう、心配しすぎなんだってー!大丈夫だから!」
そう言って音楽室に入っていったちさとの後ろ姿は頼もしそうに見えていた。
「どうする?やっぱりこの辺で隠れておく?」
「いや、ちさとが大丈夫って言うんだ。俺たちは信じて待っていよう」
「なんかかっこいいじゃん」
「うるせ」
俺たちも部室に入りライブ以降会ってなかった部員たちと久しぶりの会話をした。その会話のほとんどが学祭についての話だった。何人かが俺や梨木に「もうバンドは決まっているか?」と聞いてきたが、「まだ仮だけど」と言ってお断りさせてもらった。
「やっほー!みんな集まってるかな!」
美優が来た。久しぶりの美優の制服姿についニヤついてしまう。それに気づいた梨木がかなりキツい視線で俺を見てくる。スッと表情を元に戻し、美優を見る。自然と口角が上がってしまう。
「美優先輩に全部言うから」
「何か飲みたい物あったら何でも言ってね?」
「いちごオレよろしく」
それから学祭についての部内ミーティングが始まった。
学祭までの期間は約1ヶ月あるが、時間の関係上実際に演奏するバンドは3つとなっている。誰が出るかの選考会は4週間を切っているため時間が全然無い。エントリーの締め切りは1週間後。それまでにどうするか決めないといけない。
「はい、質問いいですか」
梨木が手を上げた。
「はい!遥香ちゃんどうぞ!」
「例えばなんですけど、部外の人と一緒に出る…というのはアリなんでしょうか?」
もしちさとがスムーズに退部できなかったときの保険だ。仮にOKが出るのであれば、無理してちさとが急ぐ必要は無い。もちろんちさととしても早く退部したいとは思うが…。
「先生、どうなんでしょうか?」
「うーん、ちょっとダメかな。あくまでも軽音学部の演奏会って名目だから、それをOKしちゃうとちょっとね…」
予想通りの答えだった。その答えに俺も梨木も、そして美優も少しだけ表情を暗くした。やはり俺たちが学祭で演奏するためにはちさとが入部するしかない。
「他に質問ある人はいますかー?はい、いなそうなのでミーティングはこれで終わります!みんなメンバー決まったらそこの箱にエントリーシート入れてね!じゃあお疲れさまでしたー!」
「「お疲れさまでした!」」
ミーティングが終わり、その場に残って友達同士で喋る人、スタジオに入って練習する人、帰る人といろいろだった。
俺と梨木は美優のところに行き、ちさとのことを話すことにした。
「美優、お疲れさま」
「お疲れ結人。まあしょうがないよね」
「私と一ノ瀬でちょっとちさとを待とうと思うんですけどいいですか?」
「うん。私もいろいろ終わったら合流するよ」
「お願いします」
俺と梨木は部室を出てすぐ隣の音楽室の前でちさとを待った。
「もう話したのかな」
「どうだろうな。問題が無かったらいいけど」
それから15分くらいすると、階段から4人の姿が見えた。吹奏楽部の顧問、部長、パートリーダー、そしてちさとだ。
「すみません、そこどけてもらえますか?」
「あ、ああ…すみません」
俺と梨木はドアから離れ音楽室に入っていく姿を見ていた。ちさとは俺たちをチラッと見て、小さく「ごめん」と言って同じように音楽室に入っていった。
「あれは何かあったね」
「絶対上手くいかなかったって感じするよな」
「とりあえず今日はちさと終わるの待とうかな。一ノ瀬どうする?」
「俺も待つ」
それから5分くらいして美優が部室から出てきた。
「遅くなってごめん!何かわかった?」
「さっき顧問と部長とパートリーダーとちさとが部室に入っていった。あと…小さな声でごめんって」
「そっ…か…」
「まだ何もわからないからさ、とりあえずちさとが終わるの待とうかなって思ってる」
「うん。そうだね、私も一緒に待つよ」
学祭はどうなるんだろう。やっぱりちさとと一緒にやるのは諦めて違うバンドをやるべきなのか。俺たちは全員同じことを考えてはいるが、誰もそれを口にはしなかった。
だって口にしたら本当になってしまいそうだから。まだ来年があると言われるかもしれないが、来年は美優の受験勉強が忙しくて学祭の練習時間を取れるかわからない。余裕を持ってできるのは今年しか無い。
俺たちは玄関に来て誰かが何かを話すこともなく、ただちさとを待った。
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