青
朝、久しぶりに早起きをして制服に着替えて自転車に乗り登校する。
1学期の半分近くは怪我をしていたこともあったため、こうして登校することがとても懐かしく思える。
「おーい、結人ー」
「おはよう、涼太」
「なんかこうやって一緒に学校行くのも久しぶりだな」
「そうだな。どうせまたすぐ朝練忙しくなるんだろ?」
「まあなー。でも部活無いときは一緒に行こうぜ」
「ああ」
4月以来のやり取りがどこか恥ずかしい気持ちになりながら、俺たちは学校に向かった。
教室に入ると、久しぶりに会うクラスメイトが盛り上がっていた。教室の中の至る所で夏休みの話や髪型などの見た目が変わったことについて話している。
「一ノ瀬、おはよう」
梨木が俺に話しかけてきた。
「おはよう。なんかこうやって教室で話すのも久しぶりな感じする」
「ほんとね。夏休み中も部活で顔合わせてたのに」
「それな」
「ところでちさとの話はどうなったの?」
「ああ。なんか今日言うって言ってたけど、詳しくは俺もわからない」
「そっか。じゃあ夜LINEしてみるかな」
前に言っていた吹奏楽部を辞める話。ちさとは2学期初日に部長に話すと言っていた。どうなるか結果は教えると話していたけど、正直心配だった。穏便に済めばいいが、吹奏楽部にはあまりいい人がいないイメージがあるため問題が起きなければいいがと思っていた。
「おっはよー!」
そんな心配を吹き飛ばすようにちさとが笑顔で教室に来た。
「おはようちさと」
「おはよう」
「なになに?2人ともしんみりしちゃって〜」
「いや、今日だろ?話すの。大丈夫かなって」
「だーいじょうぶだよ!サクッと終わらせて来ます!」
どう見ても嫌な予感しかしなかった。俺と梨木は何かあれば助けようとお互い頷いた。どうか何も起きませんように。
「星峰!おはよう!」
やたら元気な声が響いた。ドアの方を見ると教室に入ってきた星峰に山崎が話しかけていた。
どこか気まずそうにしてる星峰に山崎はいろいろと話しかけていた。誰が見ても嫌がっていそうな態度を示していたが、山崎はバカなのでそんなことに気づいていない。
「あちゃー。あれは見てられないね」
そう言ってちさとは星峰に話しかけた。
「まどかー!おはよう!ねね、トイレ行こー!」
「ちさとおはよ!うん!」
助かったという表情をしている星峰と明らかにガッカリしている山崎。こんなの見せられて山崎に「どうしたらいい?」と相談されたらどんな言葉をかけたらいいのか…と悩んでいる間もなく、山崎はこちらに向かってきた。
「やばっ。私逃げるから、あとはよろしく」
梨木もトイレのほうに向かうように教室から出て行った。この薄情者め。よし、こうなれば俺もトイレに…
「一ノ瀬えええ、トイレ行こぜえええ」
「あ…お、おう…」
山崎に連れられて教室から出ようとしたときにちょうど安達に会い、「お前もちょっと来い」とトイレまで引っ張られた。しかし、トイレも朝ということでそれなりに人がいるため、恋バナなどできる環境ではなく、とりあえず昼休みまでおあずけとなった。
「あれ?なんで3人揃ってトイレにいるの?」
「結衣ー!ちょっとどうしよう…山崎がグイグイくる…」
「何その贅沢な悩み。まあ相手が山崎ってのがちょっとアレだけど」
女子トイレから笑い声が響く。けれどこれは決してバカにしてる笑いではない。みんな山崎のことも好きなのだ。だがそれは友達として、愛されるキャラとして好きというものだ。
「でもさっきの態度はちょっと山崎くん可哀想だったよ」
ちさとが言った。梨木もうんうんと頷きながら笑いを我慢している。
「だっていきなりあんな大声でおはようって言われて困るじゃん!みんな見てたし!」
「そのシーンを見逃したのがめちゃくちゃ勿体ない…明日からもうちょっとだけ早く来ようかな」
「やめてよー!」
4人揃ってトイレから出ると、ちょうどトイレに向かうところだった涼太と星峰がぶつかりそうになった。
「おっと…ごめんね」
「あ…いえ…大丈夫…です」
「お、ちさとじゃん。おはよう」
「涼太おっはよー!」
「じゃあな」
そう言ってトイレに入っていく後ろ姿を星峰はただジッと見つめていた。
「今のが噂の涼太くんか」
横田がそういうと、星峰はうんと小さく頷いた。それは誰が見ても恋する乙女の顔をしていた。
「え、まどか今の人のこと好きなの?あれ、あの人ライブに来てたよね?」
「うん。私と結人と同じ中学。結人の幼なじみで友達だよ。ね、まどか?」
「そう…らしいね。実はさ、一ノ瀬にお願いして友達になれたらな〜って思ってて…」
「結人から何か聞いた?」
「いや、まだ何も聞いてない。今日結果教えてくれるって…」
「そっか!じゃあきっといい報せになるから楽しみにしてていいと思うよ!」
「何それ!面白そう!教えてー!」
「もう!恥ずかしいからダメ!」
4人並んで仲良く教室に戻っていった。誰が見てもかわいいと言われるようなカーストトップの4人。
けれどもそんな4人も普通の高校生と同じような悩みを抱き、みんなと同じように青春というものを噛み締めながら毎日を過ごしている。
こうしていろんな気持ちが交錯する2学期が始まった。
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